検事の「ガキ」発言で国に賠償を命じた判決が確定、黙秘権の侵害は認めず
2026年10月15日 19:47
横浜地検に犯人隠避教唆の罪で起訴され、有罪が確定した元弁護士の江口大和さん(40)が、取り調べで検事に「ガキ」などと侮辱され、黙秘権も侵害されたとして国に賠償を求めた訴訟で、最高裁第 2 小法廷(尾島明裁判長)は江口さん側の上告を退ける決定をした [1][2]。決定は 14 日付で、人格権の侵害を認めて国に 110 万円の支払いを命じる一方、黙秘権の侵害は認めなかった一審と二審の判決が確定した [1][2]。
江口さん側は上告の理由で、黙秘の意思をはっきり示したあとも取り調べを続けることは憲法に反すると訴えたが、第 2 小法廷は上告の理由にあたらないとして退け、黙秘権の侵害については判断を示さなかった [1][2]。結論は裁判官 3 人の全員一致によるもので、弁護士出身の高須順一裁判官は決定に加わっていない [2]。黙秘権は憲法 38 条が保障しており、刑事訴訟法 198 条 2 項は、取り調べの前に、自分の意思に反して供述する必要がないことを容疑者に告げるよう定めている [3]。
一審と二審の判決によると、江口さんは 2016 年に起きた交通死亡事故をめぐり、関係者にうその申告をさせたとして 2018 年に逮捕、起訴された [1]。刑事裁判は 2023 年に最高裁で執行猶予のついた有罪判決が確定し、江口さんは弁護士の資格を失っている [1]。取り調べで黙秘する考えを伝えた江口さんに、検事は「お子ちゃま発想」「ガキだよね」などと言い、黙秘権そのものについても次のように述べていた [1]。
あなたの言っている黙秘権って何なんですか、全然理解できない。
東京新聞(検事が取り調べで「ガキ」暴言、国への賠償命令確定 最高裁、黙秘権侵害は認めず上告棄却)
2024 年 7 月の東京地裁の判決は、検事の発言を「ことさらに侮辱的でやゆする表現を使い、人格を不当に非難した」として違法と認めたが、黙秘の意思を伝えたあとも検事らが 50 時間を超えて取り調べを続けたことについては、黙秘権の侵害にあたらないと判断した [1]。2025 年 2 月の東京高裁の判決も、黙秘を表明したあとに検察官が取り調べを続けても、それだけで供述を拒む自由を奪うことにはならないとして、一審の判断を支持している [1][2]。
一審の審理では取り調べを録音録画した映像が法廷で再生され、目を閉じて黙秘する江口さんに検事が「あなた被疑者なんだよ、犯罪の」などと一方的に話しかける様子が映し出された [4]。映像が残っていたのは、2010 年に大阪地検特捜部の検事による証拠改ざん事件が起きたことを受けて、検察が独自に捜査する事件などでは逮捕後の取り調べをすべて録音録画することが義務づけられ、横浜地検特別刑事部が独自に手がけた江口さんの事件もその対象だったためである [4]。
カメラが回っていても不適切な取り調べは後を絶たず、大阪地検特捜部が手がけた別の事件では、2021 年に無罪が確定した不動産会社の元社長の部下を取り調べた検事が、机をたたいて「検察なめんな」と怒鳴っていたことが録音録画で明らかになった [4]。一審の判決が出たとき、江口さんの代理人の趙誠峰弁護士は「黙秘権保障の第一歩になる」と述べ、判決の意義を強調していた [4]。
参考文献
- [1]東京新聞(検事が取り調べで「ガキ」暴言、国への賠償命令確定 最高裁、黙秘権侵害は認めず上告棄却)
- [2]産経ニュース(取り調べで「ガキ」検事の侮辱発言、賠償確定 黙秘権侵害は判断せず 最高裁が上告棄却)
- [3]ウィキペディア(黙秘権)
- [4]東京新聞(被疑者をガキ呼ばわり…違法取り調べ、録画導入後も続々 検事が「カメラの存在を忘れる」ほど必死になる理由)