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商環をとると次元はどう変わるか|落ちる場合と落ちない場合

商環をとると、素イデアルの一部だけが生き残ります。

の素イデアルは、 を含む の素イデアルと 1 対 1 に対応します。 を含まないものは、商へ移った時点で消える。

鎖を作る材料が減るので、次元は上がりません。どれだけ減るかが本題です。

以下では対応を確かめてから、落ちる量を左右する条件を並べます。落ちない例と、落ちすぎるように見える例まで扱う。

商環の素イデアル

を自然な全射とします。 の素イデアル に対して をとりましょう。

は の素イデアルで、 を含みます。逆に を含む素イデアル からは が作れます。

2 つの対応は互いに逆で、包含関係も保ちます。したがって次が成り立ちます。

鎖もそのまま対応します。 の鎖は、 を含む素イデアルだけからなる の鎖です。

材料が部分集合になったので が出ます。等号もありえます。

根基だけで決まる

次元を左右するのは そのものではなく、その根基です。

素イデアルは冪根に閉じています。 なら です。

したがって を含む素イデアルと を含む素イデアルは同じ集合になります[3]。

と を比べましょう。前者には で という冪零元がありますが、次元はどちらも です。

環としては違い、次元では差が出ない。冪零元は素イデアルに全部入るので、鎖に影響しません。

残る素イデアルを絞る

対応のようすを動かします。

が大きくなるほど、それを含む素イデアルは少なくなります。最後は で 1 つも残りません。

材料が減れば鎖も短くなる。ただし減り方は一定ではありません。

の段では、まだ長い鎖が残っています。どの素イデアルが消えたかで、落ち方が決まります。

素イデアルで割ると余高さになる

が素イデアル の場合は、量に名前が付いています。

を の余高さといいます。 から上へ伸びる鎖の長さです。

反対に は下へ伸びる鎖の長さでした。上と下を分けて数えています。

体上有限生成な整域では、この 2 つを足すと全体になります[2]。

、 で確かめましょう。 で 、高さは 、合わせて です。

例: 計算を 6 つ並べる

実際に手を動かします。

に同型で次元 1
根基が なので次元 1
2 直線の和で次元 1
に同型で次元 0
平面と直線の和で次元 2
既約な曲線で次元 1

上から 3 つは、 次元の環を割って 次元にした例です。 本の式で 落ちています。

4 つ目は極大イデアルで割ったので になりました。 本の式で 落ちています。

5 つ目は 本の式で しか落ちていません。 と に という共通因子があるためです。

成分ごとに見る

落ち方が読みにくいときは、極小素イデアルへ分けます。

の極小素イデアルを とすると、 の既約成分がこれらに対応します。

次元は成分ごとの次元の最大値です。

なら で、極小素イデアルは と です。

が 次元、 が 次元なので、最大をとって になります。

成分の次元がそろっていないので、等次元ではありません。落ちる量が読みにくかったのは、この非対称のせいです。

対応を絵にする

と の関係を描きます。

は、 の閉部分集合 とそっくり同じ空間です。

環の側では冪零元の分だけ情報が増えます。図では帯の厚みが、その増えた分にあたります。

位相空間としては同じでも、環としては違う。この差が次元には効きません。

例: 落ちない場合と、消える場合

両端の例を確かめます。

が冪零元だけからなるなら、 なので次元は変わりません。 と は同じです。

なら は零環です。素イデアルが 1 つもないので、鎖が作れません。慣習として次元を とします。

が極小素イデアルの 1 つに等しいなら、その成分だけが残ります。 をさらに で割ると で、次元は のままです。

零因子で割ったときに落ちないのは、この形になっているためです。成分を選び出しただけで細くなっていません。

落ちる量の下限

上限は でした。下限のほうも押さえられます[1]。

が 個の元で生成されるなら、 が成り立ちます。標高定理から出る形です。

なら しか落ちません。 本なら までしか落ちない。

は で 以上、実際は です。下限に届いていません。

下限に届くのが完全交叉の場合です。正則列で生成されていれば、ちょうど 落ちます。

幾何の側から読む

商をとる操作は、閉部分スキームを切り出す操作です[4]。

が図形、 がその座標環になります。次元は図形の次元です。

イデアルを大きくするほど図形は小さくなります。包含が逆転する対応の、いちばん基本的な現れです[5]。

根基まで込みで考えると、図形は根基しか見ません。太さを見たいときは環の側へ下りる必要があります。

練習

を で割ったときの はいくつですか。

  • 0
  • 1
  • 2
  • 3
__RESULT__

です。 から が出て、 もそこに入ります。したがって です。生成元が 2 本あっても、根基が 本で書けるので落ちる量は にとどまります。

まず根基を求める。それだけで次元の計算はほとんど終わります。

よくある誤り

まとめます。

生成元の本数だけ次元が落ちると思う。根基が小さければ落ちない。
冪零元があると次元が変わると思う。素イデアルには入らないので変わらない。
を成分の次元の和だと思う。とるのは最大値である。
が素なら必ず 落ちると思う。高さのぶんだけ落ちる。
零環の次元を とする。素イデアルがないので と約束する。
余高さと高さを混同する。 は上向き、 は下向きである。

根基をとってから極小素イデアルに分ける。この 2 手で、たいていの計算は片づきます。

参考文献

Krull dimension, Wikipedia (English).
Catenary ring, Wikipedia (English).
Hilbert's Nullstellensatz, Wikipedia (English).
Scheme (mathematics)), Wikipedia (English).
Krulldimension, Wikipedia (Deutsch).
$R/I$ の素イデアルは $I$ を含むものだけなので、鎖の材料が減って次元は上がりません。落ちる量を決めるのは $I$ ではなく根基です。$(x^2)$ と $(x)$ が同じ次元になる理由から始め、素イデアルで割ったときの余高さ、体上有限生成な整域で成り立つ余次元と次元の和の等式を確かめます。極小素イデアルに分けて最大をとる手順、生成元の本数が与える下限、完全交叉で下限に届く場合まで扱う。