代数幾何学で「次元が下がる」とは、方程式を課して多様体を切り出すことに対応します。この直感を代数的に理解しましょう。
方程式と次元
次元アフィン空間 から出発し、多項式方程式 を課すと、一般には 次元の超曲面が得られます。さらに方程式を追加するごとに次元が下がり、最終的には点(0次元)になります。
代数的には、座標環を見ると
と商を取っていくことになり、各段階で Krull 次元が下がります。
次元が期待通り下がる場合
が正則列(regular sequence)をなすとき、各 は前のイデアル に対して零因子でありません。このとき次元はちょうど 下がり、 となります。
余次元 の多様体が 個の方程式で定義されるとき、完全交叉(complete intersection)と呼びます。正則列で定義される多様体は完全交叉です。
次元が期待より高くなる場合
方程式の本数と次元の落ち方が一致しないこともあります。
例えば、 で を考えます。これは「 または 」という条件で、 軸と 平面の和集合です。方程式は と書けますが、2本の方程式から次元が2だけ落ちるわけではなく、得られる多様体は2次元です。
次元が落ちない場合
イデアルがべき零元だけを含む場合、商を取っても次元は変わりません。例えば は で、 から下がっていますが、これは に素元 の情報が含まれているからです。
では となり、 と同じ次元です。 という条件は幾何学的には という直線を「太らせた」ものですが、次元としては1次元のままです。
まとめ
次元が下がるのは、本質的に新しい制約が加わったときです。方程式が既存の方程式から導かれたり、零因子を含んでいたりすると、期待通りには次元が下がりません。正則列の概念は、「次元がきちんと下がる」条件を代数的に特徴付けています。