行列で理解する有界線形作用素

有限次元の線形代数で学ぶ行列は、有界線形作用素の最も基本的な例です。行列を通じて作用素の概念を具体的に理解しましょう。

行列は線形作用素

行列 は、線形写像 を定めます。

線形性 は行列の演算規則そのものです。

作用素ノルムと行列ノルム

にユークリッドノルムを入れると、 の作用素ノルムは

となります。これは の最大特異値 に等しいです。

計算例

のとき

のとき (黄金比)

有界性

有限次元では、すべての線形作用素が有界です。 行列 に対して

が成り立ちます( はフロベニウスノルム)。無限次元のような「有界でない線形作用素」は存在しません。

逆作用素

が正則行列()なら、 は全単射で逆写像 も有界線形作用素です。

有限次元ではこれは当たり前ですが、無限次元では「全単射でも逆が有界とは限らない」ことがあり、開写像定理が必要になります。

固有値とスペクトル

行列の固有値は、無限次元の「スペクトル」の特別な場合です。

有限次元(行列)

スペクトル = 固有値の集合(有限個の点)

無限次元

スペクトル = 固有値 + 連続スペクトル + 剰余スペクトル(複雑な構造)

行列で身につけた直感は無限次元でも役立ちますが、有限次元では自明だったことが無限次元では深い定理になることが多いです。