推論規則とは何か:正しい推論の形式的ルール - 記号論理学

これまでは真理値表を使って推論の妥当性を判定してきました。しかし、変数が増えると真理値表は急速に大きくなり、実用的ではなくなります。そこで登場するのが推論規則です。推論規則を使えば、真理値表を作らずに正しい推論を組み立てられます。

推論規則とは何か

推論規則(inference rule)とは、一定のパターンに従って前提から結論を導くことを許可するルールです。個々の推論規則は、その形式に従う推論が常に妥当であることを保証します。

推論規則は通常、横線の上に前提、下に結論を書く形式で表されます。

$ 横線の上にある前提がすべて成り立つとき、横線の下にある結論を導いてよいという意味です。 ## なぜ推論規則が必要か 真理値表は万能ですが、変数が n 個あると 2^n$ 行の表が必要です。変数が 10 個なら 1024 行、20 個なら約 100 万行になります。

真理値表の限界

変数が増えると指数的に行数が増加する。実用的には 5〜6 変数が限界。

推論規則の利点

論理式の構造に注目して段階的に推論する。変数の数に依存しない。

推論規則を使った証明は、人間の自然な思考過程に近い形で進められます。また、証明の各ステップが明示されるため、どこで何を使ったかが明確になります。

基本的な推論規則の例

いくつかの基本的な推論規則を見てみましょう。

連言導入(conjunction introduction)は、2つの命題から連言を導きます。p が成り立ち、q も成り立つなら、p ∧ q が成り立つという当然のルールです。

連言除去(conjunction elimination)は、連言から各要素を導きます。p ∧ q が成り立つなら、p が成り立ち、また q も成り立ちます。

連言導入 ∧I

p と q から p ∧ q を導く。2つの事実を1つにまとめる。

連言除去 ∧E

p ∧ q から p を導く(または q を導く)。まとまった事実から一部を取り出す。

推論規則と妥当性

推論規則は、妥当な推論のパターンを形式化したものです。各規則は、真理値表で確認すれば常に妥当であることがわかります。

たとえば連言導入の妥当性を確認すると、p が T かつ q が T のとき、p ∧ q は確かに T になります。推論規則は、このような確認済みのパターンを「使ってよいルール」として公認したものです。

複数の推論規則を組み合わせることで、より複雑な推論を構築できます。各ステップが妥当なら、全体の推論も妥当であることが保証されます。

規則の体系

論理学では、必要最小限の推論規則のセットを定めて、それだけで命題論理のすべての妥当な推論を導けるようにします。このような規則の集まりを証明体系(proof system)と呼びます。

代表的な証明体系として、ヒルベルト流の公理系と自然演繹があります。ヒルベルト流は少数の公理と1〜2個の規則を使い、自然演繹は多くの規則を使いますが公理をほとんど使いません。

推論規則を定める

規則を組み合わせる

複雑な推論を構築

証明とは何か

証明とは、推論規則を有限回適用して前提から結論を導く列のことです。各行は、公理であるか、前の行に推論規則を適用した結果であるか、仮定であるかのいずれかです。

証明が存在することを Γ ⊢ φ と書き、「Γ から φ が証明可能」と読みます。これは意味論的な ⊨(論理的帰結)とは異なる、構文論的な概念です。

次回は、最も重要な推論規則であるモーダスポネンスとモーダストレンスについて詳しく学びます。