はさみうちの原理 - 上下から挟んで極限を求める
極限を直接計算するのが難しい数列や関数に対して、上下から別の式で挟み込むことで極限を確定させる手法があります。これがはさみうちの原理(squeeze theorem)です。
はさみうちの原理の定式化
数列の場合、次のように述べられます。
すべての について が成り立ち、かつ
であるならば、
が成り立ちます。下から押さえる と上から押さえる が同じ極限値 に向かうなら、その間に挟まれた も に向かうしかない、という直観的にも自然な主張です。
関数の極限でも同様に成り立ちます。 のとき かつ ならば です。数列版と関数版で本質的な違いはなく、挟む対象が離散か連続かの差だけです。
数列は の離散的な値、関数は連続変数 に対して成り立つ。
なぜはさみうちが必要なのか
たとえば の極限を考えます。 は が整数のとき規則的なパターンを持たず、 は存在しません。分子の極限が求まらない以上、極限の四則演算の公式をそのまま適用することはできません。
しかし は常に成り立つので、 のとき各辺を で割れば、
が得られます。 かつ なので、はさみうちの原理から、
が確定します。分子が暴れ回っていても、分母の増大が勝って全体が に押しつぶされる構図です。
典型的な例題
はさみうちの原理がどういう場面で威力を発揮するか、いくつかのパターンを見ていきます。
例題 1:
が常に成り立つので、
です。 なので、はさみうちの原理から となります。
この例は と本質的に同じ構造で、分子が有界(ある範囲に収まっている)で分母が に発散するなら、全体は に収束するという典型パターンです。
例題 2:
と を比べます。 の各因子は 以下なので、
ですが、これだけでは上からの評価が甘すぎます。もう少し丁寧に見ると、最初の因子 に注目して、
と変形できます。各因子はすべて 以下なので、
が成り立ちます(最初の因子 だけ取り出し、残りはすべて 以下で評価)。 なので、はさみうちの原理から、
です。 は非常に速く増大する量ですが、 はそれをさらに圧倒的に上回ります。
例題 3:
の極限です。直接的な計算は難しいので、()と置いてみます。両辺を 乗すると、
です。二項定理で展開すると には多くの正の項が含まれますが、第 3 項だけ取り出しても、
が成り立ちます( のとき)。したがって、
両辺を で割ると、
これを について解くと、
で右辺は に近づくので、はさみうちの原理から 、すなわち です。 だったので、
が得られます。
分子が有界で分母が に発散するパターン。、 など。上下を や と で挟む。
式を変形して鋭い不等式を作るパターン。 では因子を分離し、 では二項定理を使って評価する。問題ごとに工夫が異なる。
関数の極限への応用
関数版のはさみうちの原理は、三角関数の極限 の証明にも使われます。 のとき、幾何学的な議論から
が示せます。 で かつ右辺は定数 なので、はさみうちの原理から が従います。この証明の詳細はこのロールの別の記事で扱っていますが、はさみうちの原理がなければ成り立たない議論です。
はさみうちの原理の使い方の要点
はさみうちの原理を適用するには、次の 3 つをそろえる必要があります。
を上下から挟む不等式 を立てる
と の極限をそれぞれ求める
両方の極限が一致することを確認し、 の極限を確定させる
最初のステップが最も難しく、どの不等式を使うかは問題ごとに異なります。三角関数なら や 、階乗なら因子の分離、累乗根なら二項定理、というように定番の道具はありますが、結局は対象の式の構造を見て判断するしかありません。
の値はいくつですか?
- 発散する
n2(−1)n=n21 なので −n21≤n2(−1)n≤n21 が成り立ちます。両端とも 0 に収束するので、はさみうちの原理から極限は 0 です。