ロシアがスパイ容疑で北海道新聞の記者を拘束、モスクワの裁判所は勾留を認める
2026年10月14日 20:24
ロシア連邦保安局(FSB)は 13 日、極東のサハリン州で北海道新聞ユジノサハリンスク支局の男性記者をスパイ容疑で拘束したと発表した [1][2]。記者はモスクワへ移送されて逮捕され、モスクワの裁判所は 2 か月の勾留を認めている [1]。
FSB によれば、記者は日本の情報機関の指示を受け、クリール諸島(千島列島と北方領土)からウクライナでの「特別軍事作戦」に動員された兵士や志願兵の人数を調べ、日本側へ伝えようとしていたという [1]。日付は示していないものの、記者が出国を予定していた日の前日に拘束したと FSB は説明しており [3]、覆面の係官がホテルの部屋で男性に手錠をかける場面から、男性が飛行機で運ばれ、モスクワの法廷でおりの中に姿を見せるまでを映した動画を公開した [2][4]。支局を捜索する場面の映像も出している [1]。
記者に対しては FSB の捜査局が刑事事件の捜査を始め [5]、インタファクス通信によれば勾留の期限は 12 月 12 日とされる [4]。スパイ罪の法定刑は懲役 10〜20 年にのぼる [1][5]。共同通信は、FSB の言う「スパイ容疑」が取材の範囲内の行為だった可能性を指摘したうえで、当局が国外退去ではなく勾留を選んだことから拘束が長引くおそれがあると伝えている [1]。
ロシア外務省は記者の氏名も公表した一方、北海道新聞は身元を明らかにしておらず、詳しい事実関係を確かめている段階だとして、記者の安全の確保を最優先にする考えを示すにとどめている [3][5]。同省のザハロワ報道官は 13 日に出した声明で、日本が記者を情報集めに使っていると非難した [4]。
外国人記者の資格を持つロシア駐在の特派員を使い、わが国の安全を損なうことを狙った情報を集めようとする日本側の試みは遺憾である。
BBC News(Russia arrests Japanese journalist for alleged espionage)
ザハロワ氏は今回のような事例がほかにもあると主張したが、記者や報道機関の名前は挙げておらず [4]、拘束が両国関係にさらに影を落とす要因になるとの見方も示している [3]。
木原稔官房長官は 14 日の記者会見で、政府は FSB の発表まで拘束を把握しておらず、記者ともまだ連絡が取れていないと明らかにした [3][4]。茂木敏充外相は同じ日の衆院予算委員会で、ロシア側に情報の提供と人道上の配慮、公平で公正な扱いを求めたと答え、拘束に至った経緯や記者の健康状態を確かめながら、さらなる申し入れを含めて邦人の保護に必要な措置を取ると述べている [5][6]。外務省の北村俊博外務報道官によると、ロシア側への申し入れは 13 日に在ロシア日本大使館が、14 日には在ユジノサハリンスク日本総領事館が行った [6]。
14 日には外務省の中村仁威欧州局長がノズドレフ駐日ロシア大使を呼び出し、日本に何の説明もないまま邦人を拘束し、一方的に発表したとして強く抗議した [6]。中村氏が速やかな情報の提供と人道的で公平・公正な扱いを求め、記者と面会する機会を早く設けるよう申し入れたのに対し、大使は日本の立場を本国に伝えると応じたという [5][6]。
日本の報道機関で日本人の記者をサハリンに常駐させているのは北海道新聞だけで [1]、同紙は北方領土をめぐる問題を厚く報じてきた [5]。ロシア極東では日本の記者や外交官が当局に拘束される例が続き、2019 年 12 月には共同通信の記者がウラジオストクで約 5 時間拘束されたあと 72 時間以内の出国を求められ、2022 年 9 月には在ウラジオストク日本総領事館の領事がスパイ容疑で一時拘束された [5]。昨年末には、ハバロフスクに住んで日本の報道機関に協力していたロシア人の男性が国家反逆の容疑で拘束され、家族によるといまも行方が分からない [5]。
2023 年 3 月に米国の新聞ウォール・ストリート・ジャーナルのエバン・ゲルシコビッチ記者がエカテリンブルクで拘束されて以来、外国人の記者がロシアで拘束された事件で今回ほど注目を集めたものはないと、ロイター通信は伝えている [3]。ゲルシコビッチ記者はスパイの罪で 2024 年 7 月に 16 年の刑を言い渡され、翌月に米国とロシアの大規模な身柄交換で解放された [3][5]。
両国の関係は、8 月にプーチン大統領が北方領土を初めて訪れてから一段と冷え込み、高市早苗首相は訪問が日本国民の感情を傷つけたと強く批判していた [4]。先週にはロシアが国際刑事裁判所の赤根智子所長の引き渡しを求め [4]、拘束が発表された 13 日には中国黒竜江省の代表団が択捉島を訪れている [3][6]。茂木外相は 14 日、代表団の訪問について「北方領土は歴史的にも国際法上もわが国固有の領土だ」と述べ、ロシアと中国に適切な対応を申し入れたことを明らかにした [6]。
参考文献
- [1]東京新聞(ロシア当局、北海道新聞記者拘束 サハリンで「スパイ容疑」)
- [2]Al Jazeera(Russia arrests Japanese reporter for alleged espionage)
- [3]The Moscow Times(Russia Arrests Japanese Journalist on Suspicion of Spying)
- [4]BBC News(Russia arrests Japanese journalist for alleged espionage)
- [5]Japan Wire by Kyodo News(Japan asks Russia for info, fair process over journalist detention)
- [6]東京新聞(政府、ロシア大使に抗議 邦人拘束で情報提供要請)