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リースの表現定理が成り立つ条件:完備性と、内積から来るノルム

の上で とします。これは との内積そのものです。

リースの表現定理は、 に限らずヒルベルト空間ならどの有界線形汎関数もこの形になると言います[2]。

ただし前提が 2 つあります。空間が完備なことと、ノルムが内積から来ること。どちらを外しても成り立たなくなる。

表すベクトルの長さが、そのままノルムになる

と書けたとき、 が成り立ちます[1]。

コーシー・シュワルツの不等式から だから、。

逆向きは を入れます。 なので、 なら次のようになる。

両方を合わせて等号になる。汎関数のノルムを測ることと、表すベクトルの長さを測ることが同じになります。

表すベクトルは 1 つに決まります。 がどの でも成り立つなら、 を入れて 。

完備でないと成り立たない

有限個しか でない実数列の全体を とし、 の内積を入れます。内積のある空間ですが、完備ではない。

この上で次の汎関数をとります。

は有限個しか でないため、和は有限個の項しかありません。有界であることはコーシー・シュワルツの不等式で分かる。

ところが表すベクトルは の中にありません。 となる があったとして、 を第 成分だけ の数列とおく。

だから、 が全部の で成り立ちます。どの成分も でないため、 は有限個しか でないという条件を満たさない。

有界な汎関数なのに、表すベクトルがない。完備性を外すと、この形が起きます。

内積から来ないノルムでも成り立たない

の双対は です[1]。この 2 つは同型ではないので、 は自分の双対と重なりません。

同型でないことは、可分かどうかで分かります[1]。可分とは、可算で稠密な部分集合があることです。

は可分です。成分が有理数で、有限個しか でない数列の全体をとる。この集合は可算で、 に対しては後ろを切って前を有理数で近づければいくらでも近くなります。

は可分ではない。成分が か の数列を集めると、非可算個あります。

異なる 2 つはどこかの成分で と に分かれるため、上限ノルムでの距離はちょうど 。半径 の球はたがいに交わりません。

稠密な集合は、この非可算個の球すべてに少なくとも 1 点を持つことになる。だから可算にはなりません。

可分かどうかは同型で保たれます。 と は別の空間で、リースの表現定理のような自分自身との対応は起きない。

内積のある空間で、有界な汎関数を表すベクトルが見つからないことがあるのはなぜですか。

  • 汎関数が線形でないから
  • 空間が完備でないことがあるから
  • 内積が複素数の値をとるから
__RESULT__

有限個しか でない数列の空間で をとると、有界なのに表すベクトルの成分が になり、空間の外へ出ます。完備なヒルベルト空間なら、この形は起きません。

と が同型でないことは、どう示せますか。

  • は可分で は可分でないから
  • が完備で が完備でないから
  • の次元のほうが小さいから
__RESULT__

成分が か の数列が非可算個あり、たがいの距離が なので、 に可算で稠密な集合はとれません。どちらも完備で、どちらも無限次元です。

完備でノルムが内積から来る。この 2 つがそろってはじめて、汎関数とベクトルが 1 対 1 に並びます。どちらか一方でも欠けると、汎関数のほうが空間よりも広くなる。

参考

Christian Clason. *Einführung in die Funktionalanalysis*. Universität Graz.
J. K. Hunter, B. Nachtergaele. *Applied Analysis*, Chapter 8: Bounded Linear Operators on a Hilbert Space. University of California at Davis.
$L^2[0, 1]$ の $f(g) = \int_0^1 g(t) e^t \, dt$ を表すのは $y(t) = e^t$ で、$\|f\|$ は $\|y\|_2$ に一致します。この対応が働くのは、空間が完備でノルムが内積から来るときだけ。有限個しか $0$ でない数列の空間で $f(x) = \sum x_n / n$ をとると、有界なのに表すベクトルが外へ出ます。$\ell^1$ の双対は $\ell^\infty$ で、$\ell^1$ が可分、$\ell^\infty$ が非可分だから別の空間だと分かる。$\|f\| = \|y\|$ の証明と、表すベクトルが 1 つに決まる理由まで。