付値(valuation)は、体の元に「大きさ」や「位数」を割り当てる道具です。通常の絶対値とは異なる視点で数の性質を捉えることができます。
素朴な動機
整数 が素数 で何回割り切れるかを考えます。例えば なので、 は で 回、 で 回割り切れます。この「 で割り切れる回数」を と書くと、これが付値の原型です。
を有理数全体に拡張すると、 となります。例えば です。
付値の定義
体 上の(加法的)付値とは、写像 (または )で、次を満たすものです。
(積は和になる)
(強三角不等式)
と約束することもあります。値が整数のみをとるとき離散付値と呼びます。
付値が測っているもの
付値は「ある素元でどれだけ割り切れるか」を測っています。
進付値
有理数 が素数 で何回割り切れるかを測る。 が大きいほど は で「深く」割り切れている。
形式的べき級数の位数
の元 に対し、 が で何回割り切れるかを測る。 なら と書ける。
絶対値との関係
付値 から絶対値を作ることができます。 を固定して と定めると、これは非アルキメデス的絶対値になります。 進付値の場合、 とすることが多いです。
この絶対値のもとでは、 でたくさん割り切れる数ほど「小さい」と見なされます。通常の絶対値とは逆の感覚ですが、整数論では非常に自然な見方です。
付値環
付値 が与えられたとき、 となる元(と )を集めると環になります。これが付値環です。離散付値の場合、付値環は離散付値環になります。この対応により、離散付値環と離散付値は本質的に同じものを異なる角度から見ていることになります。