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銅パイプのなかで磁石がゆっくり落ちる!うず電流と電磁ブレーキ

銅のパイプに強い磁石を落とすと、数秒かけてゆっくり降りてきます。同じ大きさの鉄の玉なら一瞬で落ちる。

パイプは磁石にくっつきません。それでも落下は止まりかけます。効いているのはうず電流です[1]

板のなかを回る電流

導体を磁場のなかで動かす、あるいは導体のそばで磁場を変えると、導体のなかに誘導電流が流れます[2]

コイルなら道が 1 本なので、電流も 1 本の輪になる。板や塊では道が決まっていないので、電流は渦を巻くように回ります。これがうず電流です[3]

向きはレンツの法則で決まります。磁束の変化をさまたげる向き。だから動きを止める側にはたらきます[2]

磁石の前方では磁束が増えるので、それを打ち消す向きに電流が回ります。後方では磁束が減るので、引き止める向きに回る。前でも後ろでもブレーキになります[2]

スリットを入れると効かなくなる

うず電流は、渦を巻ける広さを必要とします[3]。板に細い切れこみを入れると、大きな輪の通り道が断ち切られる。

振り子の重りを金属板にして磁極のあいだで振らせると、この差がはっきり出ます[2][4]

切れこみのない板

大きなうず電流が回り、強く制動される。数往復で止まる

切れこみを入れた板

輪が細かく分かれて打ち消し合い、ほとんど制動されない

同じ金属、同じ質量、同じ磁石でも、電流の通り道があるかどうかで結果が変わります。うず電流が原因だと分かる実験です。

速さに比例するブレーキ

うず電流の大きさは磁束の変化の速さに比例します。制動力もそれに比例する。

速いときはよく効き、遅くなるほど弱まります。速さが になれば力も 。うず電流ブレーキだけでは、完全には止まりません[2]

電車の電磁ブレーキが、最後に機械式のブレーキへ切りかわるのはこのためです。高速域で滑らかに減速し、停止は別の仕組みが受け持ちます。

摩擦を使わないので、部品がすり減りません。しかも動きが滑らかで、はねかえりも出ない。

精密な天秤の針を静める仕組みにも使われる。摩擦で止めると、止まる位置がずれてしまう。

熱にしたいときと、したくないとき

うず電流はエネルギーを熱に変えます。熱がほしい場面では、これが目的になる。

電磁調理器は、鍋の底にうず電流を流して発熱させます[2]。金属探知機は、埋まった金属に流れるうず電流の影響を読みます。

いっぽう変圧器やモーターでは、鉄心に流れるうず電流がただの損失です。防ぐために、鉄心を 1 枚の塊にせず、絶縁した薄い鉄板を重ねてつくります[3][4]

板を磁力線と平行に並べると、大きな渦の通り道が断たれます。1 枚あたりの断面が小さいので生まれる起電力も小さく、電流の道の抵抗は高くなる。

例 1:パイプの材質を変える

同じ磁石を、銅、アルミニウム、プラスチックのパイプに落とします。

いちばんゆっくり落ちるのは銅です。電気をよく通すのでうず電流が大きく、制動も強くなる[1]。アルミニウムは銅より抵抗が大きいので、やや速い。

プラスチックでは電流が流れないので、自由落下と変わりません。

例 2:磁石の強さを変える

制動力はうず電流に比例し、うず電流は起電力に比例します。起電力は磁束の変化なので磁束密度に比例する。

さらに、電流が受ける力も磁束密度に比例します。合わせて、制動力は の 2 乗で効きます。

磁石を 2 倍強くすると、ブレーキは 4 倍になる。強い磁石を使うほど劇的に見えるのはこのためです。

例 3:速さの効き方

落ち始めは速さが なので、制動力も 。重力だけが効いて加速します。

速くなるほど制動が強まり、やがて重力とつり合う。そこから先は一定の速さで落ちます。導体棒がレールをすべるときと同じ形の終端速度です。

例 4:鉄心を積層する

厚い鉄の塊を鉄心に使うと、大きなうず電流が回って熱になります。 ほどの鉄板を絶縁して重ねると、この道が断たれる[3]

板の断面が小さいぶん誘導される電圧も小さく、渦の通り道は細くて長いので抵抗も高い。両方が効いて損失が下がります。

例 5:電力量計の円板

昔の電力量計には、アルミニウムの円板が入っていました。電流と電圧に応じた回転力を受けて回ります。

このままでは加速し続けるので、永久磁石を近づけてうず電流の制動をかける。制動が回転の速さに比例するので、円板は消費電力に比例した速さで回ります。

回転数を数えれば使った電力量が分かる。積分を機械でやっている仕組みです。

例 6:切れこみの向き

板に切れこみを入れるとき、向きが効きます。うず電流が回る面を横切る向きに入れれば効きますが、電流の流れに沿った向きでは効きません。

鉄心の板を磁力線と平行に並べるのも同じ理由です。磁束は通しつつ、それと垂直な面を回る電流だけを断ち切っています。

うず電流ブレーキで動く円板の速さが半分になりました。制動力はどうなりますか。

  • 変わらない
  • 半分になる
  • 4 分の 1 になる
__RESULT__

うず電流は磁束の変化の速さに比例し、制動力はその電流に比例します。速さが半分なら制動力も半分。速さが 0 になれば力も 0 になるので、この方式だけでは完全には止まりません。

押さえどころ

うず電流は、板や塊のなかを渦を巻いて流れる誘導電流。
向きはレンツの法則で決まり、いつでも動きをさまたげる。
制動力は速さに比例し、速さ 0 では 0 になる。
磁束密度には 2 乗で効くので、強い磁石ほど劇的に効く。
熱がほしければ利用し、いらなければ鉄心を積層して断ち切る。

同じ現象が、道具にもなり損失にもなります。分かれ目は、電流の道を残すか断つか。設計はその一点で決まっています。

参考文献

Phénomène d'induction associé au mouvement d'un aimant dans un tube de cuivre. Bulletin de l'Union des Physiciens(フランス語).
13.6: Eddy Currents/University_Physics_II_-_Thermodynamics_Electricity_and_Magnetism_(OpenStax)/13%3A_Electromagnetic_Induction/13.06%3A_Eddy_Currents). Physics LibreTexts, OpenStax University Physics Volume 2.
Wirbelströme. Lernhelfer(ドイツ語).
Die Wirbelstrombremse. Landesbildungsserver Baden-Württemberg(ドイツ語).
銅は磁石にくっつかないのに、パイプに落とした磁石は数秒かけて降りてきます。板や塊のなかでは電流の道が決まっていないので、誘導電流が渦を巻いて流れる。向きはレンツの法則で決まり、磁石の前でも後ろでも動きをさまたげる側にはたらきます。板に切れこみを入れると渦の通り道が断たれ、制動がほとんど消える。制動力は速さに比例するので、速さ 0 では力も 0 になり、この方式だけでは止まりきりません。電磁調理器や金属探知機では熱と信号に使い、変圧器では鉄心を積層して断ち切る。同じ現象が道具にも損失にもなります。