米国がロシア産軽油の取引を一時解禁、トランプ氏とプーチン氏が電話で合意
2026年10月10日 20:06
米国のトランプ大統領は 9 日、ロシアのプーチン大統領と電話で話し、ロシアが軽油を米国と世界の市場へ供給することで合意したと自身の SNS で発表した [1][2]。米財務省の外国資産管理局(OFAC)は同じ日、ロシア産軽油の販売、引き渡し、荷揚げ、輸入にかかわる取引を 2027 年 4 月 7 日まで認める一般許可 135 号を出し、制裁で禁じてきた取引に半年の例外を設けている [3][4]。ただし、米国の金融機関にあるロシア中央銀行や国民福祉基金、ロシア財務省の口座からの引き落としは対象外で [4]、米国の銀行で凍結されたロシアの資産はそのまま残る [1]。
トランプ氏は投稿で、ロシアがただちに 30 万トンを超える軽油を供給し、11 月にさらに 50 万トン、その後すぐに 100 万トンを出すとした [2]。ロシアのノバク副首相は国営タス通信に、10 月中に 30 万トン、11 月に約 50 万トン、12 月に 100 万トンを米国や各国へ送る用意があると述べ、将来は月 300 万トン近くまで増やせるとの見方を示した [5]。ロシアは国内の燃料市場の混乱を受けて、生産者による軽油の輸出を 10 月 31 日まで禁じていたが、ノバク氏はこの制限を予定より早く解き始めるとも話している [2][6]。
米国では 2 月に始まったイランとの戦争で燃料価格が跳ね上がり、なかでも物流や農業を支える軽油の値上がりがトランプ氏への支持を下げている [1][7]。米自動車協会(AAA)によると、10 日の軽油の全米平均は 1 ガロン 6.2824 ドルで、1 年前の 3.6732 ドルより約 7 割高い [8]。11 月の中間選挙を控え、トランプ氏は投稿で「アメリカ人、とりわけ偉大な農家や牧場主、トラック運転手にとっての値下げが私の最優先事項だ」と強調した [7]。
投資会社クィルター・シェビオットのティム・アーミテージ氏は、最初の 30 万トンは約 225 万バレルにあたり、米国の 1 日の消費量の約 380 万バレルにも届かないとして、給油所の価格はほとんど変わらないとみる [1]。ウクライナで制裁政策を担当するウラジスラフ・ウラシウク氏も、30 万トンは米国の軽油の需要の 15 時間分にすぎず「経済的に無意味だ」と SNS に投稿した [2]。
ウクライナのゼレンスキー大統領は SNS への長い投稿で、合意は長引かせるのではなく終わらせるべき戦争への「投資」だと非難し、ロシアはさらなるテロと裏切りでこれに報いるだろうと述べた [1][7]。投稿では次のようにも訴えている [7]。
これはロシアを利するもので、ロシアがさらに多くの人を殺し、戦争をより長く続け、米国をいっそう軽んじ、世界にさらに大きな損失と被害を与えることを許す。
The Guardian(Zelenskyy furious as Trump announces deal to buy Russian diesel)
合意が発表されたのは、トランプ氏の特使のウィトコフ氏と娘婿のクシュナー氏がマイアミでウクライナや欧州の当局者と和平案を話し合っていたさなかで、ゼレンスキー氏は自国の交渉団が「合意の煙幕に使われた」と反発した [7]。米ニュースサイトのアクシオスには、今週 74 歳になったプーチン氏への「誕生日の贈り物のようだ」と語っている [7]。ゼレンスキー氏は同じ 9 日、キーウを訪れた米上下両院の超党派の議員団と会い、ロシアの戦争を支える資金の流れを断つため、グラハム上院議員の名で呼ばれる対ロシア制裁法を実行するよう求めていた [9]。
トランプ氏は 9 月、ロシアの銀行や当局者、タンカーへの幅広い制裁と、ロシア産の石油やガスの輸入が多い上位 5 か国への高い関税を定めた法律に署名しており、この法律は例外を設ける広い裁量を大統領に与えている [7]。民主党上院トップのシューマー院内総務とシャヒーン議員、ウォーレン議員は共同声明で、今回の合意を「ウクライナと欧州の同盟国、そして米国の安全保障に対する完全な裏切り」と呼び、数週間前に成立した法律の狙いを損なうと批判した [2]。共和党のドン・ベーコン下院議員も X に「その金で都市を爆撃しているプーチン氏の戦時経済を支えるのは、道義的に誤っている」と投稿している [7]。
ロシア大統領府のウシャコフ補佐官によると、電話ではロシアの燃料の供給を含む大型の経済協力の構想が話し合われた [10]。プーチン氏は一方で、9 月の下院選挙の投票日にウクライナがモスクワなどを無人機で攻撃したため、米国を交えた 3 か国の和平交渉はすぐには再開できなくなったとトランプ氏に伝えたという [10]。プーチン氏の特使のドミトリエフ氏は SNS で「軽油とエネルギーでのロシアと米国の協力は世界のためになる」と合意を歓迎した [1]。
ロシアは今年、ウクライナの無人機による製油所への攻撃で 2 度にわたって深刻な燃料不足に見舞われ、国際エネルギー機関(IEA)の推計では軽油の生産が 3 割近く落ち込んだ [1]。トランプ氏は製油所への攻撃が燃料高を招いていると不満を示してきたが、ゼレンスキー氏は、ロシアがウクライナのエネルギー施設を壊さなければ製油所は狙わないとして、互いに攻撃をやめる案を米国に示している [1][2]。キーウ・インディペンデントは、ロシアがこのエネルギー施設への攻撃停止をめぐる協議で、米国に制裁の緩和を求めていると報じた [2]。
参考文献
- [1]BBC News(Trump announces deal for Russian diesel as Zelensky calls it a 'gift to Putin')
- [2]The Kyiv Independent(Trump allows Russia to supply millions of tons of diesel to US, global markets)
- [3]米財務省外国資産管理局(Issuance of Russia-related General License)
- [4]米財務省外国資産管理局(Russia-related General License 135)
- [5]TASS(Russia ready to supply 300,000 tons of diesel to world market this month - senior official)
- [6]TASS(Russia begins lifting diesel exports restrictions immediately - deputy PM)
- [7]The Guardian(Zelenskyy furious as Trump announces deal to buy Russian diesel)
- [8]AAA(AAA Fuel Prices)
- [9]ウクライナ大統領府(The President Met With U.S. Congressional Delegation to Discuss Strengthening Ukraine's Security, Assistance Ahead of Winter, and Sanctions Pressure on Russia)
- [10]The Moscow Times(Putin Downplayed Immediate Ukraine Talks Resumption in Phone Call With Trump, Kremlin Says)