複素数の分数の実数化(分母の有理化の複素数版)
分母に複素数が含まれる分数は、そのままでは扱いにくい形をしています。これを実数の分母に変換する操作が「分母の実数化」です。考え方は平方根の有理化とまったく同じで、分母の共役複素数を分子・分母の両方に掛けるだけです。
共役複素数とは
実数化の手順に入る前に、共役複素数について確認しておきましょう。複素数 に対して、虚部の符号を反転させた を共役複素数といいます。
虚部が正(または元の形)。
虚部の符号だけを反転させたもの。 と書くこともある。
共役複素数の最も重要な性質は、元の複素数と掛け合わせると実数になることです。
なので、虚数部分が消えて という実数だけが残ります。これは平方根の有理化で となるのと同じ構造です。
この性質を利用して、分母に共役複素数を掛ければ分母を実数にできるというのが、分母の実数化の原理です。
分子にも同じものを掛けるので、分数全体の値は変わらない。
実数化の公式
分母が の場合、分子・分母に を掛けます。
分母が の場合は、逆に を掛けます。
どちらの場合も、分母の虚部の符号を反転させたものを掛けるという点は共通しています。
分母の複素数の共役をとる
分子・分母の両方にその共役複素数を掛ける
分母が実数になるので、分子を整理して完成
例題 1:最もシンプルなケース
分母は なので、共役複素数は です。分子・分母に を掛けると、
という結果は一見意外に感じるかもしれません。検算として を確認すれば、確かに正しいとわかります。
例題 2:きれいに割り切れるケース
共役複素数 を掛けます。
分母が となり、分子の ときれいに約分できました。このように分母の実部と虚部がピタゴラス数の組み合わせになっていると、計算が簡潔になります。
例題 3:分子も複素数のケース
共役複素数 を掛けます。
まず分母を計算すると です。分子は展開して、
よって、
検算として となり、元の分子と一致します。
例題 4:分母が純虚数のケース
の共役複素数は です。
分母が純虚数(実部が )のときも、やることは同じです。 の共役は ですから、 を掛ければ分母が実数になります。
例題 5:やや複雑なケース
共役複素数 を掛けます。
分子の展開で を使う箇所は符号ミスが起きやすいポイントです。 と丁寧に処理しましょう。
有理化との比較
平方根の有理化と複素数の実数化は、本質的に同じテクニックです。
に を掛ける。 で根号が消える。
に を掛ける。 で虚数が消える。
どちらも「和と差の積」によって厄介な項を消すという発想に基づいています。平方根では で根号が消え、複素数では で虚数が消えるという違いはありますが、式の構造は同じです。
よくある計算ミス
分母の実数化では、いくつかの箇所でミスが起きやすくなります。
分子を展開したとき、 が出てきたら必ず に置き換える。ここを忘れると虚部の計算が狂う。
分母が のとき、掛けるべきは 。分母の虚部の符号を反転させるのであって、常に にするわけではない。
の展開は 4 項出る。特に が実部に加わることを見落としやすい。
練習問題
を実数化すると?
を実数化すると?
なので、 です。
を実数化すると?
です。
の値は?
です。 を忘れないようにしましょう。
を実数化すると?
分子は 、分母は です。
分母の実数化は、複素数の計算で避けて通れない基本操作。「共役複素数を掛けて分母を実数にする」という一手順さえ覚えておけば、あとは丁寧に展開して を処理するだけです。
(1+i)(1−i)=2 なので、21⋅(1−i)=21−i です。