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微分ってけっきょく何なの?速さの話から入る高校数学2

車のスピードメーターが 60 を指しているとき、その車が 1 時間で 60 キロ進んだわけではありません。いまこの瞬間の速さが時速 60 キロだ、という意味です。

2 時間で 100 キロ走った車の平均の速さは時速 50 キロ。この 50 と、メーターの 60 は別のものです。前者は区間全体をならした値、後者は 1 点での値。

微分は、この「1 点での値」を計算で出すための道具です[1]。

平均の速さは割り算で出る

物体の位置を時刻 の関数 と書きます。 秒後にどこにいるかを返す関数です。

5 秒後から 7 秒後までの平均の速さは、進んだ距離を掛かった時間で割ります。

これは 5 秒後の速さでも 7 秒後の速さでもありません。2 秒間をならした値です。

小学校から中学校までの理科で速さといえば、この形だけでした。区間の両端さえ分かれば計算できる。

幅を縮めると値が動く

7 秒後のかわりに 5.1 秒後の位置を使うと、区間は 0.1 秒に縮みます。

5 秒後の速さに近い値が出そうです。5.01 秒後ならもっと近く、5.001 秒後ならさらに近い。

幅を と書けば、5 秒後から 秒後までの平均の速さはこうなります。

を限りなく に近づけたときの行き先が、5 秒後の速さです。この行き先を微分係数といいます[2]。

赤い直線が 2 点を結んだ線、薄い直線がその行き先です。 が小さくなるほど 2 本が重なっていきます。

例:位置が で表される運動

とします。2 秒後の速さを出してみます。

2 秒後から 秒後までの平均の速さは、分子を展開すると で約分できます。

を に近づけると は に近づきます。2 秒後の速さは です。

を約分する前に を入れると になります。約分してから近づける、という順番が要ります。

例:3 秒後と 5 秒後

同じ計算を 3 秒後で繰り返します。 なので、速さは 。

5 秒後なら で、速さは です。

2 秒後が 、3 秒後が 、5 秒後が 。どれも時刻の 倍になっています。

時刻平均の速さ瞬間の速さ

時刻ごとの速さを 1 つの関数にまとめると です。これを の導関数といいます。

微分係数と導関数はどう違うか

微分係数は 1 つの時刻に対する 1 つの数、導関数はどの時刻でも答えを返す関数です。

温度計の目盛りと、温度計そのものの違いに近い。片方は値、片方は値を出す仕組み。

微分係数

での値は 。時刻を 1 つ決めたときの数

導関数

という式。どの時刻を入れても、その時刻の速さを返す

導関数が分かれば、微分係数は代入するだけで出ます。だから実際の計算では導関数を先に求めます。

傾きとして読む

速さの話をグラフに移すと、線の傾きになります。

位置のグラフ上で 2 点を結ぶと、その直線の傾きが平均の速さ。2 点を近づけていくと、直線は 1 点で触れる線に落ち着きます[3]。

この 1 点で触れる線を接線といい、その傾きが微分係数です。

灰色の線が上から順に寝ていき、最後は赤い線に重なります。傾きは 、、、、 と下がって で止まる。

例:ボールの落下

地表付近で物を落とすと、 秒間に落ちる距離はおよそ メートルです。

1 秒後の速さは なので、秒速 メートル。

2 秒後は で秒速 メートル。導関数は です。

落下では速さが時刻に比例して増えるので、グラフの傾きが右へ行くほどきつくなる。

傾きが変わり続けるから、区間をならした平均では 1 点の速さが出せない。

速さ以外にも使う

微分が扱うのは速さだけではありません。ある量が別の量につれてどう変わるか、を測る道具です。

正方形の 1 辺を とすると面積は 。辺を少し伸ばしたとき面積がどれだけ増えるかは、面積の導関数 が答えます[4]。

1 辺 の正方形なら 。辺を 伸ばすと面積は約 増えます。

量を関数で書く

2 点のあいだの変化の割合を出す

2 点を近づけた行き先を見る

この 3 段は、速さでも面積でも同じです。だから 1 つの計算を覚えれば、いろいろな量に使い回せます。

縁に付く帯が 2 本なので、増える割合が になります。角の小さな正方形は伸ばす幅の 2 乗なので、幅を縮めると先に消える。

で表される運動の、 秒後の速さはいくつですか。

__RESULT__

導関数が なので です。 は 秒後の位置 、 は 秒後の平均の速さにあたります。

平均をならすのをやめて、幅を へ送る。微分でやっているのはこれだけです。

参考文献

3.1 Defining the Derivative. Calculus Volume 1, OpenStax.
Josef Leydold. *Kapitel 7: Differentialrechnung*. Mathematik für VW, Wirtschaftsuniversität Wien.
Paul Dawkins. *Tangent Lines and Rates of Change*. Paul's Online Notes, Lamar University.
Derivative. Encyclopedia of Mathematics.
スピードメーターの 60 と、2 時間で 100 キロ走った車の平均時速 50 は別の数です。前者は 1 点での値、後者は区間をならした値。位置の関数で 5 秒後から $5 + h$ 秒後までの平均の速さを書き、$h$ を $0$ へ近づけると 1 点での速さが残る。$t^2$ なら 2 秒後が 4、3 秒後が 6、5 秒後が 10 で、まとめた $2t$ が導関数です。落下の $5t^2$、正方形の面積 $x^2$ でも同じ 3 段でたどれる。グラフでは 2 点を結ぶ直線が接線へ寄っていく動き。