局所化(localization)は、環の一部の元を「可逆」にする操作です。幾何学的には、多様体の特定の部分を「拡大して見る」ことに対応します。
局所化の定義
環 と乗法的集合 ( で、 は積で閉じている)に対し、局所化 は
として定義されます。分数 と が等しいのは、ある で となるときです。
何が見えるか
局所化は「 の元が でない場所」を見ています。 の元が になる点は、局所化によって「見えなくなる」のです。
での局所化
とした局所化。 の開集合 上の関数環に対応する。 となる点は見えない。
素イデアル での局所化
とした局所化。 に対応する点のごく近傍だけを見る。他の点は見えなくなる。
具体例:点の近傍を見る
で原点 に対応する極大イデアル を考えます。局所化 は、原点の近傍でのみ定義された関数を扱います。
例えば は原点では well-defined ですが、円 上では定義されません。この関数は の元ですが、 の元ではありません。
局所環になる場合
素イデアル で局所化すると、 は局所環になります。極大イデアルは のただ一つです。
これが「局所」環と呼ばれる所以です。素イデアルという「点」の周りだけを見ると、その点に対応する極大イデアルだけが残るのです。
局所化で性質を調べる
多くの環の性質は局所的(local)です。つまり、すべての局所化で成り立てば元の環でも成り立ちます。
が整域 ⇔ すべての極大イデアルで局所化しても整域
が正則 ⇔ すべての局所化 が正則局所環
が平坦 -加群 ⇔ すべての局所化 が平坦
局所化によって複雑な環を単純な局所環に分解し、そこで問題を解いてから結果を貼り合わせる、というのが代数幾何学の基本的な戦略です。