命題と真理値の基本を理解する|記号論理学

記号論理学を学ぶ第一歩は、命題と真理値を理解することです。命題とは真か偽かが定まる文のことであり、真理値とはその真偽を表す値のことです。

命題とは何か

命題(proposition)とは、真か偽かのどちらか一方が確定する文のことです。日常で使う文のすべてが命題になるわけではありません。

「東京は日本の首都である」は命題です。この文は真であり、その真偽が明確に定まっています。「2 + 3 = 5」も命題であり、これは真です。「地球は平らである」も命題ですが、これは偽です。

一方、「今日は暑いね」のような感想や、「窓を開けてください」のような命令文は、真偽を問えないため命題ではありません。「x は 5 より大きい」のように変数を含む文も、x の値が定まらない限り命題とは言えません。

命題の例

「月は地球の衛星である」(真)、「3 は偶数である」(偽)、「すべての鳥は飛べる」(偽)

命題でないものの例

「おはよう」(挨拶)、「この本を読みなさい」(命令)、「なぜ空は青いのか」(疑問文)

真理値とは何か

真理値(truth value)とは、命題の真偽を表す値です。記号論理学では、通常「真」と「偽」の2つの真理値だけを考えます。

真を表す記号としては T(True)、1、⊤(トップ)などが使われます。偽を表す記号としては F(False)、0、⊥(ボトム)などが使われます。この講座では主に T と F を使います。

真(T, True)

命題の内容が事実と一致している状態を表します。

偽(F, False)

命題の内容が事実と一致していない状態を表します。

命題変数という考え方

記号論理学では、具体的な命題の内容よりも、推論の形式に注目します。そこで、命題を文字で表す「命題変数」を導入します。

命題変数は、任意の命題を代入できる変数です。通常、小文字の p, q, r などで表します。たとえば p に「雨が降っている」を、q に「道が濡れている」を代入するといった使い方をします。

命題変数を使うことで、「もし p ならば q」のように、具体的な内容に依存しない推論の形式を記述できます。これが記号論理学の核心的なアイデアです。

単純命題と複合命題

命題には、それ以上分解できない単純命題と、複数の命題を組み合わせた複合命題があります。

単純命題は、論理的にこれ以上分解できない最小単位の命題です。「太陽は恒星である」「3 は素数である」などがこれにあたります。

複合命題は、単純命題を「かつ」「または」「ならば」「でない」などの論理結合子で結びつけたものです。「雨が降っていて、かつ風が吹いている」は、2つの単純命題を「かつ」で結んだ複合命題です。

単純命題 p, q

論理結合子で結合

複合命題

真理値の重要性

記号論理学では、命題の具体的な内容ではなく、真理値だけに注目します。なぜなら、推論の妥当性は命題の内容ではなく、真理値の関係によって決まるからです。

「すべての哺乳類は動物である。すべての犬は哺乳類である。ゆえにすべての犬は動物である。」という推論が正しいのは、前提の内容が特定のものだからではありません。この推論形式が、前提が真であれば結論も必ず真になる構造を持っているからです。

記号論理学は、この「形式」を厳密に分析する学問なのです。次回は、命題を結合する否定と連言について学びます。