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自然対数の底 e とは何か…複利の計算に現れる 2.71828

年利 100 パーセントで 1 円を 1 年預けると 2 円になります。半年ごとに利息を付け直すと 円。

刻みを細かくするほど増えますが、いくら細かくしても 円あたりで止まります。

この止まる先が です[3]。自然対数の底と呼ばれる数になります。

刻みを細かくしていく

回に分けて利息を付け直すと、1 年後の元利合計は 円です。

倍しても、増える幅は小数第 3 位あたりまで。 でも とは小数第 4 位で違います[3]

近づき方はかなり遅い。それでも、ある値を超えることはありません。

毎日なら 円、毎秒でも 円。刻みを細かくしても、得られる利息はほとんど変わりません。

3 を超えない理由

を二項定理で開くと、各項が小さくおさえられます。

括弧の中はどれも より小さいので、全体は より小さい。

さらに を使うと、和は でおさえられます。

この道筋でヤコブ・ベルヌーイが 1683 年に、値が のあいだにあることを示しました[1] についての最初の見積もりです。

点の並びが右へ行くほど平らになります。上に引いた破線が で、どこまで進んでも触れません。

階乗の逆数を足す形

を使う道は近づき方が遅い。同じ数を、足し算だけで速く出せます。

分母が階乗なので、項は急に小さくなります[2] 万分の 1 ほど。

まで
まで
まで
まで
まで
まで

まで足すだけで小数第 7 位まで一致します。 で同じ精度を出すには、 を数千万まで上げる必要がある。

オイラーは 1748 年の『無限解析入門』で、この級数と極限が同じ値になることを示し、小数 18 桁まで計算しました[1]

での傾きが になる底

が「自然」と呼ばれるのは、複利の話からではありません。グラフの傾きに理由があります。

での傾きを、 を小さくして で近づけてみます。

を小さくしていくと、 では あたり、 では あたりに落ち着きます。 をまたいでいる。

傾きがちょうど になる底が、 のあいだに 1 つだけある。それが です。

底を大きくするほど接線は立ちます。 のあいだで一度だけ破線と重なり、そこから先は破線より立ったまま。

微分しても変わらない

での傾きが になると、どの点でも傾きが高さと等しくなります。 を微分しても のまま。

一般の底では と書けるので[4]、微分すると という係数が前に出てきます。

底を にとると、この係数が になって消える。式が短くなるのは、そこを選んだ見返りです。

数学Ⅱ で を使う場面は多くありませんが、数学Ⅲ の微分と積分では中心になります。

自然対数

底が の対数を自然対数と呼び、 または と書きます。指数関数 の逆関数です[4]

底の変換公式を通せば、どんな底の対数も自然対数で書けます。

常用対数が桁の計算に向いていたのに対し、自然対数は変化の計算に向く。用途で底を選び分けます。

無理数であり、超越数でもある

は無理数です。分数では書けません。オイラーが 1737 年に、 の連分数展開が無限に続くことから示しました[2]

と規則が続きます。有限で終わらないので、分数にはなりません[2]

さらに強い性質もあります。1873 年にエルミートが、 が超越数であることを証明しました[2]。整数係数のどんな方程式の解にもなりません。

は無理数ですが の解です。 にはそういう方程式が 1 つもない[3]

補足:記号 になるまで

1618 年、ネイピアの対数の英訳につけられた付録に、いまでいう自然対数の表が載っています。書いたのはオートレッドとみられますが、底が だとは気づかれていません[1]

1690 年、ライプニッツはホイヘンスへの手紙でこの数に という記号を当てています[1]。記号が与えられた最初の例です。

という文字を使ったのはオイラーで、1731 年のゴールドバッハ宛の手紙に現れます[1]。呼び名がオイラーに由来するのはこの経緯から[3]

自分の名前の頭文字を選んだという説もありますが、 から順に使って母音の が空いていた、という見方もあります。

について正しいものはどれですか。

  • を大きくすると を超える
  • を大きくしても を超えない
  • が偶数のときだけ に近づく
__RESULT__

二項定理で開くと各項が 以下になり、さらに でおさえられます。和は より小さいままで、値は に近づきます。

の値はどれですか。

__RESULT__

です。 までなら そのものは になります。

刻みを細かくしても止まる場所がある。その場所を選ぶと式の係数が消える。 が特別なのは、この 2 つが同じ数だったからです。

参考文献

The number e. O'Connor J J, Robertson E F. MacTutor History of Mathematics Archive, University of St Andrews.
e. Weisstein E W. MathWorld, Wolfram Research.
Eulersche Zahl. Duden Learnattack, Schülerlexikon Mathematik.
Exponential function. Encyclopedia of Mathematics.
年利 100 パーセントで 1 円を預け、利息を付け直す回数を増やしていくと、$2$ 円、$2.25$ 円、$2.594$ 円と伸びます。ただし $n = 10000$ でも $2.71814$ 円で、$3$ 円には届きません。二項定理で開くと各項が $1/k!$ 以下におさえられるためで、この見積もりを 1683 年にヤコブ・ベルヌーイが与えました。$e$ が「自然」と呼ばれる理由は複利ではなく傾きのほう。$y = a^{x}$ の $(0, 1)$ での傾きが $1$ になる底が $e$ です。階乗の逆数を足す級数、連分数からの無理数の証明、1873 年の超越性、記号 $e$ が選ばれた経緯まで。