微分係数はなにを測っているのか?高校数学Ⅲの導関数の入口
を少し動かしたとき、 はどれだけ動くか。その比を細かい極限まで詰めた値が微分係数です。
分子が の変化、分母が の変化。割り算の形なので、 が 進むあたりの変化量を表します。
を へ近づけると、 点を結ぶ直線が 点で触れる直線に変わる。微分係数が接線の傾きと呼ばれるのは、この移り変わりのためです。
間隔を縮めるほど、直線の傾きが一つの値に落ち着きます。落ち着いた先が で、この図では なので に寄っていく。
平均変化率と瞬間の変化率
から までの平均変化率は、区間をならした値です。区間の途中で速くなっても遅くなっても、その差は表に出ません。
微分係数は を へ送った先なので、区間ではなく点の情報になる。車でいえば、平均の速さと速度計の針の違いです。
区間の幅がゼロでは割り算ができないので、極限という手続きが要ります。近づけた先の値を読む、という言い方が正確なところ。
例:定義から を微分する
公式を使わず、定義だけで計算してみます。 とおくと、分子は次のように展開できる。
で割ると が残ります。 とすれば が得られる。
分子で が消えるところが要点です。消えなければ で割った瞬間に発散してしまう。
例:定義から を微分する
分数でも手順は変わりません。まず通分し、それから で割ります。
で割ると となり、 で に落ち着きます。
は とも書ける。指数の公式が負の数まで通用することが、ここで確かめられました。
導関数は数ではなく関数
各点の微分係数を求め、 を に書き直したものが導関数です。値ではなく関数が返ってくるところが、微分係数との違い。
グラフでいうと、接線の傾きを縦軸にとり直した新しいグラフができあがります。

上の放物線に 本の接線を引き、その傾きを下の直線へ写しました。 での傾き が、下では点 にあたります。
傾きだけを集めると直線が現れる。これが の意味です。
例:接線の方程式を作る
の における接線を求めます。傾きは 、通る点は 。
通る点と傾きの つで直線は決まります。増減や最大最小の問題も、出発点はここ。
数学Ⅱから数学Ⅲへ広がる関数
数学Ⅱで微分したのは多項式だけでした。数学Ⅲでは三角関数、指数関数、対数関数、分数関数、無理関数が加わる。
扱う関数が増えるぶん、公式も増えます。とはいえ土台は定義の式ひとつで、どの公式もそこから導かれる[1]。
角の単位は弧度法です。度数法のままだと が崩れ、余計な定数が付いてしまう。
公式を組み立てる 4 つの規則
個々の関数の公式に次の規則を重ねると、守備範囲が一気に広がります。
積の公式を としないところが落とし穴です[2]。片方だけ微分した項を つ作り、それを足す形になる。
例:規則を組み合わせる
なら積の規則です。 と を当てはめます。
なら合成の規則になる[3]。内側 の微分である を掛けます。
共通因数でくくる癖をつけると、あとで増減表を書くときに楽になります。
の導関数はどれか。
微分できない点もある
すべての関数が、すべての点で微分できるわけではありません。 の原点がその例です。
右から近づくと差の商は 、左から近づくと 。近づく向きで値が変わるので、極限が存在しません。
グラフに角があると微分できない。接線が 本に決まらないためです。
微分できる点では、グラフはなめらかにつながります。逆向きの主張は成り立たず、連続でも微分できるとは限らない。
で微分できない関数はどれか。
は原点で右側の傾きが 、左側が になり、極限が つに決まりません。 と は原点でなめらかにつながり、傾きはそれぞれ と です。
微分係数の読み方をそろえる
同じ でも、場面によって呼び名が変わります。どちらの読み方も、指しているものは同じ値です。
点 における接線の傾き。符号と大きさが図から読める
が 増えるあたりの の増え方。速度や密度のような量に対応する
物理では、位置を時刻で微分すると速度、速度をもう一度微分すると加速度になります。数学Ⅲの微分は、こうした量を扱うための道具でもある。










分数のまま商の公式を当ててもよいのですが、y=x+x1 と分けるほうが早い。(x)′=1 と (x1)′=−x21 を足せば 1−x21 になります。