点と直線の距離の公式がなぜあの形になるのかを最短距離から導く
点 と直線 の距離は、直線の式に点を代入し、係数から作った長さで割ったものです。
分子は代入するだけ、分母は法線ベクトルの大きさ。この 2 つが何を表しているかが分かると、公式は覚える対象ではなくなります[1]。
距離とは最短の長さのこと
点と直線の距離は、直線上の点との距離のうち最小のものと決められています。その最小を与えるのが垂線の足です。
が直線の上を動くと の長さが変わり、点線の位置でいちばん短くなります。そこで は直線と直角に交わる。
最小値を微分で求めることもできますが、垂線が最短だという事実を認めれば計算は要りません[1]。
導出:法線ベクトルへの射影
いちばん短い導き方が射影です。直線上に点 を 1 つとります。 が成り立ちます。
法線ベクトルは です。求める距離は、 を の向きに射影した長さになります。

灰色が法線の向き、青が 、橙が求める距離です。橙の長さは、青を法線の向きに落とした影にあたります。
内積を書き下します。 で、これは です。
が直線上にあるので 。代入すると分子が になります[3]。
をどこにとっても同じ式が出ます。途中で の座標が消えるところが、この導出のうまいところ。
例 1:点と直線の距離
点 と直線 の距離を求めます。
分子は代入するだけです。
分母は なので、距離は です。
、、 の組が出てくると分母がきれいになります。問題の作り手はこの組をよく使う。
例 2:原点と直線の距離
原点と直線 の距離は、 を入れるだけです。
定数項の絶対値を法線の長さで割った形になります。 なら 。
ヘッセの標準形
分母で割った式そのものに名前が付いています。法線を長さ に直した形で、ヘッセの標準形と呼ばれます[2]。
この左辺に点の座標を入れた値が、符号付きの距離です。絶対値を外したまま使うと、距離だけでなく点がどちら側にあるかまで分かる。
絶対値を外した を 符号付き距離 と呼びます。値の大きさが距離、符号が側を表します。
法線ベクトルが指すほうにあれば正、反対側なら負になる。
符号が表す側
点を直線の一方から他方へ動かすと、 の符号が入れ替わります。境目はちょうど直線の上。
点が直線をまたぐと値の符号が変わり、色も変わります。値が になるのが直線の上にいるときです。
この性質は、2 点が直線の同じ側にあるかどうかの判定に使えます。代入した値の積が正なら同じ側、負なら反対側[2]。
例 3:2 点が同じ側にあるか
と が直線 の同じ側にあるかを調べます。
それぞれ代入します。
積が で負なので、2 点は直線の反対側にあります。したがって線分 は直線と交わる。
距離を求めずに位置関係が分かる、という点でこの判定は軽い。図形の問題では代入の符号だけ見れば済む場面が多くあります。
平行な 2 直線の距離
平行な 2 本の距離は、片方の上の点をとって公式に入れれば出ます。係数をそろえておくのが前提です[1]。
例 4:平行線の距離
と の距離を求めます。
係数はそろっているので、定数項の差をとります。
、、 の組がここでも働いています。 を暗算できると速い。
三角形の面積を出す
底辺の長さと高さがあれば面積が出ます。高さがまさに点と直線の距離です。
3 点 、、 の三角形なら、 を通る直線を作り、 からの距離を高さとします。
2 点を通る直線の式を作る
残る 1 点からの距離を求める
底辺の長さと掛けて 2 で割る
例 5:面積を距離で求める
、、 の三角形の面積を求めます。
の傾きは です。直線は から 。
からの距離を出します。
の長さは です。
根号が打ち消し合って整数になりました。面積の問題で が残るときは、どこかで計算を誤っていることが多い。
円と直線が接する条件
中心から直線までの距離が半径に等しいとき、直線は円に接します。判別式を使わずに済む場面が多い。
例 6:接する直線を求める
中心 、半径 の円に接し、傾きが の直線を求めます。
直線を 、つまり と置きます。
または です。答えは と の 2 本になります。
傾きが決まっていれば接線は 2 本引けます。片方だけ書いて終わらせないよう、絶対値を外すときに を両方たどる。
角の二等分線
2 直線から等距離にある点の集まりが角の二等分線です。符号付き距離が等しい、または符号を変えて等しいという条件になります。
の 2 通りから、互いに直交する 2 本の二等分線が出ます。交わる 2 直線は 4 つの角を作るので、二等分線も 2 本になる。
例 7:角の二等分線を求める
と の作る角の二等分線を求めます。
分母はそれぞれ と です。
正の符号をとると から 、整理して 、つまり です。
負の符号をとると から 、つまり 。
2 本の傾きは と で、積が 。直交していることが確かめられました。
空間では外積を使う
点と直線の距離を空間で考えるときは、直線の方向ベクトル を使います[3]。
外積の大きさが平行四辺形の面積を表し、それを底辺 で割ると高さが出る、という仕組みです。
点と平面の距離なら、平面の式 に対して平面版の公式がそのまま働きます。分母に の係数が加わるだけ。
例 8:点と平面の距離
点 と平面 の距離を求めます。
分母が になる組は空間でもよく現れます。平面の場合も、代入して法線の長さで割るという手順は変わりません。
直線 から距離が である点は、どの直線の上に並びますか。
- の 2 本
- と の 2 本
- の 2 本
- 円
距離が一定の点の集まりは、もとの直線に平行な 2 本です。片側だけ答えると半分落とします。
よくある誤り
分子は代入、分母は法線の長さ。この 2 語だけ覚えていれば、公式は毎回その場で書けます。











分母は 1+4=5 です。∣x−2y+3∣=5⋅5=5 となるので、x−2y+3=5 と x−2y+3=−5 の 2 本。整理すると x−2y−2=0 と x−2y+8=0 になります。