極形式で書いた 2 つの複素数をかけると、絶対値はかけ算、偏角は足し算になります。
z1=r1(cosθ1+isinθ1),z2=r2(cosθ2+isinθ2)
z1z2=r1r2{cos(θ1+θ2)+isin(θ1+θ2)}
長さは倍に、向きは回る。この 2 つが同時に起きています。
加法定理をそのまま読みかえている
展開して i2=−1 を使い、実部と虚部に分けます。
z1z2=r1r2(cosθ1+isinθ1)(cosθ2+isinθ2)=r1r2{(cosθ1cosθ2−sinθ1sinθ2)+i(sinθ1cosθ2+cosθ1sinθ2)}
実部のかっこが cos(θ1+θ2)、虚部のかっこが sin(θ1+θ2)。三角関数の加法定理の右辺そのものです。
z1z2=r1r2{cos(θ1+θ2)+isin(θ1+θ2)}
i2=−1 が実部の引き算をつくり、加法定理の cos の側と符号がそろう。ここが噛み合っているところ。
割り算では角を引く
分母の共役をかけて実数化すると、同じ計算が符号違いで進みます。
z2z1=r2r1{cos(θ1−θ2)+isin(θ1−θ2)}
絶対値は割り算、偏角は引き算。z2=0 の断りがいるのは、割る側の r2 で割るためです。
w をかけるのは、回して伸ばすこと
z に w をかけた点は、z を原点のまわりに argw だけ回し、原点からの距離を ∣w∣ 倍にした位置に来ます。
∣w∣=1 なら距離が変わらず、回転だけ。w が正の実数なら偏角が 0 で、伸び縮みだけ。
i をかけると 90 度回る
i の絶対値は 1、偏角は 2π。
i=cos2π+isin2π
長さを変えずに 2π だけ回す操作にあたります。3+2i で試すと、(3+2i)i=3i+2i2=−2+3i。
点 (3,2) が点 (−2,3) へ動きました。横の座標が縦へ、縦の座標は符号を変えて横へ。座標平面で 90 度回したときの動き方と同じです。
4 回かければ i4=1 で、360 度まわって元の位置へ戻る。
絶対値はかけ算のまま通る
偏角の話を落として長さだけを見ると、次の 2 つになります。
∣z1z2∣=∣z1∣∣z2∣,z2z1=∣z2∣∣z1∣
極形式を持ち出さずに確かめることもできます。∣z∣2=zz を使い、共役が積をまたいでも形を変えないことから次のように進む。
∣z1z2∣2=z1z2z1z2=z1z1⋅z2z2=∣z1∣2∣z2∣2
両辺とも 0 以上だから、平方根をとって ∣z1z2∣=∣z1∣∣z2∣。
足し算のほうは同じようにいきません。∣z1+z2∣ は ∣z1∣+∣z2∣ と一致しないことのほうが多く、z1=1、z2=i なら左辺が 2、右辺が 2 になります。
例:(1+i)(3+i) を角の足し算で
それぞれを極形式にします。1+i は r=2、θ=4π。3+i は r=2、θ=6π。
絶対値をかけて 22、偏角を足して 4π+6π=125π。
(1+i)(3+i)=22(cos125π+isin125π)
そのまま展開した結果とも合わせておきます。
(1+i)(3+i)=3+i+3i+i2=(3−1)+(3+1)i
補足:cos75∘ が手に入る
上の 2 つは同じ数なので、実部どうしを比べられます。
22cos125π=3−1
125π は 75∘。両辺を 22 で割り、分母を有理化します。
cos75∘=223−1=46−2
虚部を比べれば sin75∘=46+2 も同じ手順で決まる。有名角でない値が、かけ算 1 つから拾えました。
z の絶対値が 3、偏角が 4π、w の絶対値が 2、偏角が 6π のとき、wz の偏角はどれですか。
__RESULT__
割り算では偏角を引くので 4π−6π=12π です。絶対値のほうは割って 23 になります。角まで割ってしまうと 24π になる。
例:1+i3+i
絶対値は 22=2、偏角は 6π−4π=−12π。
1+i3+i=2{cos(−12π)+isin(−12π)}
分母を実数化する道でも確かめておきます。
2(3+i)(1−i)=23+1+21−3i
実部が正、虚部が負。偏角が負の角だという見立てと合っています。
∣z∣=5、∣w∣=4 のとき、∣zw∣ はどれですか。
__RESULT__
絶対値はかけ算をまたいでそのまま通るため ∣zw∣=∣z∣∣w∣=20 です。9 は足した値、41 は 52+42 で、どちらも積の絶対値にはなりません。
かけるとは、回して伸ばすこと。割るとは、逆へ回して縮めること。a+bi の形では見えなかった動きが、極形式にすると角と長さの計算として表れます。
極形式どうしをかけると、絶対値は $r_1 r_2$、偏角は $\theta_1 + \theta_2$。展開して実部と虚部に分けると、そこに三角関数の加法定理の右辺がそのまま並びます。だから $w$ をかける操作は、原点のまわりに $\arg w$ だけ回して $|w|$ 倍に伸ばすことと同じ。$i$ をかければ $90$ 度の回転で、4 回で元の位置へ戻ります。割り算は角を引いて絶対値を割る。$|z_1z_2| = |z_1||z_2|$ を共役から確かめ、$(1+i)(\sqrt{3}+i)$ の 2 通りの計算から $\cos 75^\circ$ を拾うところまで。
割り算では偏角を引くので 4π−6π=12π です。絶対値のほうは割って 23 になります。角まで割ってしまうと 24π になる。