多項式環の次元が変数の個数に一致することの証明と意味
の Krull 次元は です。答えは見当が付きますが、示すには 2 方向の評価が要ります。
下からは鎖を 1 本作れば済みます。上からは、どんな鎖も 段までしか伸びないことを言わねばなりません。
後者が本題です。以下では超越次数を使う道と、変数を 1 本ずつ増やす道の 2 通りをたどります。
下からの評価
長さ の鎖を実際に書きます。
各段が素イデアルであることは、商環を見れば分かります。
右辺は整域なので、割ったイデアルは素です。 のときは そのもので、これは体なので極大イデアルになります。
包含が真であることも明らかです。 が に入らないためです。
したがって が出ました。ここまでは計算だけで済みます。
上からの評価が難しい理由
逆向きは、鎖を 1 本見つけるだけでは終わりません。あらゆる鎖について長さを押さえる必要があります。
素イデアルは の形だけではありません。 も も素になりえます。
無限にある素イデアルの並び方を、すべて調べるわけにはいきません。別の量に翻訳して数える必要があります。
その別の量が超越次数です。鎖が 1 段上がるたびに、超越次数が 1 下がることを示します。
超越次数を使う証明
を 上有限生成な整域とし、 と置きます。
を素イデアルとすると、 が成り立ちます。
から でない元 をとりましょう。 は の中で 上代数的でないか、代数的かのどちらかです。
商へ移ると の像は になります。もとの体で独立だった関係が 1 本つぶれるので、超越次数が下がる。
鎖 に沿って超越次数は真に減り続けます。 から始まって非負で止まるので です。
の商体は で超越次数は なので、 が出ます[3]。
正規化定理から見る
同じことを、別の言い方で押さえられます[2]。
が 上有限生成なら、代数的に独立な がとれて、 が 上有限生成加群になります。
このとき です。整拡大では次元が変わらないためです。
の場合は がそのまま使えます。 なので、次元も になる。
正規化定理は、どんな有限生成代数も多項式環の上に有限に乗ることを言っています。次元の計算が、多項式環の場合に帰着します。
座標を 1 つずつ落とす
下からの鎖を絵にします。

で割ると 1 枚の平面、さらに を足すと直線、 まで足すと原点です。
変数なら 4 段あり、包含の記号は 3 本です。だから次元は になります。
変数を 1 本ずつ増やす
もう 1 つの道は帰納法です。次の等式を軸にします[1]。
から始めると 、 と順に上がり、 回で に届きます。
不等号のうち は簡単です。 の鎖 に対して、 を並べ、最後に を足せば 1 段伸びます。
の側は標高定理を使います。ネーター性がここで効いていて、外すと等式が崩れます。
一般の環では が より大きくなることがあります。ネーターという仮定を落とせない場面です。
次元が上がるようす
変数を足すたびに鎖が伸びるようすを動かします。
段が 1 つ増えるたびに、変数が 1 本増えています。長さは段の数から 1 引いた値です。
上限であることまでは、この絵からは言えません。ほかの鎖がもっと長くならないか、という問いが残ります。
そこを埋めるのが超越次数か標高定理です。絵は下からの評価だけを示しています。
整拡大では次元が動かない
正規化定理を使うときに要る補題です。
を整拡大とすると になります。上昇定理と下降にあたる性質から出ます。
で確かめましょう。右辺は に同型で、次元は です。左辺も なので変わりません。
は整拡大ではありません。 が 上代数的でないためです。実際、次元は から へ上がります。
整かどうかが分かれ目になります。有限射なら次元が動かず、そうでなければ動きうる。
例: 小さい で確かめる
なら です。素イデアルは と既約多項式が生成するものだけで、鎖は の長さ になります。
なら です。 で長さ 。高さ の素イデアルが単項なのは、一意分解整域だからです。
なら長さ の鎖がとれます。 が最短の書き方です。
代数閉体なら、極大イデアルはすべて点に対応します[5]。鎖の上端が点だと分かるので、幾何の絵と直結します。
例: 係数環を変える
では です[4]。 が 次元だからです。
なら になります。変数を足すたびに 1 ずつ上がる規則がそのまま働きます。
も 次元です。べき級数環でも が成り立ちます[4]。
体上の話に限らない点が大切です。係数環の次元に、変数の本数を足せばよい。
幾何の側から読む
は の座標環です。次元が になることは、 次元空間が 次元だという当たり前の主張にあたります[3]。
当たり前に見えても、代数の側では証明が要ります。素イデアルという無限にある対象を、有限の数で押さえる作業だからです。
超越次数を経由するのは、独立な関数の本数という別の有限量に翻訳する手でした。正規化定理は、その翻訳が常に可能だと保証しています。
練習
はいくつですか。
- 1
- 2
- 3
- 0
消去できる形かどうかを先に見ると、計算が一段短くなります。
よくある誤り
まとめます。
下からと上からを別々に確かめる、という形を覚えておくと道筋を見失いません。












z について 1 次なので消去でき、環は k[x,y] に同型です。変数 2 本の多項式環なので次元は 2 になります。標高定理の言葉では、3 次元の環を零因子でない 1 本の式で切ったので、ちょうど 1 だけ落ちたことになります。