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磁場を横切る導体棒には電池と同じ起電力が生まれる

磁場のなかを導体棒がすべると、両端に電位差が生まれます。大きさは磁束密度と長さと速さの積です[1]

は磁束密度、 は棒のうち磁場のなかにある長さ、 は速さ。棒そのものが電池の役割をします。

面積が増えるから

導線をコの字に置き、その上を棒がすべる形で考えます。棒が距離 だけ進むと、回路が囲む面積は になる。

磁束は です。時間で割ると、 のところが速さになります[1]

磁場も棒の長さも変わっていません。変わっているのは囲む面積だけ。ファラデーの法則の を動かした場合にあたります。

電子が押されるから

同じ答えを、棒のなかの電子から出すこともできます。

棒といっしょに動く電子は、速さ で磁場を横切ります。1 個あたり のローレンツ力を受けて、棒の片端へ寄っていく。

片端に負、反対端に正がたまると、棒のなかに電場ができます。この電場が電子を押し戻す向きにはたらき、 で釣り合ったところで移動が止まる。

棒の両端の電位差は に長さを掛けたものです。

面積から出した答えと一致しました。マクロに見ても、ミクロに見ても同じ式になります。

棒はブレーキを受ける

回路が閉じていれば電流が流れます[1]

電流が流れる棒は磁場から力を受けます。その向きは、レンツの法則から、動きをさまたげる向き[3]

速さに比例するブレーキです。速く動かすほど強く引き止められます。

回路を開いておくと、力を受けずに動きます。電流が流れないためです。

起電力は生まれるが電流は流れない。両端に電圧が現れるだけで、棒は自由にすべる。

仕事はどこへ行くか

一定の速さで動かし続けるには、ブレーキとつり合う力を加え続けることになります。その仕事率は次のとおり。

いっぽう抵抗で消費される電力は です。

ぴったり一致します[1][2]。加えた仕事がすべて熱に変わっており、収支が合う。

例 1:起電力を出す

のなかを、長さ の棒が ですべります。

乾電池の 5 分の 1 ほど。速さを上げれば比例して増えます。

例 2:電流と力

例 1 の回路の抵抗を とします。

のブレーキが掛かります。手はこれとつり合う力を加え続けることになる。

例 3:収支を確かめる

例 2 の状態で、手の仕事率と抵抗の消費電力を比べます。

どちらも 。一致しました。

例 4:宇宙でのばす

地球の磁場 のなかを、長さ の導線が で動きます[1]

。磁場が弱くても、長さと速さで補えます。人工衛星から導線を垂らして発電する実験が実際に行われました。

例 5:終端速度

斜面のレールを棒がすべり落ちます。質量 、傾き とします。

速さが上がるほどブレーキが強くなり、やがて重力の斜面成分とつり合います。

これ以上は速くなりません。抵抗を小さくすると終端速度も下がります。

例 6:回路を開く

例 2 の回路を途中で切り、電流が流れないようにします。棒にはたらく力はどうなるでしょうか。

です。起電力は のまま出ていますが、電流が流れないので 。棒は力を受けずにすべり続けます。

両端に電圧計をつなげば が読めます。電圧は出ているのに力は掛からない、という状態です。

一定の速さですべる導体棒の速さを 2 倍にすると、抵抗で消費される電力は何倍になりますか。

  • 2 倍
  • 4 倍
  • 変わらない
__RESULT__

起電力が で 2 倍、電流も 2 倍になります。電力は なので 4 倍。手が加える力も から 2 倍になり、仕事率は力かける速さで 4 倍です。どちらから数えても合います。

押さえどころ

起電力は 。面積の変化からも、ローレンツ力からも同じ式が出る。
電流は 。回路が閉じているときだけ流れる。
棒が受ける力は で、動きをさまたげる向き。
手が加える仕事は、すべて抵抗の熱になる。
回路を開くと電流も力も 0 になり、電圧だけが残る。

この仕組みは、発電機の最も単純な形です。棒を回転する枠に替えれば、そのまま交流発電機になります。

動かすのをやめれば発電も止まる。エネルギーは、動かし続ける側が払っています。

参考文献

13.4: Motional Emf/University_Physics_II_-_Thermodynamics_Electricity_and_Magnetism_(OpenStax)/13%3A_Electromagnetic_Induction/13.04%3A_Motional_Emf). Physics LibreTexts, OpenStax University Physics Volume 2.
Induction électromagnétique. Femto-Physique(フランス語).
Induktionsstrom und Lenzsche Regel. abiweb(ドイツ語).
レールの上を導体棒がすべると、両端に $\varepsilon=Blv$ の電位差が現れます。回路が囲む面積が増えるからと見ても、棒のなかの電子がローレンツ力で片端へ押されるからと見ても、同じ式になる。回路が閉じていれば $I=Blv/R$ が流れ、棒は $B^2l^2v/R$ のブレーキを受けます。速さに比例するので、斜面をすべる棒はやがて終端速度に落ち着く。手が加える仕事は運動エネルギーにならず、そっくり抵抗の熱へ移ります。回路を開くと力が消えて電圧だけが残るところまで確かめました。