米国が国際刑事裁判所そのものを制裁、日本など 8 か国の外相は「強く異議」
2026年10月10日 02:57
米国務省は 10 月 9 日、オランダのハーグにある国際刑事裁判所(ICC)を組織ごと制裁の対象に指定したと発表した [1][2]。ICC ではこれまで判事や検察官ら 13 人が個別に制裁を受けてきたが、裁判所そのものが対象になるのは初めてで、ICC は同じ日に声明を出し、制裁を強く拒んでいる [3]。発表は、ICC の元判事ナバネセム・ピレイ氏へのノーベル平和賞の授与が決まった直後だった [2]。
国務省は声明で、トランプ大統領は ICC が米国人を訴追することを決して許さないとし、この「ならず者の裁判所」との取引を禁じて資金を断ち、活動できないようにすると宣言した [1]。一方で、締約国が米国の懸念に応える解決策を交渉で示せる余地を残すよう措置を組み立てたとも説明し、同盟国には ICC を抑え込むよう求めている [1]。声明は次のように続く [1]。
我々のメッセージは明確だ。米国とその国民は ICC の管轄に服さない。この点では両党とも一致しているが、この脅威を永久に終わらせるのに必要な行動をとる決意をもつのはトランプ大統領だけだ。ICC が脅しをやめるか、我々が ICC を終わらせるかのどちらかだ。
U.S. Department of State(Imposing Sanctions on the International Criminal Court)
共同通信によると、米国は米兵の戦争犯罪の捜査やイスラエルのネタニヤフ首相への逮捕状に反発して ICC への制裁を広げてきており、取引の禁止で金融機関や企業が ICC との関わりを避け、加盟国からの分担金の受け取りも難しくなるおそれがある [2]。8 月には赤根智子所長も制裁の対象になった [4]。赤根氏は日本の検察官出身で、2018 年に ICC の判事となり、2024 年 3 月から所長を務めている [4]。
ICC は声明で、今回の措置は 125 の締約国が条約で設けた独立の司法機関を狙ったもので、司法の妨げであり、誰も法の上には立たないという原則への攻撃だと批判した [3]。赤根所長は「裁判所は、重大な犯罪の数えきれない被害者のために、独立して公平に、法と証拠だけに基づいて任務を果たし続ける」と述べ、裁判所の行く末はそれを設けた国々の手にもかかっていると訴えている [3]。
ドイツ外務省は同じ日、日本や英国、フランスなど 8 か国の外相による共同声明を発表し、米国の指定について「遺憾であり、強く異議を唱える」とした [5]。前日の 8 日には、ロシア最高検察庁が、ロシアで有罪の判決を受けた赤根所長ら 9 人の身柄を引き渡すよう ICC 本部のあるオランダなどに求めたと発表している [6]。ICC が 2023 年にウクライナ侵攻をめぐってプーチン大統領らに逮捕状を出したことへの対抗で、モスクワの裁判所は 2025 年 12 月、欠席裁判で赤根氏やカリム・カーン元主任検察官らに 3 年 6 か月から 15 年の禁錮刑を言い渡していた [4][6]。
参考文献
- [1]U.S. Department of State(Imposing Sanctions on the International Criminal Court)
- [2]熊本日日新聞(米、ICC本体を制裁 元裁判官のノーベル平和賞直後(共同通信))
- [3]International Criminal Court(The ICC strongly rejects US sanctions against the institution)
- [4]Wikipedia(Tomoko Akane)
- [5]熊本日日新聞(ICC米制裁に「強い異議」と8カ国外相(共同通信))
- [6]読売新聞(欠席裁判でICC赤根所長らに禁錮刑言い渡したロシア、身柄引き渡しをオランダなどに要請)