スペインのサンチェス首相が総選挙を前倒し:投票は 11 月 29 日
2026年10月6日 09:51
スペインのペドロ・サンチェス首相は 10 月 5 日朝、首相府で国民向けの声明を読み上げ、上下両院を解散して 11 月 29 日に総選挙を行うと表明した [1][2]。総選挙は遅くとも 2027 年夏までに行われる予定だったが、住宅危機への対策として政府が出した緊急政令 2 本が 2 日に下院で否決され、過半数を持たない連立政権は前倒しに踏み切った [2][3]。
サンチェス氏は 4 日午後に電話で国王フェリペ 6 世へ意向を伝え、5 日朝の臨時閣議で議会の解散を決めている [1][7]。声明では、この 3 年でスペインが EU で最も成長し、最も多くの雇用を生む経済になり、エネルギーの半分以上を再生可能エネルギーでまかなうようになったと実績を強調した [1]。一方で「私たち自身も誤りを犯し、目指したことのすべてはできなかった」と認め、格差や公共サービス、住宅をめぐる問題が残っていると語っている [1]。
もっと多くのことをするには、人々の支持を新たにし、広げる必要がある。格差を縮めるために残された改革に本格的に取り組むには、私たちが立ち上がり、議会がはるかに大きな進歩派の多数を与えてくれるようにしなければならない。その多数でエリート層を屈服させ、新たな社会の前進を勝ち取り、スペインを変え続けるのだ。
スペイン首相府(Declaración institucional del presidente del Gobierno)
国賓としてフィンランドを訪れている国王は、ヘルシンキに着いてすぐ解散の政令に電子署名しており、政令は 6 日の官報に載る見込みだ [7]。選挙法は官報への掲載から 54 日後に投票すると定めていて、候補者名簿の届け出は 10 月 21〜26 日、選挙運動は 11 月 13 日から 27 日までとなり、新しい議会は 12 月 23 日に召集される予定となっている [6]。
否決された 2 本の政令のうち 1 本目は、弱い立場の借り手の立ち退きを 2030 年まで止め、2028 年より前に切れる賃貸契約を 2 年延ばすほか、観光客向けアパートへの課税を強め、政府が「ハゲタカファンド」と呼ぶ投資ファンドによる住宅の購入を制限する内容で、2 本目は賃貸契約の自動更新を柱とする [2][3]。2 日の下院の採決では 1 本目が賛成 172、反対 178、2 本目が賛成 166、反対 184 で退けられ、保守の国民党と極右のボックス、カタルーニャ独立派のジュンツなどが反対に回った [3][9]。採決の直前に演壇に立ったサンチェス氏は「お願いするだけでなく、懇願します。勇気を持ち、筋を通してください」と議員に迫り、手を打たなければ住宅市場が社会を壊してしまうと訴えたが、ジュンツは前日までに 2 本とも反対する考えを示し、政令をいったん取り下げて交渉し直すよう政府に求めていた [3][9][11]。
政令のもとになった抗議のきっかけは、9 月 23 日にマドリードで 87 歳の女性が自宅を追われたことだ [2]。女性が 70 年住んできた部屋の家賃は、所有する会社によって月 500 ユーロから 2650 ユーロに引き上げられ、のちに 1650 ユーロまで下げられたものの、なお女性の年金を 300 ユーロ上回っていた [2][3][4]。3 日にはマドリードやバレンシア、バルセロナなどで借り手の保護を求めるデモがあり、マドリードの参加者は当局の発表で 7 万人、主催者の発表で 50 万人にのぼった [2][4]。
政府は 6 日の定例閣議で、否決された政令に手を加えたものを改めて決め、議会の解散中に限られた権限で下院の役目を引き継ぐ常置委員会で承認を得る方針だ [5][6][8]。69 人からなる常置委員会で過半数の 35 票を得るには、サンチェス氏の社会労働党の 25 票と、連立を組む左派連合スマールの 6 票に 4 票を足す必要があり、下院で 1 本目に賛成したバスク民族党(PNV)、カタルーニャ共和左派(ERC)、EH ビルドゥ、ポデモスがそろえば、ジュンツが反対しても通る計算になる [5]。ただし PNV は 2 本目に反対しており、こちらは成立しない公算が大きい [5]。ボックスのサンティアゴ・アバスカル党首は 5 日に民放アンテナ 3 の番組に出演し、本会議で否決された政令を小さな委員会で通し直すのは「明白な違法行為」だと批判したうえで、サンチェス氏は違法行為も辞さず、憲法裁判所の助けを得るに違いないと語った [8]。
最大野党の国民党を率いるアルベルト・ヌニェス・フェイホー党首は「ようやくスペイン国民が決める」と前倒しを歓迎し、「これまでのような選挙ではない。スペインがサンチェス氏に勝つための選挙だ」と述べた [4]。ジュンツのミリアム・ノゲラス下院報道官は、サンチェス氏が市民の心配する問題で多くの人の苦しみを選挙に利用したと非難し、過半数がないまま統治できないことや移民政策の失敗、周りの汚職事件を覆い隠すための前倒しだという [9]。
サンチェス氏は 2018 年 6 月から首相を務め、社会労働党が第 2 党にとどまった 2023 年の総選挙のあとも、カタルーニャやバスクの民族派の支持を取りつけてスマールとの連立で政権を保ってきた [2]。ただ、連立は下院で過半数に届かず、予算も 2023 年から通せないままだ [4][10]。首相の妻ベゴーニャ・ゴメス氏は横領や影響力の不正行使などの罪で裁判を控え、弟のダビド氏は自治体への採用をめぐる不正で 7 月に有罪となって公職に就くことを 9 年間禁じられたが、2 人とも不正を否定している [4]。夏には北アフリカの飛び地セウタにモロッコから 48 時間で約 7 万人が入り、政府の対応も批判を浴びた [4][10]。
世論調査では国民党が首位を保っているものの単独過半数には届かない見込みで、政権を握るにはボックスの協力が要るとみられている [2][10]。ボックスが政権に加われば、1975 年のフランコの死去を経て民主化してから初めて極右が国政を担うことになる [10]。アバスカル氏は住宅や福祉の面でスペイン人が自国で差別されないよう戦うと述べ、移民を送り返す「再移民」に力を入れる考えも示した [4]。
参考文献
- [1]スペイン首相府(Declaración institucional del presidente del Gobierno)
- [2]BBC(Spain's Prime Minister Pedro Sánchez calls early election)
- [3]BBC(Spanish PM Sánchez loses key housing crisis vote after eviction of woman, 87)
- [4]The Guardian(Spain’s PM Pedro Sánchez calls snap election after housing law fails to pass)
- [5]EL PAÍS(El Consejo de Ministros aprobará mañana unos decretos de vivienda similares a los que cayeron para que los vote la Diputación Permanente)
- [6]EL PAÍS(Así queda el calendario para las elecciones del 29-N: comienzo de la campaña electoral y otras fechas clave)
- [7]Europa Press(El Rey firma por vía telemática el decreto del adelanto electoral nada más llegar a Helsinki)
- [8]Europa Press(Abascal ve "ilegal" que la Diputación Permanente del Congreso vote de nuevo los decretos de vivienda)
- [9]RTVE(Junts ve en el adelanto un "interés electoral" de Sánchez para "tapar sus fracasos" y los "casos de corrupción")
- [10]The Guardian(Will Pedro Sánchez’s gamble to call snap general election in Spain pay off?)
- [11]スペイン首相府(Intervención del presidente del Gobierno en el pleno extraordinario sobre Reales Decretos-ley de vivienda)