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2 点間の距離の求め方、平面と空間で同じ形になる理由

2 点の距離は、横のずれと縦のずれを直角三角形の 2 辺と見て、三平方の定理を当てただけのものです。座標が与えられているとき、その 2 辺の長さは引き算で出ます。

空間へ移っても発想は変わりません。三平方を 2 回続けて使うと、 の差が素直に足されます。

三平方の定理を座標に書き直す

を結び、 から水平に、 から垂直に線を伸ばして交点 を作ります。

の長さは の長さは です。角 は直角なので、三平方の定理がそのまま使えます[2]

新しい定理は 1 つも使っていません。座標の引き算で辺の長さが出る、という点だけが座標を入れた効き目です。

差の順番は結果に効かない

は符号が逆になりますが、 乗すれば同じ値です。したがってどちらから引いても距離は変わりません。

絶対値を付けて と書く流儀もあります。 乗するなら結果は同じなので、書き方の好みの問題。

距離が を満たすことは、この 符号の消え方 から出ています。数学ではこの性質を対称性と呼びます。

どちらを始点にしても同じ値になる、という距離の基本的な決まりの 1 つ。

例 1:平面の 2 点間の距離

の距離を求めます。

差は です。

答えは です。 という組は三平方の定理でおなじみの形で、計算が合っている手がかりになります。

例 2:原点からの距離

と原点の距離を求めます。片方が原点なら引き算が消えて、座標をそのまま 乗するだけ。

です。原点からの距離は、そのままベクトルの大きさにもあたります[4]

空間では三平方を 2 回使う

座標が加わると、直角三角形を 2 段に重ねます。まず底面で水平方向の距離を出し、次にそれと高さで三角形を作る[2]

青が底面での距離、橙が高さ方向のずれです。この 2 本が直角に交わっているので、黒い対角線に三平方が使えます。

途中に現れた根号が 乗で消えるところが要点です。だから空間の公式は、平面の式に の項を足しただけの形になります。

例 3:空間の 2 点間の距離

の距離を求めます。

差は です。

になりました。 は空間版のきれいな組で、 から が出て、 から が出ています。

次元が増えても形は同じ

個の座標を持つ点でも、差の 乗を全部足して根号をかぶせるだけです[4]

高校で扱うのは ですが、統計や機械学習では何百次元の点の距離をこの式で測ります。式の形が変わらないことが、そのまま応用の広さになっている。

平面
空間
次元
原点から

距離の 2 乗のまま比べる

長さそのものが要らない場面では、根号を外さずに 乗のまま扱うほうが速い。 乗は正の数の大小を変えないので、比べるだけなら根号は不要です[1]

計算が楽になるだけでなく、無理数の近似で誤差を持ち込まずに済みます。「どちらが近いか」を問う問題では、まず 乗のまま書き下す。

例 4:どちらが近いかを 2 乗で決める

から見て、 のどちらが近いかを調べます。

なので のほうが近い。 を電卓で出す必要はありません。

例 5:二等辺三角形かどうかを調べる

が二等辺三角形かどうかを見ます。

3 辺の 乗を出します。

なので、 を頂点とする二等辺三角形です。辺の長さを求めずに 乗の一致だけ見れば済みます。

例 6:直角三角形かどうかを調べる

を調べます。

なので三平方の定理の逆が使えて、 が直角になります。 でもあるので、直角二等辺三角形。

乗のまま扱うと、和が一致するかどうかを整数の足し算で確かめられます。根号に直してから比べる必要はありません。

2 点から等距離にある点

を満たす点 は、線分 の垂直二等分線の上に並びます。距離の式に条件を書き下すと、この事実が計算から出てくる。

点線が垂直二等分線です。 がその線をまたぐ瞬間だけ 2 本の長さがそろい、色が変わります。

式で確かめるには と書きます。両辺を展開すると が打ち消し合い、 次式だけが残る。だから答えが直線になります。

例 7: 軸上で等距離の点

から等距離にある 軸上の点を求めます。求める点を とします。

左辺は 、右辺は です。 が消えて となり、

答えは です。展開したときに 次の項が消えるかどうかが、計算が正しい向きに進んでいる合図になります。

例 8:空間で等距離の点

から等距離にある 軸上の点を求めます。点を と置きます。

が消えて となり、 から です。

点は になります。空間でも 乗の項が消える仕組みは同じで、残るのは 次式です。

距離が満たす 3 つの決まり

座標がなくても、距離と呼べるものは次の 3 つを満たします[3]

になるのは 2 点が一致するときだけです。
が成り立ちます。
が成り立ちます。

3 つ目が三角不等式です。座標の公式はこの 3 つをすべて満たすので、正式に距離と呼べます[2]

三角不等式

寄り道をすれば長くなる、という当たり前のことを式にしたのが三角不等式です。等号が成り立つのは、 が線分 の上にあるときだけ。

黒い直線が最短で、青と橙をつないだ道はそれより長い。 を黒い線の上まで下ろすと、青と橙の和がちょうど黒に等しくなります。

例 9:三角不等式で最短経路を作る

があり、 軸上の点 を経由して進みます。 を最小にする を求めます。

軸について折り返した点 をとります。 なので、和は に等しい。

三角不等式から、この和は 以上です。等号は が線分 の上にあるとき。

直線 の式は で、 とすると です。 のとき最小値 になります。

公式が現れたのは意外に遅い

三平方の定理は古代からありました。座標に書き直した形が印刷物に載るのは、ずっとあとの話です[1]

1637
デカルトの座標

平面の点を数の組で表す方法が広まり、図形を式で扱う道が開かれた。

1731
クレローによる公式

2 点間の距離を座標で書いた式が、初めて印刷物に現れた。

定理があっても、座標という舞台がなければ式にはなりません。 年近い間があいているところに、記法が持つ力が見えます。

の距離はどれですか。

__RESULT__

差は です。 になります。 が等しいので実質は平面の問題で、 は差をそのまま足した値。

の差が でも、項を落とさずに書いておくと見落としが減ります。慣れるまでは 3 つとも並べておく。

よくある誤り

差を 乗せずに足す。 はまったく違う値です。
根号を各項にかぶせる。 は距離になりません。
空間で の項を落とす。 座標が等しいときだけ落とせます。
引く順番を で入れ替える。 乗するので結果は同じですが、混乱のもとになります。
乗のまま答えてしまう。比較なら 乗でよく、値を問われたら根号を外します。
根号の中を簡単にしない。 まで直します。
三角不等式の等号を見落とす。 が線分の上にあるときだけ成り立ちます。
と書く。正しくは で、負の値では符号が変わります。

どれも「差を 乗して足し、最後に根号」という順番を守れば起こりません。順番を口に出しながら書くと安定します。

参考文献

Euclidean distance
Euklidischer Abstand
Distance (mathématiques)
欧几里得距离
横のずれと縦のずれを直角三角形の 2 辺と見れば、距離は三平方の定理そのものです。空間では三平方を 2 回続けて使い、途中に現れた根号が 2 乗で消えて $z$ の項が素直に足される。比べるだけなら根号を外さず 2 乗のまま扱えるので、二等辺や直角の判定は整数の足し算で片づきます。距離が満たす 3 つの決まり、三角不等式を使う最短経路、公式が印刷物に載った 1731 年まで。