スイッチを切った瞬間に火花が出る〜自己誘導とコイルのエネルギー
コイルにつないだスイッチを切ると、接点で火花が飛びます。電源を切ったのに、電圧が上がっているためです。
原因は自己誘導です。コイル自身に流れる電流が変わると、その変化をさまたげる向きの起電力がコイル自身に生まれます[1][2]。
は自己インダクタンスで、単位はヘンリー(H)。 は、毎秒 の割合で電流が変わるときに を生むコイルです[1]。
コイルは電流の変化をきらう
スイッチを入れた瞬間、電流はいきなり最大値にはなりません。増えようとするそばから、それをさまたげる起電力が立つ。
じわじわと立ち上がり、やがて に落ち着きます。落ち着いてしまえば なので、コイルはただの導線と同じ。
切るときが荒っぽい。接点が離れるのは ミリ秒よりずっと短い時間なので、 が極端に小さくなります。 が跳ね上がり、電源電圧をはるかに超える起電力が出る。
L は形で決まる
自己インダクタンスは、コイルの形と巻き方だけで決まります。流す電流にはよりません[1]。
断面積 、長さ 、巻数 のソレノイドなら次の形。
が 2 乗で入ります。巻数を 2 倍にすると、つくる磁場が 2 倍になり、それを受ける巻数も 2 倍になるためです。
が 2 乗で効くのは、つくる側と受ける側の両方が巻数に比例するためです。
コイルがつくる磁場は巻数に比例し、その磁束を鎖交させる回数も巻数に比例する。掛け合わせて 2 乗。
たくわえるエネルギー
コイルに電流を流していくとき、自己誘導が逆らってきます。それに打ち勝つために電源がした仕事が、コイルにたくわえられます[3]。
導き方はコンデンサーと同じ形です。電流が のとき、増やすのに要る仕事率は 。 から まで積むと になります[3]。
ここでも が出ます。はじめは軽く、最後だけ重い。平均をとって半分。
エネルギーは磁場のなかにある
たくわえたエネルギーは、コイルの内側の磁場が持っています。単位体積あたりでは次の形[3]。
コンデンサーの と対になる式です。電場と磁場で、たくわえ方の形がそろっています。

例 1:インダクタンスを測る
回巻きのコイルで、電流が から まで で一様に増えるあいだ、 の起電力が出ました[1]。
です。巻数は式に出てきません。 の値そのものが、形の情報をすべて含んでいます。
例 2:形から出す
断面積 、長さ 、 回巻きのソレノイドです。
。巻数を 回にすると 4 倍の になります。
例 3:たくわえるエネルギー
例 2 のコイルに を流します。
。電流を 2 倍にすると 4 倍になります。
例 4:磁場の側から数える
例 3 の状態で、コイルの内側の磁束密度を出します。。
エネルギー密度は次のとおり。
内側の体積は なので、全体で 。例 3 と一致します。
例 5:切る速さで電圧が変わる
例 2 のコイルに を流した状態から、電流を にします。まず かけた場合。
つぎに で切った場合。
です。電源が でも、切る速さ次第でこれだけの電圧が出る。火花の正体がこれです。
例 6:点火装置
自動車の点火プラグは、この原理で高電圧をつくります。コイルの電流を急に切り、 万ボルト規模の起電力を得る仕組み[2]。
たくわえたエネルギー 自体は小さくても、短時間に出せば電圧は高くなります。エネルギーと電圧は別ものだ、という例になっています。
コイルに定常電流が流れています。このときコイルの両端に現れる誘導起電力はいくつですか。
- に等しい
- 0 になる
- に等しい
コンデンサーと並べる
| くらべる点 | コンデンサー | コイル |
|---|---|---|
| きらうもの | 電圧の急な変化 | 電流の急な変化 |
| たくわえる場所 | 電場 | 磁場 |
| エネルギー | ||
| 密度 |
コンデンサーは電圧を、コイルは電流を保とうとします。 と を入れかえると、2 つの式は同じ形になる。
この対応は交流回路でも続きます。片方を理解しておけば、もう片方は入れかえて読めます。















誘導起電力は −LΔI/Δt で、電流の変化に比例します。定常なら変化が 0 なので起電力も 0。コイルはただの導線としてふるまいます。21LI2 はたくわえたエネルギーで、電圧ではありません。