部分分数分解を使った積分の基本

有理関数(分数関数)の積分で、分母が因数分解できるなら部分分数分解が定石だ。複雑な分数式をシンプルな分数の和に分解し、それぞれを個別に積分する。分母の因数の形に応じた分解パターンを押さえておけば、機械的に計算を進められる。

部分分数分解の考え方

のような分数は、2 つの単純な分数の和に分解できる。

両辺に を掛けると となる。 を代入すると より を代入すると より が得られる。

右辺はいずれも の形だから、 で積分できる。

部分分数分解の本質は、複雑な分数を基本分数の和に還元することにある。

のように、積分公式が直接使える形の分数のこと。

分母が一次式の積の場合

分母が異なる一次式の積 のとき、分解は次の形になる。

各係数は を代入する「ヘヴィサイドの目隠し法」で素早く求まる。 を求めるには、元の分数で を隠して を代入すればよい。

例として を考えよう。分解すると、

を代入:

を代入:

を代入:

よって積分は

となる。

分母に重複する因数がある場合

のように同じ因数が重複するときは、1 乗から 乗まですべての項を立てる必要がある。

具体例として を計算する。

両辺に を掛けて展開し、係数を比較すると が得られる。

の積分が ではなく になる点に注意が必要だ。一般に )である。

分母に既約二次式がある場合

が実数の範囲で因数分解できない(判別式が負の)場合、分子には一次式 を置く。

の積分は 2 つに分ける。 に、 になる。

一次式の因数

既約二次式の因数

→ 対数と逆正接関数の組み合わせ

真分数への変換

部分分数分解は分子の次数が分母の次数より低い「真分数」に対して行う。分子の次数が分母以上のときは、まず多項式の割り算で商と余りに分ける。

たとえば は、 なので

と変形してから、 を部分分数分解すればよい。

分母が一次式の積

各因数に対して を立てる。ヘヴィサイドの目隠し法で係数が素早く求まる。

分母に重複因数あり

に対して 1 乗から 乗まですべて立てる。 以上の項は対数でなくべき関数で積分される。

分母に既約二次式あり

に対して分子を と置く。積分結果は対数と逆正接関数の組み合わせになる。

部分分数分解は有理関数の積分における万能ツールであり、分母を因数分解さえできれば、あとは定型的な手順で必ず積分が実行できる。この確実性こそが部分分数分解の最大の強みといえる。