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p 進整数環 - 無限に続く桁が離散付値環をつくる

進整数は、桁が左へ無限に続く数です。ふつうの小数が右へ無限に続くのと、向きがちょうど逆になります。

この形の元がなす環を と書きます。桁が有限で止まる元が、ふつうの非負整数です。

以下では 2 通りの作り方を並べ、負の数や分数の展開を実際に計算します。そのあと離散付値環の 3 条件を 1 つずつ確かめる。

2 通りの作り方

同じ環に、2 つの入口があります[1]。

1 つは射影極限です。 を並べ、両立する剰余の組を元とします。

もう 1 つは完備化です。 に 進絶対値 を入れ、コーシー列で完備化して を作り、その中で の元を集めます。

どちらからも同じ環が出ます。前者は桁の組、後者は極限としての姿です。

が成り立ちます[1]。分母に の冪だけを許すと、商体になる。

例: の 進展開

負の数がどう書けるかを見ましょう。 でやります。

と主張します。部分和を計算して確かめましょう。

、、、 と続きます。それぞれ で割った余りを見ると、すべて と合同です。

級数として足しても同じです。 になります。

ふつうの実数では発散する計算が、 進では意味をもちます。項が に近づくためです[1]。

一般の では です。すべての桁が最大値で埋まる。

例: の 3 進展開

分数も書けます。 が で割れないので、 です。

になります。確かめましょう。

です。

有限の桁でも検算できます。 で、 が成り立ちます。

は に入りません。 で負だからです。 の元になります。

桁の並びとして見る

展開の形を図にします。

右端が の位で、左へ行くほど位が大きくなります。ふつうの数と並びは同じで、無限に伸びる向きが逆です。

無限に伸びても意味をもつのは、大きい位ほど 進では小さいからです。位が上がるほど に近づきます。

桁が確定していく

近似が進むようすを動かします。

桁を 1 つ足すたびに、一致する法が 倍になります。 の精度で に近づいている。

これが射影極限の中身です。各 での姿を、矛盾しないように全部並べたものが 1 つの元になります。

有限で止まらない点が、ふつうの整数との違いです。 は の元ですが、 進展開は無限に続きます。

単元の判定

が単元であることと、 であることが同値です。

なら は で割れるので、 は で割れる数と割れない数を等しいと言うことになり、成り立ちません。

なら逆元が作れます。各 の中で は可逆で、その逆元たちが両立するためです。

つまり単元でない元は で割れる元だけ。それらの全体が をなします。

は局所環で、極大イデアルは です[3]。

整域であること

とし、、 と置きます。

、 と書けて、 は単元です。積は で、 も単元です。

したがって で、位数は になります。 は整域です。

とは違う点に注意が要ります。そちらでは になり、整域ではありません。

有限段で止めると零因子が出て、無限に伸ばすと消える。極限をとる意味がここにあります。

離散付値環である

3 条件がそろいました。整域であり、局所環であり、極大イデアルが 1 つで生成されます[2]。

したがって は離散付値環で、一様化元は です。 は の唯一の素元になります[1]。

イデアルも の冪しかありません。 なら、 の元の位数の最小値を として です。

素イデアルは と の 2 つだけで、 は 2 点の空間になります[3]。

付値環がネーターであることと、離散付値環または体であることが同値でした[4]。 はその離散付値環の側です。

との違い

同じ付値を定める環がもう 1 つあります。分母が で割れない有理数の全体 です。

有理数の部分環。元はいつでも分数として書ける。付値は同じだが、完備ではない。

完備化して得られる環。 の展開のように無限に続く桁をもつ元が入る。有理数でない元を含む。

で、稠密に入っています。どの 進整数も有理数の列で近似できる。

完備性が計算を楽にします。桁を 1 つずつ決めていく議論が、そのまま収束するためです。

同じ関係が にもあります[5]。数論と幾何が同じ形をしている場面です。

ヘンゼルの補題

完備性のいちばん分かりやすい見返りが、根の持ち上げです[1]。

が で単純根をもつなら、 の中に本物の根があります。単純根とは かつ をみたす のことです。

桁を 1 つずつ決めていく手続きで示せます。 での解から での解を作り、極限をとる。

微分が でないことが、各段で解が一意に決まるための条件です。ニュートン法の 進版と読めます。

例: の中で の平方根を作る

を で考えます。 で、 です。

単純根なので持ち上がります。次の桁を求めましょう。 と置きます。

なので、 で 、つまり です。 となります。

で確かめると です。次の桁も同じ手順で決まります。

の中には の平方根があります。 にはないので、 と は別の完備化だと分かる。

では が で根をもたないので、 に平方根はありません。 ごとに事情が変わります。

コンパクトであること

は 進位相についてコンパクトです[1]。

各桁が という有限集合から選ばれ、その積として書けるためです。有限集合の可算個の積はコンパクトになります。

はコンパクトではありません。完備化して初めて、この性質が出てきます。

単元群にも構造があります。 なら です[1]。

有限部分と 進部分に分かれる。 の冪根と、 に近い元の積として書けています。

練習

の元として単元でないものはどれですか。

__RESULT__

単元かどうかは で割れるかどうかだけで決まります。 なので となり、極大イデアル に入るので単元ではありません。 は展開の最下位桁が 、 は 、 は で、どれも でないので単元です。

最下位の桁を 1 か所見るだけで判定できます。

よくある誤り

まとめます。

と を混同する。前者は無限に桁が続く整域で、後者は有限体である。
と を同じものだと思う。完備かどうかが違う。
桁が右へ無限に続くと思う。伸びるのは左、位の大きいほうである。
進で発散する級数を実数の感覚で判定する。項が に近づけば収束する。
すべての で同じ根がとれると思う。 の平方根は にあり にない。
が に入ると思う。位数が負なので の元である。

桁の向きと、位が上がるほど小さくなるという 2 点を押さえておけば迷いません。

参考文献

Nombre p-adique, Wikipédia (français).
Discrete valuation ring, Wikipedia (English).
Diskreter Bewertungsring, Wikipedia (Deutsch).
Section 10.50: Valuation rings, The Stacks Project.
Formal power series, Wikipedia (English).
$p$ 進整数は桁が左へ無限に続く数です。射影極限と完備化という 2 つの入口を並べ、$-1$ や $1/2$ の展開を実際に計算します。整域・局所環・極大イデアルが単項という 3 条件を 1 つずつ確かめると、$\mathbb{Z}_p$ が離散付値環になる。$\mathbb{Z}_{(p)}$ との違いは完備性だけです。ヘンゼルの補題で $\mathbb{Z}_5$ の中に $-1$ の平方根を作り、コンパクト性や単元群の形まで扱います。