体 上の多項式環 の Krull 次元は です。この事実は直感的には明らかですが、きちんと示すには少し議論が必要です。
次元が 以上であること
まず、長さ の素イデアルの鎖を具体的に作ります。
各 が素イデアルであることは、商環
が整域であることからわかります。この鎖の長さは なので、 です。
次元が 以下であること
逆向きの不等式を示すには、いくつかの方法があります。
超越次数を使う方法
上の有限生成整域 の Krull 次元は、 の商体の 上の超越次数と一致します。 の商体は で、超越次数は です。
帰納法を使う方法
を示し、 を帰納的に示します。後者は、 による整拡大の性質から従います。
幾何学的な説明
は 次元アフィン空間 の座標環です。 次元空間の次元が であることは当然ですが、Krull 次元の言葉では「座標軸に沿って一つずつ次元を落とせる」ことを意味します。
で割ることは、最初の 個の座標を に固定することに対応します。これにより 次元の部分空間(座標部分空間)が得られ、段階的に次元が下がっていきます。
変数を増やすと次元が増える
一般に、 が整域のとき
が成り立ちます。多項式環に変数を一つ追加すると、次元が一つ上がるのです。これを繰り返し使うと、 から始めて が従います。
この関係式は、変数 を添加すると「新しい方向」が一つ加わることを反映しています。新しい素イデアルの鎖として、既存の鎖に を絡めたものが作れるからです。