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ベクトルの和と差は矢印を継いで歩けば図から読める

と は、 と が離れていても、向きと長さが同じなら等しいベクトルです[1]。

ベクトルが持っているのは向きと大きさの 2 つだけ。どこに置いたかは情報に入りません[2]。

だから足し算は、矢印を継いで歩くだけで作れます。 と、途中の が消える。

向きと大きさだけを見る

線分 に向きを付けたものが有向線分です。始点 、終点 という情報まで持っています。

ベクトルは、そこから位置を捨てたもの。向きと大きさが同じ有向線分は、すべて同じ 1 つのベクトルを表します[1,2]。

の大きさを と書き、これは長さなので 以上の実数。向きは大きさに含まれません。

例:等しいベクトルを見つける

平行四辺形 で、 と等しいベクトルを探します。

が答えです。 と は平行で長さが等しく、向きも同じ向き。

は向きが逆なので等しくありません。 になります。

と も等しい組。平行四辺形には、等しいベクトルの組が 2 組あります。

和は矢印を継いで歩く

の終点に の始点を置き、最初の始点から最後の終点へ引いた矢印が です[3]。

三角形の法則と呼ばれます。 と書くと、途中の が消える形になる。

始点をそろえて平行四辺形を作り、その対角線を見る方法もあります。平行四辺形の法則です[3]。

どちらも同じベクトルを指します。継いで歩くほうが 3 つ以上の和に伸ばしやすい。

例:和を成分で計算する

、 とします。成分どうしを足すだけ[1]。

です。図で継いで歩いた結果と一致します。

順序を入れかえても 。平行四辺形の対角線は 1 本なので、和に順序はありません。

差は逆向きを足す

は のことです[3]。 は と長さが同じで向きが逆のベクトル。

図では、 と の始点をそろえて、 の終点から の終点へ矢印を引きます[1]。

向きをとり違えやすいところ。引かれるほうの終点が、矢印の先になります。

という形で覚えると、始点の が消えて から へ、と読めます。

例:差を成分で計算する

、 で です。

で、符号がすべて反対になります。差では順序が結果を変える。

例:位置ベクトルで書き直す

原点 を決めると、点 は で表せます。これを の位置ベクトルといいます。

の位置ベクトルを 、 を とすると 。

「終点の位置ベクトルから始点の位置ベクトルを引く」。図形の問題では、この 1 行を何度も使います。

実数倍は伸び縮み

は、 の長さを 倍したベクトルです[2,3]。

なら向きはそのまま、 なら逆向きになります。 なら零ベクトル 。

大きさは です。 が負でも長さは正なので、絶対値が付きます。

例:実数倍を成分で計算する

なら 、、。

すべての成分に同じ数を掛けます。 なら 、 です。

零ベクトルと逆ベクトル

始点と終点が同じ有向線分が表すものを零ベクトルといい、 と書きます[2,3]。

大きさは で、向きは決まりません。、 が成り立ちます。

を の逆ベクトルといいます。 の関係です[3]。

答えを と書くか と書くかは区別します。ベクトルの計算の答えなら 。

例:式を整理する

を計算します。文字式と同じ手順で展開する。

と を別々にまとめます。掛け算のときと違い、和と実数倍だけなら文字式そのままの規則で進む。

例:閉じた道の和は 0

五角形 で を計算します。

継いで歩くと、 から出て へ戻ります。始点と終点が同じなので答えは 。

途中の点がすべて消えるので、図形がどんな形でも結果は変わりません。回り道の総和は になる。

例:始点をそろえて書き直す

を計算します。順序を入れかえると 。

継ぐ順が合うように並べかえるのがこつです。 なら となります。

位置ベクトルに直す道もあります。。

図で継ぐか、位置ベクトルで計算するか。慣れないうちは後者のほうが確実です。

図で作るか、成分で計算するか

図で作る

向きと長さの関係が見える。証明や作図の問題に向く

成分で計算する

数を足し引きするだけ。座標が与えられた問題に向く

問題文に座標が出ていれば成分、図形の性質を示すなら図。同じ操作を 2 つの言葉で書いているだけです。

、 のとき、 はどれですか。

__RESULT__

終点の位置ベクトルから始点の位置ベクトルを引きます。終点は なので です。 は のほうで、向きが逆になります。

よくある誤り

と を同じものとする。向きが逆なので符号が違います。
差の矢印の向きをとり違える。引かれるほうの終点が先になります。
答えを ではなく と書く。ベクトルの答えは です。
零ベクトルに向きがあると思う。大きさが なので向きは決まりません。
と書く。 が負のときに成り立ちません。 です。
等しいベクトルを「同じ位置にある」と考える。位置は関係しません。
をそのまま継ごうとする。継げるのは前の終点と後ろの始点が同じときです。

向きと大きさだけを見る。位置を捨てたからこそ、矢印を継ぎ替えて式を動かせます。

参考文献

[1] が等しいベクトルの条件と和・差の作図、[2] が等しいベクトルの言いかえと零ベクトル、[3] が三角形の法則と平行四辺形の法則および逆ベクトルと実数倍です。

Euclidean vector - Wikipedia(英語)
Vecteur - Wikipédia(フランス語)
Vektor - Wikipedia(ドイツ語)
$\overrightarrow{AB}$ と $\overrightarrow{CD}$ は、$A$ と $C$ が離れていても向きと長さが同じなら等しいベクトルです。持っている情報は向きと大きさの 2 つだけで、どこに置いたかは入りません。だから和は矢印を継ぐだけで作れて、$\overrightarrow{AB}+\overrightarrow{BC}=\overrightarrow{AC}$ と途中の $B$ が消える。差は始点をそろえ、引かれるほうの終点へ矢印を向けます。$\overrightarrow{OB}-\overrightarrow{OA}=\overrightarrow{AB}$ の形で覚えると、始点が消えて $A$ から $B$ へ、と読めます。実数倍の向きと長さ、零ベクトルと逆ベクトル、一周して戻る道の和が $\vec{0}$ になることまで。