正則局所環(regular local ring)は、代数幾何学で「滑らかさ」を代数的に表現する概念です。局所環の中でも特に性質のよいクラスで、幾何学的には特異点のない点に対応します。
定義
局所環 が正則であるとは、極大イデアル の生成元の最小個数が の Krull 次元と一致することです。式で書くと
となります。右辺は を 上のベクトル空間と見たときの次元で、これは極大イデアルの生成元の最小個数に等しいです。
具体例
1次元の場合
1次元の正則局所環は離散付値環と一致します。極大イデアルがただ一つの元で生成される局所整域です。例えば や は1次元正則局所環です。
多項式環の局所化
を原点に対応する極大イデアル で局所化した環は、 次元正則局所環です。極大イデアルは で生成され、次元も です。
非正則な例
曲線 の原点を考えます。座標環 を原点で局所化した環は、次元 ですが、極大イデアルは の二つが必要です(一つでは生成できない)。よってこれは正則ではありません。
幾何学的に見ると、この点は尖点(cusp)と呼ばれる特異点で、曲線が滑らかでない場所に対応しています。
正則の意味
正則局所環であることは、局所的に「座標が取れる」ことを意味します。 次元正則局所環の極大イデアルが で生成されるとき、これらは正則パラメータ系と呼ばれ、局所座標の役割を果たします。
逆に正則でない場合、局所的な座標が素直に取れず、何らかの「歪み」が存在することを示しています。この歪みが特異点の代数的な表れです。