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(1 + i) を 10 乗すると……ド・モアブルの定理と複素数の累乗

極形式の複素数を 乗すると、絶対値は 乗、偏角は 倍になります。

これがド・モアブルの定理です。かけるたびに角が足され長さがかけ算になる、その動きを 回くり返しただけ。

の場合がいちばんよく使う形になります。

数学的帰納法で示す

で確かめれば、 が付いた形は を外へ出すだけで済みます。

のとき、左辺も右辺も 。

で成り立つと仮定します。両辺に をかける。

2 行目で使ったのは、かけると角が足されるという積の形。 でも成り立つため、すべての自然数 で通ります。

負の整数まで広げる

が負のときは ( は自然数)とおき、 から始めます。

分母を実数化したところで が効き、分母が に落ちる。 が偶関数、 が奇関数だから、符号を角の中へ入れ直せます。

なら両辺とも 。整数全体で通る形になりました[2]。

例:

は 、。

。角のほうは で、 を引くと に落ちます。

から としても同じ値。角を数えるほうは、指数が大きくなっても手間が増えません。

例:

、 です。

角がちょうど に届いたため、実数に着きました。虚部が消えるのは偏角が の倍数になったときで、 乗がその境目。

例:

指数が負でも同じ手順です。角を 倍、絶対値を 乗する。

の逆数が で、合っています。

の値はどれですか。

__RESULT__

角を 倍すると になります。絶対値は のままで、。 の倍数に届くと に戻りますが、 はその半分です。

展開と見比べると倍角の公式が拾える

で 2 通りに計算してみます。ド・モアブルの定理を当てた形はこちら。

そのまま 3 乗の展開をした形はこちら。

同じ数なので、実部どうしと虚部どうしを比べられます。実部から始めます。

を入れて にそろえる。

虚部のほうも同じ手順で にそろえます。

3 倍角の公式が 2 つとも並びました。 で同じことをすれば 2 倍角の公式になり、 を上げれば 4 倍角も 5 倍角も同じ道でたどれる。

の実部を展開して整理すると、どの式になりますか。

__RESULT__

です。 なので実部は になり、これが 。 のほうは虚部で、 にあたります。

補足:名前が付くまで

この形を最初に扱ったのはド・モアブルで、1707 年の論文に近い形が現れ、1722 年の論文にも書かれています[1]。当時は角を 等分したり 倍したりする計算の道具として使われました。

いまの書き方に整え、すべての について証明したのはオイラーで、1748 年のこと[1]。名前はド・モアブルに残り、形はオイラーのものが残っています。

出典

De Moivre formula. Encyclopedia of Mathematics, EMS Press.
Nombres complexes et trigonométrie. Bibm@th, résumé de cours de mathématiques supérieures.

角を 倍して長さを 乗する。 のような計算でも、やることは角を 倍して の余りをとるところまでです。

$\{r(\cos\theta + i\sin\theta)\}^n = r^n(\cos n\theta + i\sin n\theta)$。かけるたびに角が足され長さがかけ算になる、その動きを $n$ 回くり返した形です。数学的帰納法で示し、$z^{-m} = \dfrac{1}{z^m}$ から負の整数まで広げます。$(1+i)^{10}$ なら $(\sqrt{2})^{10} = 32$、角は $\dfrac{5}{2}\pi$ で $32i$。$n = 3$ を展開と見比べると $\cos 3\theta = 4\cos^3\theta - 3\cos\theta$ が拾えます。1707 年のド・モアブルから 1748 年のオイラーまでの経緯も。