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指数 p が変わると何が入るのか?Lp 空間とそのノルム

測度空間 と に対し、可測関数 の ノルムを次で定めます[1]。

これが有限になる可測関数を集めたものが です。 なら可積分関数の全体、 なら二乗可積分関数の全体。

指数 を動かすと、集まりの中身がごっそり入れ替わります。どんな関数が入るのかは、 が大きいところと裾のふるまいで決まる。

a.e. で等しいものを同一視する

このままだとノルムの条件をひとつ満たしません。 が測度 の集合の上でだけ でないとき、 なのに は零関数でない[1]。

そこで a.e. で等しい関数を同じものと見なします[2]。同値類の全体を考えると、 が と同値になる。

の元は関数そのものではなく、関数の同値類です。ふだんは関数のように書くものの、1 点での値を問うことに意味はない。

の元に「 での値」を尋ねても答えは決まりません。同値類として扱っているからです。

1 点は測度 なので、その上で値を書き換えても同じ元のまま。

は本質的上限

のときは積分ではなく上限を使います。ただし測度 の集合を無視した上限、本質的上限をとる[1]。

素朴な上限では困ります。 の上で 、それ以外は という関数は、 ですが本質的上限は 。

a.e. で同一視した以上、ノルムのほうも測度 を見ないものにそろえる必要がある。

ではノルムにならない

でも同じ式を書けますが、三角不等式が成り立ちません[1]。

で 、 をとります。 で計算すると、和のノルムが各項のノルムの和を超える。

劣加法性が崩れているので、これはノルムではなく擬ノルムと呼ばれます。 という条件は飾りではない。

単位球の形を見ると事情が分かります。 では凸ですが、 では星形にへこむ。凸でない図形の上では三角不等式が立ちません。

測度が有限なら大きい ほど小さい空間

のとき、指数の大きい空間が小さい空間に含まれます[1]。

理由は が大きいところと小さいところの寄与を分ければ見えます。 の部分では で、全体の測度が有限なので寄与も有限。

の部分では なので、 乗の積分が有限なら 乗も有限です。

測度が無限だと崩れる。 の上で は に属しますが、 には属しません。

数列空間ではもっと事情が変わって、包含が逆向きになります[1]。 が で成り立つ。裾が細くなる条件のほうが強いからです。

例: はどこに入るか

の上で ()を考えます。 乗して積分すると条件がはっきりする。

なら の範囲で に属します。 ではぎりぎり外れる。

を大きくすると入れる の範囲が狭まり、 では にすら入りません。原点での立ち上がりが急なほど、大きい に耐えられない。

裾のほうでも同じことが起きます。 で を見ると、条件が に変わって 。

原点の立ち上がりと無限遠の裾で、条件の向きが逆になります。 全体では両方を満たす必要があり、 が狭くなる。

を で のとき に属する
を で のとき に属する
を でどの でも属さない

何が稠密に入っているか

の中で扱いやすい関数がどれだけ多いか、という問いも大事です[1]。

なら、単関数の全体が で稠密になります。可測関数を単関数で近似する定理に、優収束定理を重ねれば出る。

上のルベーグ測度なら、コンパクトな台を持つ連続関数の全体も稠密です[3]。滑らかな関数で近似できるので、微分の議論につなげられる。

では成り立ちません。連続関数の一様極限は連続なので、不連続な有界関数に近づけないからです。

単関数も、台がコンパクトな連続関数も稠密。近似して議論を進められる

一様収束の世界なので連続関数は稠密でない。可分でもない

quiz で確かめる

のとき、 と の関係はどれですか。

  • どちらの包含も成り立たない
__RESULT__

の部分では測度が有限なことから寄与が押さえられ、 の部分では が効きます。指数の大きい空間が小さいほうに含まれる、という向きです。

よくある誤り

の元を関数そのものだと思う。a.e. で等しいものを同一視した同値類です。
で素朴な上限を使う。測度 を無視する本質的上限をとります。
でもノルムだと思う。三角不等式が崩れて擬ノルムにしかなりません。
測度が無限でも包含関係があると思う。 上では成り立ちません。
数列空間で包含の向きをとり違える。 は の向きです。
で連続関数が稠密だと思う。一様収束の極限が連続になるので近づけません。
から が恒等的に だと結論する。言えるのは a.e. で ということだけです。

参考文献

Lp space. Wikipedia(英語).
Lp-Raum. Wikipedia(ドイツ語).
J. K. Hunter. *Measure Theory*. University of California at Davis, 2011.
$|f|^p$ の積分の $p$ 乗根が $L^p$ ノルム。これが有限になる可測関数を集め、a.e. で等しいものを同一視した同値類の空間です。$p = \infty$ で本質的上限に切り替わる理由、$p < 1$ では単位球がへこんで三角不等式が崩れること、測度が有限なら $L^q \subseteq L^p$ なのに数列空間では向きが逆になることを見ます。$x^{-\alpha}$ がどの $p$ で入るか、単関数と連続関数がどこまで稠密かまで。