f(x)g(x) を微分するとき、f′(x)g′(x) とはなりません。片方だけを微分した項を 2 つ作り、それを足します[1]。
{f(x)g(x)}′=f′(x)g(x)+f(x)g′(x)
なぜ足し算が 2 つ並ぶのか。長方形の面積で見ると、その理由がそのまま図になります。
x が少し動くと、2 辺がそれぞれ Δf と Δg だけ伸びます。増えた面積は、横長の帯と縦長の帯、そして隅の小さな長方形の 3 つ[1]。
隅の項だけが消える
3 つのうち、隅の ΔfΔg だけは小ささの桁が違います。Δx を半分にすると帯は半分になりますが、隅は 4 分の 1 になる。
割合の数字を見ると、Δx が小さいほど隅の存在感が薄れていきます。Δx で割ってから極限をとると、隅の項だけがきれいに消える。
定義から導く
面積の話を、そのまま式にします。h(x)=f(x)g(x) とおいて差の商を作る。
Δxf(x+Δx)g(x+Δx)−f(x)g(x)
分子に f(x)g(x+Δx) を足して引きます。値は変わらないのに、2 つの差の商が現れる形に組み替えられる[1]。
=Δxf(x+Δx)−f(x)g(x+Δx)+f(x)Δxg(x+Δx)−g(x)
Δx→0 のとき g(x+Δx)→g(x) です。残るのが f′(x)g(x)+f(x)g′(x) で、公式が出ました。
例:x2sinx を微分する
f(x)=x2、g(x)=sinx と見ます。f′(x)=2x、g′(x)=cosx。
y′=2xsinx+x2cosx
共通因数の x でくくると x(2sinx+xcosx) になります。増減を調べるときは、この形のほうが符号を読みやすい。
例:exlogx を微分する
指数関数と対数関数の積です。どちらの微分も形が決まっているので、代入するだけ[2]。
y′=exlogx+ex⋅x1=ex(logx+x1)
ex が両方の項に現れるため、くくり出しが自然に効きます。定義域は x>0 のまま変わりません。
例:係数のある積を微分する
y=5x3sinx のように定数が付いても、扱いは同じです[3]。定数は微分の外へ出せます。
y′=15x2sinx+5x3cosx
5 を先に外へ出し、x3sinx だけを積の公式で処理しても同じ結果。手順の順番は自由です。
3 つ以上の積
積が 3 つ並んでも、考え方は変わりません。1 つだけ微分して残りはそのまま、という項を全部作って足します。
{fgh}′=f′gh+fg′h+fgh′
4 つなら項は 4 つ。n 個の積なら n 項になり、どの項も微分されているのは 1 つだけ。
y=xexsinx の導関数はどれか。
- y′=exsinx+xexcosx
- y′=exsinx+xexsinx+xexcosx
- y′=exsinx+xexsinx
__RESULT__
x、ex、sinx のそれぞれを 1 つずつ微分し、残り 2 つはそのままにして足します。(x)′=1、(ex)′=ex、(sinx)′=cosx を当てはめると 3 項が出そろう。
商の微分法
分数の形は、分子の微分が先に立つ引き算になります。
{g(x)f(x)}′={g(x)}2f′(x)g(x)−f(x)g′(x)
積の公式との違いは 2 つ。符号が引き算になる点と、分母が 2 乗になる点です。
順番を入れ替えると符号が反対になります。分子の微分から書き始める、と決めておくと崩れにくい。
商の公式を積から作る
覚える公式を増やしたくないなら、積の公式から導けます。gf=f⋅g−1 と見るところが出発点。
g−1 の微分は合成関数の公式から −g2g′ です。これを積の公式に入れます。
(f⋅g1)′=f′⋅g1+f⋅(−g2g′)=g2f′g−fg′
積と合成の 2 つを知っていれば、商は自動的に出てくる。独立した 3 つ目の公式ではありません。
例:xsinx を微分する
f(x)=sinx、g(x)=x とおきます。
y′=x2xcosx−sinx
分子を展開したままにせず、そのまま残すほうが扱いやすい。x→0 での様子を調べるときも、この形から出発します。
例:1+x2ex を微分する
分母が 2 次式でも手順は変わりません。分子の微分から書きます。
y′=(1+x2)2ex(1+x2)−ex⋅2x=(1+x2)2ex(1−2x+x2)=(1+x2)2ex(1−x)2
分子が完全平方になりました。(1−x)2≥0 と ex>0 から、この関数は増え続けると分かる。
因数分解できないか確かめる習慣があると、こうした情報を拾えます。展開したままでは符号が見えません。
例:4x2cosx を微分する
分母に係数と 2 乗が入った形です[3]。
y′=16x4−sinx⋅4x2−cosx⋅8x=4x3−xsinx−2cosx
分子と分母から 4x を約分しました。約分を最後に回すと、次数の大きい分数のまま計算を続けることになります。
分子が 1 の形
f(x)=1 とした場合は、よく使うので形で覚えておくと速い。
{g(x)1}′=−{g(x)}2g′(x)
y=cosx1 なら y′=cos2xsinx、y=x2+11 なら y′=−(x2+1)22x です。
積の微分
{fg}′=f′g+fg′ で、符号は足し算。項が 2 つ並ぶだけ
商の微分
(gf)′=g2f′g−fg′ で、符号は引き算。分母が 2 乗になる
積と商が混ざる形
実際の問題では、積と商が組み合わさった関数が出てきます。y=sinxx2ex を例にとります。
分子 x2ex の微分は 2xex+x2ex=xex(2+x) です。これを商の公式へ入れます。
y′=sin2xxex(2+x)sinx−x2excosx
分子から xex をくくり出すと見通しがよくなる。
y′=sin2xxex{(2+x)sinx−xcosx}
段階を分けて処理すれば、見た目の複雑さに関係なく機械的に進みます。
y=logxx の導関数はどれか。
- y′=logx1−(logx)21
- y′=(logx)2logx−1
- y′=xlogx1
__RESULT__
f(x)=x、g(x)=logx とおくと f′(x)=1、g′(x)=x1 です。y′=(logx)21⋅logx−x⋅x1=(logx)2logx−1 となります。
よくある誤り
(fg)′=f′g′ としてしまう形がいちばん多い。面積の図でいえば、帯を 1 本も数えていない状態です。
商の分子で fg′−f′g と順番を逆にすると、符号がまるごと反対になります。
分母を 2 乗し忘れると次数が合いません。{g(x)}2 まで書ききる。
分子が定数のとき商の公式を持ち出すと遠回りです。g−1 と見るほうが速い。
約分を最後まで残すと、増減表で符号を読むときに手間が増えます。
積の公式は面積、商の公式は積と合成の組み合わせ。どちらも成り立ちを一度たどっておくと、記憶があいまいになっても自力で戻せます。
参考文献
$\{fg\}' = f'g + fg'$ の 2 項がどこから来るのかは、辺が $f$ と $g$ の長方形を伸ばしてみると見えます。増えた面積は帯 2 本と隅 1 つで、隅だけが $\Delta x$ の 2 乗の速さで消える。商の公式は $f \cdot g^{-1}$ と見て積と合成から導けるので、覚える式は増えません。$x^2 \sin x$ から $x^2 e^x / \sin x$ まで、段階を分けた計算例を並べました。
x、ex、sinx のそれぞれを 1 つずつ微分し、残り 2 つはそのままにして足します。(x)′=1、(ex)′=ex、(sinx)′=cosx を当てはめると 3 項が出そろう。