y=(3x2+2x+1)3 を展開してから微分するのは骨が折れます。u=3x2+2x+1 と置けば y=u3 になり、見慣れた形に変わる。
y=u3,u=3x2+2x+1
このように 2 つの関数をつないだものが合成関数です。x から u を作り、その u から y を作る、という二段構えの見方。
x を動かすと u がつられ、u につられて y が動きます。x が右端に近いほど u の動きは速く、y はさらに速い。
変化率は掛け算でつながる
x が少し動くと、u は dxdu 倍の速さで動きます。その u の動きに対して y は dudy 倍で動く。
二段を通した比は、2 つを掛けた値になります。
dxdy=dudy⋅dxdu
これが合成関数の微分公式です[1]。分数のように約分して見えるところが、この書き方の便利さ。
プライム記号なら次の形になります[2]。外側を微分し、内側の微分を掛ける、という手順がそのまま式に出ている。
{f(g(x))}′=f′(g(x))⋅g′(x)
外側を微分するとき、内側は 1 つのかたまりのまま残します。g(x) をばらして代入し直すわけではない。
外側の微分に現れる 3x2+2x+1 は、そのまま残っています。掛け算の相手として (6x+2) が付く形。
例:3 乗の形を展開せずに微分する
y=(3x2+2x+1)3 を計算します。u=3x2+2x+1 とおくと dudy=3u2、dxdu=6x+2。
dxdy=3u2(6x+2)=3(3x2+2x+1)2(6x+2)
6x+2=2(3x+1) なので、6(3x+1)(3x2+2x+1)2 とまとめられます。展開して 6 次式にする手間が、まるごと消えました。
例:e3x を微分する
u=3x とおくと y=eu です。dudy=eu、dxdu=3。
dxdy=e3x⋅3=3e3x
指数の肩に付いた係数が、そのまま前へ出てきます。(eax)′=aeax は使う場面が多いので、形で覚えてしまうと速い。
例:log∣tanx∣ を微分する
u=tanx とおきます。dudy=u1、dxdu=cos2x1。
dxdy=tanx1⋅cos2x1=sinxcosx⋅cos2x1=sinxcosx1
tanx を cosxsinx に戻すと約分が進みます。絶対値は微分では消えるので、log∣u∣ でも u1 のまま。
例:(logx)8 を微分する
対数が外側ではなく内側にある形です。u=logx とおくと y=u8。
dxdy=8(logx)7⋅x1=x8(logx)7
logx8 と (logx)8 は別物です。前者は 8logx なので、微分すると x8 になる。
例:分母の 2 乗を微分する
y=(3x2+1)21 は (3x2+1)−2 と書き直せます[1]。指数を負の数にすれば、商の公式を使わずに済む。
dxdy=−2(3x2+1)−3⋅6x=−(3x2+1)312x
負の指数でもべきの公式はそのまま働きます。分数式では、この書き直しが近道になることが多い。
y=x2+1 の導関数はどれか。
- y′=2x2+11
- y′=x2+1x
- y′=x2+12x
__RESULT__
u=x2+1 とおくと y=u1/2 です。dudy=2u1 に内側の微分 2x を掛けると、2x2+12x=x2+1x になります。内側の微分を忘れると 1 番目の形で止まってしまう。
f(ax+b) の形はすぐ書ける
内側が 1 次式のときは、内側の微分が定数 a になります[3]。合成関数の公式が、係数を前に出すだけの形に縮む。
{f(ax+b)}′=af′(ax+b)
sin(2x) なら 2cos(2x)、log(5x−1) なら 5x−15、(4x+3)7 なら 28(4x+3)6 です。
1 次式は数学Ⅲの計算で繰り返し現れます。ここだけは反射で書けるようにしておくと、時間の節約になる。
3 つ以上の合成
段が増えても考え方は変わりません。外から順に微分し、次の段の微分を掛けていくだけです[1]。
{f(g(h(x)))}′=f′(g(h(x)))⋅g′(h(x))⋅h′(x)
ライプニッツの記号なら dxdy=dudy⋅dvdu⋅dxdv という連なりです。約分の見立てが、そのまま段数ぶん伸びる。
例:3 段重ねを分解する
y=cos4(7x2+1) を微分します。いちばん外が 4 乗、次が余弦、いちばん内が 2 次式。
dxdy=4cos3(7x2+1)⋅{−sin(7x2+1)}⋅14x=−56xcos3(7x2+1)sin(7x2+1)
余弦の微分で出る負号を落とすと、符号がまるごと反対になります。段ごとに書き出してから掛け合わせると、抜けに気づきやすい。
なぜ掛け算になるのか
差の商を 2 段に分けて眺めると、掛け算になる理由が見えます。Δu=g(x+Δx)−g(x) とおきます。
ΔxΔy=ΔuΔy⋅ΔxΔu
有限の差では、この式はただの約分です。Δx→0 のとき Δu→0 となるので、右辺は dudy⋅dxdu に近づく。
Δu が 0 になる場合の扱いだけ、別に手当てが要ります。差の商を連続な補助関数に置き換えると、その場合も込めて証明できる[2]。
y=sin3x の導関数はどれか。
- y′=3sin2x
- y′=3sin2xcosx
- y′=3cos2xsinx
__RESULT__
sin3x は (sinx)3 の略記です。外側の 3 乗を微分して 3(sinx)2、これに内側 sinx の微分 cosx を掛けます。
つまずきやすいところ
内側の微分を掛け忘れる形がいちばん多い。(sin2x)′=cos2x は誤りで、正しくは 2cos2x。
外側を微分するとき、内側を展開してしまうと合成の形が崩れます。かたまりのまま残す。
logx2 と (logx)2 は別の関数。前者は x2、後者は x2logx。
ex2 の微分を 2xex とすると内側が消えます。正しくは 2xex2。
どこまでが内側かを決めてから書き始めると、段の数を数え違えにくい。
置きかえを紙に書き出す手間は、慣れるまでのあいだだけです。段の構造さえ見えていれば、頭の中で掛け合わせても間違えません。
参考文献
$u = 3x^2+2x+1$ と置けば $y = u^3$ になり、展開せずに微分できます。$x$ の動きが $u$ に伝わり、$u$ の動きが $y$ に伝わる。その比を掛け合わせたものが $dy/dx = (dy/du)(du/dx)$ です。$e^{3x}$、$\log|\tan x|$、$(\log x)^8$、$\cos^4(7x^2+1)$ まで段階を追って計算し、$f(ax+b)$ の形が係数を前に出すだけで済む理由も示します。内側の微分を掛け忘れる誤りへの対処つき。
u=x2+1 とおくと y=u1/2 です。dudy=2u1 に内側の微分 2x を掛けると、2x2+12x=x2+1x になります。内側の微分を忘れると 1 番目の形で止まってしまう。