ベクトルの内積の定義からベクトルの大きさとなす角を求める

ベクトルの内積は、それ自体が計算の最終目標になることもありますが、むしろ「内積を道具として使って別の量を求める」場面のほうが多く登場します。この記事では、内積の定義を出発点にして、ベクトルの大きさとなす角を求める方法を見ていきましょう。

内積の定義(復習)

ベクトル のなす角を )とするとき、内積 は次のように定義されます。

幾何的な定義

。大きさとなす角で表す。

成分による定義

。各成分の積の和で表す。

この 2 つの定義が等しいという事実こそが、内積の威力の源です。成分から計算した値を幾何的な定義に代入することで、大きさやなす角といった幾何的な情報を引き出せるようになります。

内積から大きさを求める

内積の定義で 自身に置き換えてみましょう。 のなす角は ですから、

成分で書けば なので、

が得られます。ベクトルの大きさは「自分自身との内積の平方根」として求められるわけです。三平方の定理そのものだと気づくかもしれませんが、内積の言葉で表現しておくと後の式変形で非常に使いやすくなります。

たとえば を求めたいとき、成分に戻さなくても として内積の分配法則で展開できます。

という展開公式が得られる。

この展開公式は頻出なので確認しておきましょう。分配法則と交換法則を使うと、

数の展開公式 とまったく同じ構造です。同様に、

も成り立ちます。これらの公式は「大きさの情報と内積を行き来する」ための橋渡しになるもので、このあとの例題でも活躍します。

内積からなす角を求める

内積の幾何的定義 について解くと、

が導かれます。この式を使えば、成分からなす角を求めることができます。

成分から内積 を計算する

大きさ を求める

に代入して を決定する

具体的にやってみます。 のなす角を求めましょう。

よって、

の範囲で を満たすのは です。

垂直条件:内積が のとき

なす角の公式で とすると なので、

逆に、零ベクトルでない 2 つのベクトルの内積が であれば 、すなわち です。

つまり、零ベクトルでない 2 つのベクトルについて、内積が であることと垂直であることは同値です。

)。

たとえば の内積は なので、この 2 つのベクトルは垂直です。なす角の公式をフルに使わなくても、内積の値だけで垂直判定ができるのは非常に便利でしょう。

また、内積の符号からなす角のおおまかな範囲もわかります。

内積の符号なす角の範囲意味
鋭角(同じ方向寄り)
垂直
鈍角(逆方向寄り)

の符号がそのまま内積の符号に反映されると考えれば自然ですね。

例題:大きさと内積から角度を求める

のとき、なす角 を求めましょう。

を満たす角は です。内積が負なので鈍角になるのは、先ほどの符号と角度の関係の通りです。

例題:大きさとなす角から合成ベクトルの大きさを求める

、なす角 のとき、 を求めましょう。まず内積を計算します。

展開公式に代入すると、

よって です。成分がわからなくても、大きさとなす角さえあれば合成ベクトルの大きさが求まります。これが内積の展開公式の威力です。

例題:差のベクトルの大きさ

同じ条件()で も求めてみましょう。

よって です。 の先端から の先端へ向かうベクトルですから、これは 2 点間の距離を求めていることにもなります。

練習問題

のとき、 の値は?

__RESULT__

です。

のとき、 の値は?

__RESULT__

です。内積が負なので、なす角は鈍角です。

のなす角は?

__RESULT__

なので垂直です。

のとき、なす角 は?

__RESULT__

より です。

、なす角 のとき、 の値は?

__RESULT__

なので 。よって です。

のとき、なす角 は?

__RESULT__

より です。

内積は「成分の計算」と「幾何的な意味」を結びつける接点です。成分から内積を計算し、そこから大きさやなす角を引き出すという流れをしっかり身につけておけば、ベクトルの問題で困ることはぐっと減るでしょう。