薬物を 2 回注射された死刑囚が死に至らず、テネシー州知事が年内の執行を取りやめ
2026年10月2日 13:30
米テネシー州で 9 月 30 日夜、クリスタ・パイク(Christa Pike)死刑囚(50)に薬物注射による死刑の執行が試みられたが、致死薬のペントバルビタールを 2 回注射されても死に至らず、パイク氏は刑務所の外の医療施設へ運ばれた [1][3][5]。共和党のビル・リー知事は年内に予定していた残りの執行を取りやめ、何が起きたのかを確かめるため、第三者による包括的な検証を命じている [1][3]。取りやめになったのは、12 月 3 日に予定されていたゲーリー・ウェイン・サットン死刑囚の執行である [1]。
立ち会った記者によると、ナッシュビルのリバーベンド最重警備刑務所の執行室では午後 7 時 26 分に幕が上がり、パイク氏が最後の言葉を述べてから薬物の注入が始まった [4]。注入の途中、パイク氏は腕が破裂しそうだと訴えている [4]。幕はいったん下りて 3 分後に再び上がり、午後 8 時 5 分すぎにまた下りたあとも、記者が退出を求められた 8 時 53 分まで、いびきのような呼吸が聞こえ続けた [4][5]。
弁護人のランディ・スパイビー氏は、執行チームが静脈を探すために少なくとも 7 本の針を腕に刺したと述べ、執行は残酷で、拷問のようだったと非難した [1][2]。10 月 1 日の時点でパイク氏は重体で、命を救うための治療を受けているという [1][2]。弁護団は執行の直後、次の声明を出していた [4]。
Tonight the State of Tennessee once again failed to carry out a lawful execution. We take no pleasure in being right, but the concerns raised by Ms. Pike proved to be true: difficult vein access, blown veins, degraded pentobarbital, no emergency medical care available when things inevitably go wrong, all under a protocol that remains veiled in secrecy.
Death Penalty Information Center(Tennessee Botches Another Execution Despite Earlier Warnings from Attorneys; Christa Pike Was Alive Hours After Attempt Began)
州矯正局は、司法長官室が承認した執行手順のすべてに従っており、手順は今回行った以上の措置を認めていないと説明した [1][3]。手順は 1 回目の注射のあとで受刑者が死亡していなければ 2 回目を打つと定めているが、2 回目のあとも生きていた場合の扱いは書かれていない [1][5]。リー知事は今回の件を「深く憂慮すべき」事態だとし、法に基づく刑の執行は州の最も重い責任の一つで、州民はそれが合法で憲法にかなうだけでなく、確実に行われることを期待していると述べた [1][3]。
執行はもともと 9 月 30 日の午前に予定されていたが、連邦第 6 巡回区控訴裁判所が 2 対 1 で一時停止を命じ、幼いころに受けた性的虐待の訴えが 1996 年の量刑で十分に考慮されたかを確かめる必要があるとした [1][5]。連邦最高裁判所は同じ日の夕方にこの停止を解き、リベラル派の判事 3 人は反対に回っている [4][5]。
パイク氏は 1995 年 1 月、職業訓練施設「ジョブ・コー」の同級生だった 19 歳のコリーン・スレマーさんを交際相手らと殺害し、1996 年に死刑を言い渡された [5][8]。殺害を否定したことはなく、支援者は、事件当時の年齢や精神疾患、幼いころからの性的虐待を州が考慮すべきだと訴えてきた [5]。スレマーさんの母親のメイ・マルティネスさんは執行を見届けるためにナッシュビルを訪れており、娘のための正義が果たされなかったと AP 通信に語っている [2]。執行されていれば、テネシー州で女性が処刑されるのは 200 年以上ぶりで、1976 年に最高裁が死刑を認め直してから全米で執行された女性は 18 人にとどまる [1][5]。
死刑情報センターのロビン・マー事務局長によると、静脈に針を入れられずに執行が中止された人はこれまでに 7 人いるが、執行の薬物を投与されたあとに生きていた人はいない [1][2]。テネシー州では 5 月にも、1 時間以上かけて点滴の管を入れられず、トニー・カラザーズ死刑囚の執行が中止されていた [1][3]。州当局は再び執行を試みるかどうかを明らかにしておらず、死刑囚の弁護に携わるジョン・ミルズ氏は、連邦最高裁はこれまで 2 回目の執行を止めてこなかったと BBC に話した [6]。
国連人権高等弁務官事務所は、失敗を重ねた執行による心身の長い苦しみは「おぞましく、残酷だ」とし、フォルカー・テュルク高等弁務官はパイク氏の執行をやめるよう州に求めている [7]。共和党のキャメロン・セクストン州下院議長も、議会として何が起きたのかを調べ、薬物に塩化カリウムを加えることを含めて手順を見直す考えだ [1]。
参考文献
- [1]The Guardian(Tennessee suspends executions as Christa Pike’s lawyer says failed lethal injection leaves her in critical condition)
- [2]HuffPost(Christa Pike Is In Critical Condition After Tennessee’s Failed Execution Attempt, Her Lawyers Say)
- [3]WSMV(Tennessee’s Gov. Lee orders ‘comprehensive’ review of Christa Pike’s attempted execution, calls off remaining execution for 2026)
- [4]Death Penalty Information Center(Tennessee Botches Another Execution Despite Earlier Warnings from Attorneys; Christa Pike Was Alive Hours After Attempt Began)
- [5]Al Jazeera(Tennessee death-row prisoner Christa Pike survives lethal injections)
- [6]BBC(What happened in the failed execution of Christa Pike - and what next?)
- [7]WSMV(Christa Pike’s execution attempt in TN spurs global response; United Nations office calls botched lethal injection ‘abhorrent’ and ‘cruel’)
- [8]Wikipedia(Christa Pike)