二次方程式の因数分解による解法 - たすきがけの使い方
二次方程式を解く方法はいくつかありますが、因数分解が使える場合はそれが最も速い解法です。特に で のとき、組み合わせを効率よく探す技法として「たすきがけ」が役立ちます。
因数分解による解法の原理
二次方程式を因数分解で解くには、 ならば または という性質を使います。たとえば なら、
と因数分解でき、 または から が得られます。
この方法は解の公式よりも計算が軽く、暗算で済むこともあります。ただし、すべての二次方程式が整数係数できれいに因数分解できるわけではないので、因数分解できるかどうかを見極める力も必要です。
のときの因数分解
の形では、かけて 、たして になる 2 数を探します。

を因数分解で解きなさい。
かけて 、たして になる 2 数を探します。 の因数の組を書き出すと、
| 積が 12 | 和 |
|---|---|
と が条件を満たすので、
よって です。

を因数分解で解きなさい。
かけて 、たして になる 2 数を探します。積が負なので、正と負の組み合わせを考えます。
| 積が | 和 |
|---|---|
と が条件に合うので、
よって です。積が負のときは「絶対値が大きいほうの符号が和の符号と一致する」と考えると、組み合わせを絞りやすくなります。
たすきがけとは何か
のときは 2 数を探すだけで済みますが、 のように の場合は事情が変わります。因数分解の形は となり、 の 4 つを同時に決めなければなりません。
このとき、組み合わせを視覚的に整理する方法がたすきがけです。
たすきがけという名前は、候補の数を斜めに交差させてかける操作が、着物の袖をたくし上げるときに紐を背中で交差させるたすきがけの形に似ていることに由来します。
紐を X 字に交差させる動作のこと。
たすきがけの手順
を の形に因数分解する手順を説明します。
を 2 数 の積に分解する()
を 2 数 の積に分解する()
たすきにかけて となる組を探す
と因数分解する
具体的に でやってみます。 の分解は のみ、 の分解は のみなので、配置は次の 2 通りです。
→ 交差積 (不一致)
→ 交差積 (一致)
配置 B で交差積が に一致したので、
よって です。
たすきがけの図の読み方
たすきがけは次のような図で書かれることが多いです。 を例にとると、
<div class="tasuki-wrap">
<table class="tasuki">
<tr>
<td class="num">1</td>
<td class="mid"></td>
<td class="num">3</td>
<td class="arrow">→</td>
<td class="result">6</td>
</tr>
<tr>
<td class="num">2</td>
<td class="mid"></td>
<td class="num">1</td>
<td class="arrow">→</td>
<td class="result">1</td>
</tr>
<tr class="sum-row">
<td colspan="4" class="sum-label"></td>
<td class="sum-val">7</td>
</tr>
</table>
<p class="caption">左列が <em>a</em> の分解、右列が <em>c</em> の分解。斜めにかけた値の和が <em>b</em> に等しければ成功。</p>
</div>.tasuki-wrap {
display: flex;
flex-direction: column;
align-items: center;
margin: 8px 0;
}
.tasuki {
border-collapse: collapse;
font-size: 18px;
}
.tasuki td {
padding: 4px 10px;
text-align: center;
}
.tasuki .mid {
width: 20px;
position: relative;
}
.tasuki tr:first-child .mid::after,
.tasuki tr:nth-child(2) .mid::before {
content: '';
position: absolute;
width: 40px;
height: 1px;
background: #666;
}
.tasuki tr:first-child .mid::after {
top: 60%;
left: -10px;
transform: rotate(30deg);
}
.tasuki tr:nth-child(2) .mid::before {
top: 40%;
left: -10px;
transform: rotate(-30deg);
}
.arrow { color: #999; }
.result { font-weight: bold; color: #2563eb; }
.sum-row .sum-label { border: none; }
.sum-val {
font-weight: bold;
color: #dc2626;
border-top: 2px solid #333;
}
.caption {
margin-top: 8px;
font-size: 13px;
color: #666;
}左列の と右列の を斜めにかけて 、左列の と右列の を斜めにかけて 、合計 が に一致するのでこの組み合わせが正解です。図の左列から を読み取ります。
例題:係数が大きい場合

を因数分解で解きなさい。
の分解は 、 の 2 通りがあり、 の分解は のみです。組み合わせが増えるので、たすきがけで整理します。
| 交差積 | ||
|---|---|---|
のとき交差積が で一致するので、
よって です。
の分解パターンが多いほど組み合わせが増えますが、表に書き出すことで見落としを防げます。慣れてくると、交差積が明らかに大きすぎる組み合わせは飛ばせるようになります。
例題:負の係数を含む場合

を因数分解で解きなさい。
が負で が正なので、 はともに負の値をとります。 の分解は 、 の分解(負の組)は 、 です。
で試すと、交差積は で一致します。
よって です。
のとき は同符号で、 の符号と一致します。 のとき は異符号です。この判断を最初にしておくと、試す組み合わせが大幅に減ります。
因数分解の結果を展開して元の式に戻るか確認する習慣をつけましょう。 で確かに一致します。
例題: が負の場合

を因数分解で解きなさい。
が負なので、 と は異符号になります。 の分解は 、 の分解は 、、、 の 4 通りです。
で試すと、 で不一致。 とすると、 で に一致します。
よって です。
因数分解できるかどうかの判定
すべての二次方程式が整数係数で因数分解できるわけではありません。判別式 が完全平方数()であれば、解が有理数になるため整数係数で因数分解できます。

は因数分解できるか。
なので、実数解を持たず因数分解できません。

は因数分解できるか。
です。 は正なので実数解は存在しますが、完全平方数ではないので解は無理数になります。整数係数では因数分解できないため、解の公式や平方完成を使う必要があります。
が完全平方数 → 解が有理数 → 整数係数で因数分解可能 → たすきがけが有効
が完全平方数でない → 解が無理数または虚数 → 解の公式や平方完成で解く
解法の選び方
因数分解による解法は万能ではありませんが、使えるときは最速の方法です。問題を見たときの判断の流れを整理しておきます。
まず因数分解を試みる
見つからなければ判別式で確認する
が完全平方数でなければ解の公式を使う
たすきがけは慣れないうちは面倒に感じますが、 と の分解パターンを素早く書き出す練習を重ねると、自然に速くなっていきます。特に模試や入試では計算スピードが大きな差になるため、因数分解で解ける問題を見抜く力は重要です。
を因数分解すると?
p=2,r=3,q=−1,s=−2 とすると交差積は 2⋅(−2)+(−1)⋅3=−4−3=−7 で一致します。よって (2x−1)(3x−2)=0 です。