体上有限生成な環(finitely generated algebra over a field)は、代数幾何学で扱う環の基本的なクラスです。アフィン多様体の座標環がまさにこの条件を満たします。
定義
体 上の環 が有限生成であるとは、有限個の元 が存在して
と書けることです。これは、 が多項式環 からの全射準同型
の像として得られることを意味します。したがって という形に書けます。
有限生成と有限の違い
有限生成(環として)
-代数として有限個の生成元で書ける。 は 上有限生成(生成元は )。
有限(加群として)
-ベクトル空間として有限次元。 は 上有限ではない(無限次元)。
有限生成のほうがはるかに広いクラスです。 は有限生成ですが有限ではありません。一方、 は有限生成かつ有限(2次元)です。
アフィン多様体との対応
を代数閉体とします。体 上有限生成な整域は、ある既約アフィン多様体の座標環になります。逆に、既約アフィン多様体の座標環は有限生成整域です。
例:放物線
は 上有限生成(生成元は )で、放物線の座標環です。
例:双曲線
は 上有限生成(生成元は )で、双曲線の座標環です。これは と同型です。
有限生成性がもたらす性質
体上有限生成な環には多くのよい性質があります。
ネーター環である(すべてのイデアルが有限生成)
Krull 次元が有限
極大イデアルで局所化すると剰余体は の有限次拡大
特に3番目はヌルステレンサッツの一般形と関係し、極大イデアルが「点」に対応することの代数的な根拠を与えます。
なぜ重要か
体上有限生成という条件は、環と幾何学を結びつける鍵です。この条件がないと、環に対応する幾何学的対象がうまく定義できません。代数幾何学が扱えるのは本質的にこのクラスの環であり、有限生成性は理論の出発点となる仮定なのです。