(x−1)(x+2)1 をそのまま積分する公式はありません。ところが、この分数は 2 つの分数の差に書き直せます。
(x−1)(x+2)1=31⋅x−11−31⋅x+21
右辺の 2 項はどちらも x−a1 の形で、log∣x−a∣ が原始関数。分けたあとは 1 行で積分できます。
∫(x−1)(x+2)dx=31logx+2x−1+C
分母が因数分解できる分数は、この形に分けてから積分します。部分分数分解と呼ばれる書き直しです。
通分すると戻る
分けた形が正しいかどうかは、通分すれば分かります。
31⋅x−11−31⋅x+21=31⋅(x−1)(x+2)(x+2)−(x−1)=31⋅(x−1)(x+2)3=(x−1)(x+2)1
分子の x が消えて定数の 3 が残り、前の 31 と打ち消し合いました。
分解は通分の逆向きの操作です。ふだん和を 1 つの分数にまとめている手順を、逆にたどっている。
係数を決める
分けた形を先に立て、係数を未知数として求めます。
(x−1)(x+2)1=x−1A+x+2B
両辺に (x−1)(x+2) をかけて分母を払う。
1=A(x+2)+B(x−1)
この等式は x がどんな値でも成り立ちます。だから都合のよい値を入れてよい。
x=1 を入れると B(x−1) が消えて 1=3A、つまり A=31。x=−2 を入れると 1=−3B で B=−31 です。
代入する値は、分母が 0 になる x を選びます。片方の項が消え、係数が 1 つずつ決まる。
係数を比べる道
代入のかわりに、両辺を展開して次数ごとに比べる手もあります。
1=(A+B)x+(2A−B)
左辺に x の項はないので A+B=0、定数項を見て 2A−B=1。この連立を解いても同じ答えになります。
代入のほうが速い。ただし重複した因数があるときは、代入だけでは決まらない係数が残ります。
例 1:因数が 3 つ
∫(x−1)(x+1)(x−2)x+3dx
因数が 3 つなら、項も 3 つ立てます。
(x−1)(x+1)(x−2)x+3=x−1A+x+1B+x−2C
分母を払うと x+3=A(x+1)(x−2)+B(x−1)(x−2)+C(x−1)(x+1)。
x=1 を入れると 4=A×2×(−1) で A=−2。x=−1 で 2=B×(−2)×(−3) から B=31。x=2 で 5=C×1×3 から C=35。
∫(x−1)(x+1)(x−2)x+3dx=−2log∣x−1∣+31log∣x+1∣+35log∣x−2∣+C0
積分定数を C0 と書いたのは、係数の C と重なるのを避けるためです。
重複する因数があるとき
(x−1)2 のように同じ因数が重なっている場合、x−1A だけでは足りません。1 乗と 2 乗の両方を立てます。
(x−1)2(x+1)P(x)=x−1A+(x−1)2B+x+1C
n 乗なら 1 乗から n 乗まで、n 個の項が並びます[1]。
理由は分子の次数にあります。x−1A+x+1C を通分すると分子は 1 次までしか作れず、左辺の分子が 1 次より高いと合わせられない。
例 2:(x−1)2(x+1)2x+1
分母を払います。
2x+1=A(x−1)(x+1)+B(x+1)+C(x−1)2
x=1 を入れると 3=2B で B=23。x=−1 を入れると −1=4C で C=−41。
A は代入では決まりません。x2 の係数を比べます。左辺に x2 の項はなく、右辺は A+C。
A+C=0⇒A=41
x=0 を入れて確かめます。右辺は −A+B+C=−41+23−41=1 で、左辺の 1 と合いました。
(x−a)2 の積分は log にならない
分けたあとの各項を積分します。x−11 は log∣x−1∣ ですが、(x−1)21 は違う形になる。
∫(x−1)2dx=∫(x−1)−2dx=−x−11+C
−1 乗だけが log になり、−2 乗以下はべきの積分のまま。xn1 の積分で n=1 に穴が空いているのと同じ事情です。
例 2 の答えは次のとおり。
∫(x−1)2(x+1)2x+1dx=41logx+1x−1−2(x−1)3+C0
log の項が 2 つと、log でない項が 1 つ。重複因数がある分解では、この混ざり方になります。
分子の次数が高いときは先に割る
部分分数分解は、分子の次数が分母より低い形に対して使います。次数が同じか高いときは、先に多項式の割り算をする。
x2−1x3 なら、x3 を x2−1 で割って商が x、余りが x です。
x2−1x3=x+x2−1x
残った x2−1x の分子は 1 次で、分母の 2 次より低い。ここから分解に入ります。
例 3:x2−1x3
x2−1=(x−1)(x+1) と分けます。
(x−1)(x+1)x=x−1A+x+1B
分母を払うと x=A(x+1)+B(x−1)。x=1 で 1=2A、x=−1 で −1=−2B です。
A=B=21 だから、次の形になります。
∫x2−1x3dx=∫(x+2(x−1)1+2(x+1)1)dx=2x2+21log∣x−1∣+21log∣x+1∣+C0=2x2+21log∣x2−1∣+C0
割らずに分解しようとすると、x−1A+x+1B では分子が 1 次までしか作れず、3 次の分子に届きません。
分けた形を通分して確かめる
係数を求めたら、通分してもとの分数に戻るかを見ます。例 3 なら次のとおり。
2(x−1)1+2(x+1)1=2(x−1)(x+1)(x+1)+(x−1)=x2−1x
戻りました。符号のとり違えや係数の写しまちがいは、この 1 行で見つかります。
代入で使わなかった x の値を入れて、両辺の数を比べる手もあります。例 1 で x=0 を入れると、左辺は (−1)(1)(−2)3=23。
右辺は −2×(−1)+31×1+35×(−21)=2+31−65=23 で合っています。
x(x+3)1 を xA+x+3B と分けたとき、A はどれですか。
__RESULT__
分母を払うと 1=A(x+3)+Bx で、x=0 を入れると 1=3A です。−31 は B のほうで、x=−3 を入れると 1=−3B になります。
(x−2)3(x+1)5 を分けるとき、立てる項はいくつですか。
__RESULT__
(x−2) の 1 乗、2 乗、3 乗で 3 つ、(x+1) で 1 つ、合わせて 4 つです。重なった因数は、1 乗から 3 乗まですべて立てます。
分母を因数分解し、因数の数だけ項を立て、分母が 0 になる値を代入する。決まらない係数が残ったら次数ごとに比べ、最後は通分して戻るかを見ます。
出典
*Integration rationaler Funktionen durch Partialbruchzerlegung*. Institut für Mathematik und Wissenschaftliches Rechnen, Universität Graz.
$\dfrac{1}{(x-1)(x+2)}$ をそのまま積分する公式はありませんが、$\dfrac{1}{3}\cdot\dfrac{1}{x-1} - \dfrac{1}{3}\cdot\dfrac{1}{x+2}$ に割れば $\log$ が 2 つ並ぶだけです。分解は通分の逆向きで、係数は分母を払ってから、分母が $0$ になる $x$ を代入すれば 1 つずつ決まる。$(x-1)^2$ のように因数が重なるときは 1 乗と 2 乗の両方を立て、代入で残った係数は次数ごとに比べます。$\dfrac{1}{(x-1)^2}$ が $\log$ ではなく $-\dfrac{1}{x-1}$ になる理由、分子の次数が高いときに先に割る手、通分して戻して確かめるところまで。
分母を払うと 1=A(x+3)+Bx で、x=0 を入れると 1=3A です。−31 は B のほうで、x=−3 を入れると 1=−3B になります。