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ルベーグ可測集合はどこまで開集合に近いか|測度論

がルベーグ可測であるとは、どんな に対しても外測度が で 2 つにきれいに割れることをいいます[1]。

外測度は劣加法的なので は無条件で成り立ちます。要求しているのは のほう。 が「刃物として使える」かどうかを問う条件です。

テスト集合をすべて調べる理由

条件に が入っている点が目につきます。 だけでは足りないのか、という疑問が出るところ。

足りません。外測度は加法的でないので、ある 1 つの で等号が立っても、別の では崩れることがある。全部の で崩れないことを要求して、はじめて σ 加法族が組み上がります[7]。

条件の形が対称なので、 が可測なら補集合も可測です。ここから族の性質が芋づる式に出てきます。

族としての姿

ルベーグ可測集合の全体 は σ 加法族になり、その上で外測度は可算加法的な測度 になります[2]。

ボレル集合はすべて に属します。しかも は完備で、測度 の集合の部分集合をすべて含む。

包含はどちらも真です。左が真であることは濃度で出ます。カントール集合は測度 で濃度が連続体なので、その部分集合は 個あって全部が可測[2]。ボレル集合は 個しかありません。

ボレル集合族

位相だけで決まる。どの測度を載せるかに依存しないが、完備ではない。濃度は

ルベーグ可測集合族

ルベーグ測度で完備化したもの。測度 の集合の部分集合をすべて含む。濃度は

開集合で外から挟めるかどうか

カラテオドリ条件は確かめにくい。もっと手を動かしやすい同値条件があります[7]。

任意の に対し、開集合 で となるものがとれる。
任意の に対し、閉集合 で となるものがとれる。
集合 で となるものがとれる。
集合 で となるものがとれる。

どれをとっても定義として通用します。カラテオドリ条件より、こちらを可測性の定義に採る教科書もある[7]。

言い換えると、可測集合は開集合といくらでも近い。リトルウッドが第一原理として「可測集合はほとんど開集合の有限和である」と書いた事情がこれ。

例:稠密なのに測度がいくらでも小さい開集合

有理数を数え上げて とし、各点を長さ の区間で覆う。

は有理数を全部含むので で稠密です。それでも測度は 以下。

補集合 は閉集合で、内点をひとつも持ちません。それでも測度は無限大。稠密さと測度の大小は、まったく独立に動きます。

例:疎なのに正の測度を持つ集合

逆向きの極端も作れます。カントール集合と同じように真ん中をくり抜くのですが、抜く幅を早く小さくする[4]。

段目では、残っている 本の区間それぞれから、幅 の真ん中を抜きます。抜いた総量は次のとおり。

残った集合はスミス・ヴォルテラ・カントール集合と呼ばれ、測度は です[4]。閉集合で、区間をひとつも含まない。

抜く幅を にした通常のカントール集合は測度 になります。同じ手順でも、抜き方の速さだけで測度が変わる。

カントール集合

真ん中の を抜き続ける。非可算だが測度は 。可算性と零集合は別の概念だと分かる

スミス・ヴォルテラ・カントール集合

抜く幅を に縮める。閉集合で内点を持たないのに測度は 。疎であることと零集合も別の概念

零集合の見分け方

測度 の集合はいくらでも小さい開集合で覆えます。可算集合はこの型の代表例。

逆は成り立ちません。カントール集合は非可算なのに測度 です[1]。

零集合の可算合併も零集合になります。 ずつ配れば、合計がまた で押さえられるから。

正の測度を持つと、差集合が区間を含む

測度が正であることは、思ったより強い条件です。シュタインハウスの定理が分かりやすい形でそれを示します[5]。

がルベーグ可測で なら、差集合 は原点のまわりの開区間を含みます。

証明は指示関数のたたみこみを使います。 は連続で なので、 の近くで 。 は と同値です。

系として、 の真部分群でルベーグ可測なものは測度 に限られる[5]。もし正の測度なら差集合が区間を含み、群なので全体に広がってしまいます。

測度が正の集合はどれだけ穴だらけに見えても、差をとれば区間が現れる。

スミス・ヴォルテラ・カントール集合のように内点を持たない集合でも、差集合は区間を含む。

ほとんどの点で密度が 1 になる

もうひとつ、正の測度が持つ強さを見ます。点 における の密度を次で定めます[6]。

ルベーグの密度定理は、 の点のほとんどすべてで 、補集合の点のほとんどすべてで になると述べます[6]。

密度が でも でもない点は、集めても測度 にしかならない。可測集合は、測度 の例外を除けば「詰まっている場所」と「空いている場所」にきれいに分かれます。

が正の集合には密度 の点があるので、そのまわりを拡大すればほとんど区間に見える。シュタインハウスの定理を密度の側から言い直したものが、この主張です。

平行移動と拡大で測度がどう動くか

ルベーグ測度は平行移動で変わりません[3]。回転や鏡映でも変わらないので、等長変換すべてで不変。

線形写像 については、行列式の絶対値だけ倍になります[1]。

平行移動不変な 上のボレル測度で、単位立方体に を与えるものはルベーグ測度に限られる[3]。「体積」という言葉に期待するものを全部書き下すと、答えが 1 つに決まってしまう。

測度が正のルベーグ可測集合について、正しいものはどれですか。

  • 必ず区間を含む
  • 差集合が原点のまわりの区間を含む
  • 必ず内点を持つ
__RESULT__

スミス・ヴォルテラ・カントール集合は測度 なのに区間を含まず、内点も持ちません。それでもシュタインハウスの定理から、差集合には を含む区間が現れます。

よくある誤り

非可算なら測度が正だと思う。カントール集合は非可算で測度 です。
測度 なら可算だと思う。逆向きも成り立ちません。
稠密なら測度が大きいと思う。稠密な開集合を測度 で作れます。
内点を持たないなら測度 だと思う。抜く幅を縮めれば測度 の疎な閉集合ができます。
カラテオドリ条件を だけで確かめる。外測度は加法的でないので足りません。
ルベーグ可測ならボレル集合だと思う。濃度が と で違います。
すべての部分集合が可測だと思う。平行移動不変性と可算加法性を両立できない集合が存在します。

参考文献

Lebesgue measure. Wikipedia(英語).
Lebesgue-Maß. Wikipedia(ドイツ語).
Mesure de Lebesgue. Wikipédia(フランス語).
Smith–Volterra–Cantor set. Wikipedia(英語).
Steinhaus theorem. Wikipedia(英語).
Lebesgue's density theorem. Wikipedia(英語).
J. K. Hunter. *Measure Theory*. University of California at Davis, 2011.
どんなテスト集合を当てても外測度がぴったり 2 つに割れる。カラテオドリ条件が要求しているのはそれだけです。これを開集合で外から挟めるという同値条件に言い換えたうえで、稠密なのに測度が $\varepsilon$ の開集合と、疎なのに測度 $1/2$ の閉集合を並べます。差集合が必ず区間を含むというシュタインハウスの定理、ほとんどの点で密度が $1$ になること、平行移動や線形写像での変わり方まで。