絶対値を含む一次不等式
絶対値つきの不等式は、一見すると難しそうに見えますが、絶対値の意味を正しく理解すれば機械的に解くことができます。ここでは場合分けによる方法と、数直線を使った直感的な方法の両方を押さえていきましょう。
絶対値の復習
絶対値 は「数直線上で原点からの距離」を表します。定義は次のとおりです。
たとえば 、 となります。どちらも「原点からどれだけ離れているか」を示しているだけなので、結果は必ず 0 以上になります。
原点からの距離が より小さい、つまり原点の近くにいる
原点からの距離が より大きい、つまり原点から遠くにいる
この直感が、絶対値を含む不等式を解くうえでの土台になります。
基本パターン 1: 型
のとき、 は「原点からの距離が 未満」という意味ですから、 は と の間にあります。
これは場合分けでも確認できます。 のとき なので 、 のとき なので すなわち です。両方を合わせると が得られます。
を解きなさい。
に基本パターンを適用すると となります。各辺に 3 を足して が答えです。
ポイントは、 を「数直線上で点 3 からの距離」と読み替えることです。距離が 5 未満なので、3 を中心に左右 5 の範囲、つまり から の間ということになります。
基本パターン 2: 型
のとき、 は「原点からの距離が より大きい」という意味です。原点から遠い側、つまり両端に解が広がります。
「または」でつながる 2 つの範囲に分かれるのが、 型との大きな違いです。
を解きなさい。
基本パターンを適用すると または になります。それぞれ解くと または が答えです。
場合分けで解く方法
基本パターンに当てはまらない形や、中身が複雑な場合は、絶対値の定義に戻って場合分けをします。手順は次のとおりです。
絶対値の中身が 0 以上か負かで場合分けする
各場合で絶対値を外して不等式を解く
場合分けの条件と解の共通部分を求める
すべての場合の解を合わせる(和集合)
具体例で見てみましょう。

を解いてください。
この不等式は右辺に が含まれるため、基本パターンをそのまま使うことができません。場合分けで解きます。
場合 1: すなわち のとき
なので、不等式は となります。整理すると 、つまり です。ところが、この場合は という条件がありますから、 と を同時に満たす は存在しません。
場合 2: すなわち のとき
なので、不等式は となります。整理すると 、つまり です。 と の共通部分は です。
場合 1 と場合 2 の結果を合わせると、答えは になります。
の解として正しいものはどれですか?
- または
等号つきの場合
や のように等号がつく場合も、考え方はまったく同じです。
(端を含む)
または (端を含む)
等号の有無で解の構造が変わるわけではなく、境界の点を含むかどうかだけの違いです。
の値が 0 や負の場合
基本パターンは を前提としていました。 の場合は少し注意が必要です。
で のとき、絶対値は常に 0 以上なので、 を満たす は存在しません。つまり解なしです。
逆に で のとき、絶対値は常に 0 以上で は負ですから、すべての実数が不等式を満たします。
の解はどれですか?
- 解なし
- すべての実数
絶対値は常に 0 以上なので、 より小さくなることはありません。したがって解は存在しません。
まとめ
絶対値を含む一次不等式を解くには、まず基本パターンに当てはまるかを確認するのが効率的です。 なら挟み込み、 なら両端へ分離、という形に変換できれば、あとは普通の一次不等式と同じように処理できます。基本パターンに当てはまらない場合は、絶対値の定義に立ち戻って場合分けをすれば確実に解けます。どちらの方法でも、数直線上で「距離」をイメージすることが理解への近道です。
∣x+2∣<3 に基本パターンを適用すると −3<x+2<3 です。各辺から 2 を引いて −5<x<1 が得られます。