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同じ電流でも熱くなる場所とならない場所(電力とジュール熱、電力量)

抵抗で消費される電力は 3 通りに書けます[1]

を代入して行き来しているだけなので、値はどれも同じ。ところが、どれを使うかで見え方が変わります。

を見ると、抵抗が大きいほど熱くなりそうです。 を見ると、抵抗が小さいほど熱くなりそうに見える。矛盾しているようで、どちらも正しい。

何が共通かで決まる

直列につないだ抵抗には、同じ電流が流れます。共通なのは なので、 で比べる。抵抗の大きいほうが熱くなります。

並列につないだ抵抗には、同じ電圧が掛かります。共通なのは なので、 で比べる。抵抗の小さいほうが熱くなります。

つなぎ方で答えが逆になる、というところが要点です。

直列

電流が共通。 で比べる。抵抗が大きいほど熱い

並列

電圧が共通。 で比べる。抵抗が小さいほど熱い

熱に変わる量

電力は 1 秒あたりのエネルギーです。時間を掛けると、出た熱の総量になります。

ジュール熱と呼びます。単位はジュール。抵抗のなかで電子が原子にぶつかり、運動のエネルギーを原子へ渡した結果です。

電熱器やトースターは、これを目的にした道具。いっぽう配線やモーターでは、同じ熱がただの損失になります。

電力量はキロワット時で数える

電気料金の単位はキロワット時()です[1]

を 1 時間使ったときのエネルギー。ジュールで書くと桁が大きすぎるので、生活の場面ではこちらを使います。

は、 の人を 持ち上げる ぶんのエネルギーにあたります。

ジュール。数十円で買える量が、それだけの仕事に相当する。

例 1:電球を調べる

の電球です。

。3 つの式は、どの 2 つが分かっているかで選び分けます。

例 2:直列でくらべる

を直列にし、 を流します。

大きい抵抗のほうがよけいに熱くなりました。電流が同じなので、 がそのまま効きます。

例 3:並列でくらべる

を並列にし、 を掛けます。

こんどは小さい抵抗のほうが熱い。例 2 と逆になりました。抵抗の大小だけでは決まらない、という例です。

例 4:発熱量を出す

例 3 の 分つないだままにします。

。水 度ほど温められる量です。

例 5:電球をとりかえる

の白熱電球を の LED に替えます。1 日 3 時間、1 年間使った場合を比べます[1]

差は が 30 円なら、年に 2600 円ほど変わります。

例 6:送電線の熱

が流れる送電線の抵抗が だとします。

が線で熱になっています。電圧を上げて電流を下げれば、この損失は 2 乗で減る。送電に高電圧を使う理由がここにあります。

の抵抗を並列につなぎました。よけいに熱くなるのはどちらですか。

  • のほう
  • のほう
  • どちらも同じ
__RESULT__

並列では電圧が共通なので で比べます。 が分母にあるので、小さい のほうが 4 倍熱くなる。直列につないだ場合は逆で、 から のほうが熱くなります。

押さえどころ

電力は 。値はどれも同じ。
比べるときは、共通な量を含む式を選ぶ。
直列は電流が共通なので 。抵抗が大きいほど熱い。
並列は電圧が共通なので 。抵抗が小さいほど熱い。
ジュール熱は 。電力量は

「抵抗が大きいほど熱くなる」という覚え方は、半分だけ正しい。直列につながっている場面でしか通りません。

問題を読んだら、まず何が共通かを探します。そこが決まれば、使う式も答えの向きも自動的に決まる。

参考文献

9.6: Electrical Energy and Power/University_Physics_II_-_Thermodynamics_Electricity_and_Magnetism_(OpenStax)/09:_Current_and_Resistance/9.06:_Electrical_Energy_and_Power). Physics LibreTexts, OpenStax University Physics Volume 2.
Reihen- und Parallelschaltung von Widerständen. Grundwissen Elektronik(ドイツ語).
Étude des réseaux électriques en régime continu. Femto-Physique(フランス語).
$P=IV=I^2R=V^2/R$ は同じ値ですが、$I^2R$ は抵抗が大きいほど熱く、$V^2/R$ は小さいほど熱く見えます。矛盾ではありません。決めているのは、その回路で何が共通かです。直列は電流が共通なので $I^2R$ で比べ、大きい抵抗が熱くなる。並列は電圧が共通なので $V^2/R$ で比べ、小さい抵抗が熱くなります。「抵抗が大きいほど熱い」という覚え方は半分だけ正しい。ジュール熱 $Q=I^2Rt$、電力量のキロワット時、送電線の損失が電流の 2 乗で効く話まで並べました。