代数幾何学では、環の極大イデアルを「点」と見なします。この対応はヌルステレンサッツ(零点定理)に基づいており、代数幾何学の出発点となる考え方です。
点とイデアルの対応
アフィン空間 ( は代数閉体)の点 を考えます。この点を通るすべての多項式からなる集合
は の極大イデアルです。逆に、 が代数閉体なら、すべての極大イデアルがこの形をしています。
なぜ極大イデアルなのか
点 における「関数の値」を考えます。多項式 のこの点での値は です。「値が 」という条件で定まるイデアルがまさに です。
商環 を計算すると
となります。商環が体になることが、 が極大イデアルであることの証拠です。
零点と極大イデアル
点 での関数値が となる多項式全体は、 に対応する極大イデアルをなします。
極大イデアルの特徴
商環が体になるイデアルです。「これ以上大きくできない」真のイデアルという意味で極大です。
ヌルステレンサッツ
が代数閉体のとき、 の極大イデアルは、必ずある点 に対応します。これがヒルベルトのヌルステレンサッツ(弱い形)です。
代数閉でない体では事情が異なります。例えば の極大イデアル は、 の点に対応しません。商環は で体ですが、 は実数解をもたないからです。
スキーム論への拡張
スキーム論では、極大イデアルだけでなくすべての素イデアルを「点」と見なします。素イデアルは既約閉部分集合に対応し、これを「生成的点」(generic point)と呼びます。
例えば は、平面全体に対応する生成的点です。極大イデアル は通常の点、素イデアル ( は既約多項式)は曲線 の生成的点です。この見方では、点の概念が大幅に拡張されます。