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磁石を近づけるとコイルはなぜいやがるのか?ファラデーとレンツの法則

コイルに磁石を近づけると電流が流れます。止めると流れません。遠ざけると、逆向きに流れる。

流れるかどうかを決めているのは磁場の強さではなく、磁束の変化の速さです[1]

は巻数、 が磁束です。マイナス符号がレンツの法則にあたり、向きを決めています。

磁束は「何本つらぬくか」

磁束は、コイルの面を通り抜ける磁力線の量です。面積 の面を磁束密度 が垂直につらぬくなら、次の形になります。

は面に立てた垂線と磁場のなす角。単位はウェーバ(Wb)で、 です[1]

この式には 3 つの量が入っています。 のどれが変わっても磁束は変わる。だから起電力を生む方法も 3 通りあります。

磁場の強さを変える。磁石を動かす、電磁石の電流を変える。
面積を変える。コイルを引きのばす、導体棒をすべらせる。
向きを変える。コイルを回す。発電機がこれにあたる。

止まっている磁石のそばにコイルを置いても、何も起きません。強い磁場のなかに静かに置いてあるだけでは起電力は 。変化だけが効きます。

マイナス符号がレンツの法則

誘導電流は、磁束の変化をさまたげる向きに流れます[2][3]

磁束が増えているなら、それを減らす向きの磁場をつくる。減っているなら、増やす向きの磁場をつくります。近づければ押し返し、遠ざければ引き止める。

向きを出す手順は決まっています。

外からの磁場の向きを図に書きこむ

コイルをつらぬく磁束が増えているか減っているかを見る

それを打ち消す向きの磁場を決める

右手でコイルをにぎり、その磁場をつくる電流の向きを読む

4 段目で使うのは、コイルの右手の当て方です。4 本の指が電流、親指が内側の磁場になります。

さまたげないと、エネルギーが湧く

レンツの法則は、覚えるための決まりごとではありません。エネルギー保存から出てきます[2]

もし誘導電流が磁石を引きこむ向きに流れたら、磁石は勝手に加速しながら電流も生む。押しても引いてもエネルギーが増える装置になってしまいます。

実際には逆向きです。磁石を動かすには手が仕事をする必要があり、その仕事が電流のエネルギーになる。手を止めれば電流も止まります。

発電所の発電機も同じ関係にあります。電気を使うほど、タービンが重くなる

消費が増えると誘導電流が増え、回転をさまたげる力も増える。燃料を余分に燃やして、その力に打ち勝っている。

例 1:磁場が弱まる

面積 の 1 巻きコイルを、磁場に垂直に置きます。 から で変わりました。

です。磁束が減っているので、誘導電流はそれを補う向きに流れます。

例 2:巻数を増やす

1 辺 の正方形コイルを 回巻き、抵抗を とします。磁場は面に垂直で、 の割合で弱まっています[1]

電流は 。巻数がそのまま掛かるので、 回巻けば 倍になります。

例 3:コイルを回す

面積 のコイルを のなかに置き、面が磁場に垂直な状態から平行になるまで で回します。

はじめの磁束は 、終わりは

磁場も面積も変えずに起電力が出ました。角度だけで足ります。

例 4:面積が縮む

のなかで、コイルの面積が から で縮みます。

のどれで変化をつくっても、式の使い方は変わりません。

例 5:斜めにつらぬく

、面積 、垂線と磁場のなす角が のときの磁束を出します。

垂直に置いたときの半分です。 なので、面を磁場と平行にすると磁束は になります。

例 6:止めてみる

例 2 のコイルを、 という強い磁場のなかに静かに置きます。起電力はいくつでしょうか。

です。磁束は大きくても、変わらなければ何も起きません。強さではなく変化が効く、という点がこの法則の中心にあります。

コイルに棒磁石の N 極を近づけました。コイルの磁石側は、どちらの極になりますか。

  • S 極になり、磁石を引きこむ
  • N 極になり、磁石を押し返す
  • 極はできない
__RESULT__

レンツの法則から、誘導電流は磁束の増加をさまたげる向きに流れます。近づいてくる N 極に対しては N 極を向けて押し返す。引きこむ向きに流れると、磁石が勝手に加速しながら電流も生むことになり、エネルギー保存に反します。

押さえどころ

磁束、単位はウェーバ
誘導起電力
起電力を生む 3 通り を変える、 を変える、 を変える
マイナス符号変化をさまたげる向き(レンツの法則)
根拠エネルギー保存

計算するときは大きさだけを で出し、向きはレンツの法則で別に決めます。符号を式に任せると、図の向きと合わせるところで混乱しがちです。

変化の速さが効くので、同じ磁石でも速く動かすほど大きな起電力になります。ゆっくり動かせば、時間をかけて同じ磁束の変化を配ることになり、起電力は小さくなる。

参考文献

13.2: Faraday's Law/University_Physics_II_-_Thermodynamics_Electricity_and_Magnetism_(OpenStax)/13:_Electromagnetic_Induction/13.02:_Faradays_Law). Physics LibreTexts, OpenStax University Physics Volume 2.
13.3: Lenz's Law/University_Physics_II_-_Thermodynamics_Electricity_and_Magnetism_(OpenStax)/13%3A_Electromagnetic_Induction/13.03%3A_Lenz's_Law). Physics LibreTexts.
Induktionsstrom und Lenzsche Regel. abiweb(ドイツ語).
コイルに磁石を近づけると電流が流れ、止めると流れず、遠ざけると逆向きに流れます。効いているのは磁場の強さではなく、磁束が変わる速さ。$\varepsilon=-N\Delta\Phi/\Delta t$ の $\Phi=BS\cos\theta$ には $B$、$S$、$\theta$ の 3 つが入っているので、起電力を生む道も 3 通りあります。マイナス符号はレンツの法則で、誘導電流は変化をさまたげる向きに流れる。もし引きこむ向きに流れたら、磁石が勝手に加速しながら電流も生む装置になってしまいます。向きを決める手順と、巻数や角度を変えたときの計算例を並べました。