構造と解釈:論理式に意味を与える - 記号論理学

モデル理論は、論理式とそれを解釈する数学的構造(モデル)の関係を研究する分野です。構造と解釈という概念を通じて、論理式に意味を与える方法を厳密に定義します。

構造とは何か

構造(structure)は、述語論理の言語に意味を与える数学的対象です。L-構造とも呼ばれ、言語 L の記号を具体的な対象や関係に対応させます。

構造 M は以下の要素からなります。

台集合(領域)

|M| または M と書く。議論の対象となる集合。空でない集合。

解釈関数

言語の各記号に、台集合上の対象・関数・関係を割り当てる。

たとえば自然数の構造では、台集合は ℕ = {0, 1, 2, …}、定項 0 は数 0 に、関数 S は後者関数 n ↦ n+1 に、述語 < は通常の大小関係に解釈されます。

解釈の具体例

言語 L が定項 c、1項関数 f、2項述語 P を持つとしましょう。

構造 M₁:台集合は整数全体 ℤ、c は 0、f は x ↦ x+1、P は「x < y」。

構造 M₂:台集合は実数全体 ℝ、c は 0、f は x ↦ 2x、P は「x ≤ y」。

同じ言語でも、異なる構造で異なる解釈が可能です。

同じ言語、異なる構造

記号の意味が変わる。論理式の真偽も変わりうる。

言語と構造の分離

これが述語論理の柔軟性の源。

変項の割り当て

自由変項を含む式の真偽を定めるには、変項への割り当て(assignment)が必要です。

割り当て σ は、各変項に台集合の要素を対応させる関数です。σ(x) = a は「変項 x に対象 a を割り当てる」ことを意味します。

σ[x ↦ a] は、σ と同じだが x だけは a に割り当てる、という修正された割り当てを表します。

論理式の真偽の定義

構造 M と割り当て σ のもとで、論理式 φ が真であることを M, σ ⊨ φ と書きます。

原子式 P(t₁, …, tₙ) は、t₁, …, tₙ の表す対象が P の解釈である関係を満たすとき真です。

論理結合子は命題論理と同様に定義します。¬φ は φ が偽のとき真、φ ∧ ψ は両方真のとき真、などです。

全称量化子の解釈

M, σ ⊨ ∀x φ ⇔ すべての a ∈ |M| について M, σ[x↦a] ⊨ φ

存在量化子の解釈

M, σ ⊨ ∃x φ ⇔ ある a ∈ |M| について M, σ[x↦a] ⊨ φ

文の真偽

閉じた式(文)は自由変項を含まないので、割り当てに依存しません。M ⊨ φ と書いて「M で φ が真」を表します。

M ⊨ φ が成り立つとき、M は φ のモデルである、あるいは M は φ を充足する、といいます。

構造の例:群

群論の言語 L = {e, ·, ⁻¹} を考えます。e は単位元、· は積、⁻¹ は逆元です。

整数の加法群:台集合 ℤ、e は 0、· は +、⁻¹ は x ↦ -x。

巡回群 ℤ/nℤ:台集合 {0, 1, …, n-1}、e は 0、· は mod n での加法。

言語を定める

台集合を選ぶ

記号に解釈を与える

構造が定まる

これらの構造はすべて群の公理を満たすので、群論の定理はどちらの構造でも真になります。

次回は、充足可能性とモデルの存在について詳しく学びます。