関数解析では様々な「収束」の概念が登場します。強収束・弱収束・ノルム収束の違いを整理しましょう。
ノルム収束(強収束)
点列 が に ノルム収束 するとは
が成り立つことです。 と書きます。
これは最も自然な収束概念で、距離空間の収束と同じです。「強収束」とも呼ばれます。
弱収束
点列 が に 弱収束 するとは、すべての に対して
が成り立つことです。 と書きます。
「どんな測定器で測っても、測定値が収束する」という意味です。
2つの収束の関係
ノルム収束 → 弱収束
なら なので弱収束します。
弱収束 → ノルム収束(一般には不成立)
弱収束してもノルム収束するとは限りません。
反例:弱収束するがノルム収束しない
で (第 成分が )を考えます。
任意の に対して ( より)
よって (弱収束)ですが、 なので です。
作用素の収束
作用素列 にも同様の収束概念があります。
| 名前 | 定義 |
|---|---|
| ノルム収束 | |
| 強収束 | 各 で |
| 弱収束 | 各 、各 で |
「強収束」は作用素の文脈では「各点でのノルム収束」を意味するので、用語に注意が必要です。
なぜ弱収束を考えるか
弱収束はノルム収束より弱い条件なので、収束する列が増えます。特に
| 有界列の部分列 | 反射的空間では、有界列は弱収束する部分列をもつ |
| コンパクト性 | 弱位相ではしばしば良いコンパクト性が得られる |
変分法や最適化で「最小化列が収束する」ことを示すとき、弱収束が役立ちます。