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浮力とアルキメデスの原理|水圧と押しのけた水の重さ

水に沈めた石は、持ち上げるとき軽く感じます。石そのものは変わっていないので、水が上向きに押している。この上向きの力が浮力です。

浮力の大きさは、物体が押しのけた流体の重さに等しい。これをアルキメデスの原理といいます[1]。深さにも材質にもよらず、押しのけた体積だけで決まる。

圧力は力を面積で割った量

浮力を式で出すには、まず圧力から入ります。面を垂直に押す力を、その面の面積で割った量が圧力です。

単位は Pa で、 は あたり を意味する。 と書いても同じ。

同じ力でも、面積が小さいほど圧力は大きくなります。押す強さではなく、力の集中の度合いを見る量。

例:画びょうの頭と針先

で押した画びょうを考える。頭の面積を 、針先の面積を とします。

差は 万倍。同じ で押しても、指は痛くないのに板には刺さります。

水の中の圧力は深さで決まる

水面から深さ の点を考えます。その上には、断面積 、高さ の水の柱が乗っている。

柱の体積は で、密度を とすれば質量は 、重さは です。これを面積で割る。

が消えます。太い柱でも細い柱でも、深さが同じなら圧力も同じ。容器の形にもよりません。

この圧力を水圧といい、水面を基準にとった値をゲージ圧といいます。物体が実際に受けるのは、これに大気圧を足した値になる。

例:深さ 10 m の水圧

水の密度を として計算する。

大気圧 とほぼ等しい値です。 潜るごとに、大気 つぶんが上に増えていく計算になる。

深さ なら 気圧近く。潜り始めてすぐ耳が痛くなるのは、浅いところでも増え方が同じだから。

圧力に向きはない

静止した流体の中では、 点にはたらく圧力の大きさは向きによりません[4]。上からも横からも下からも同じ値で、面をつねに垂直に押す。

コップの側面も、底と同じ深さなら同じ圧力を受ける。水中に置いた面は、傾きによらず深さだけで決まる圧力を受けています。

密閉した容器に加えた圧力が流体のすみずみまで同じ大きさで伝わることを、パスカルの原理といいます。油圧ジャッキはこの性質を使う。

浮力は上面と下面の圧力差から出る

深さで圧力が変わるなら、物体の上面と下面では受ける力が違います。この差が浮力の正体です。

底面積 、高さ の直方体を、上面が深さ になるように沈めます。上面には下向きに、下面には上向きに、水圧による力がかかる。

差をとると、深さ が消えます。

は直方体の体積 です。残ったのは流体の密度と物体の体積だけ[2]。

横向きの力は、左右の同じ深さで同じ大きさになって打ち消し合う。上下の差だけが残ります。

押しのけた流体の重さという読み方

は、物体と同じ形をした水があったとしたときの、その水の質量です。 はその重さ。

つまり浮力は、物体が押しのけた流体の重さに等しい[1]。式に物体の材質は入りません。

鉄でも木でも発泡スチロールでも、同じ体積を沈めれば受ける浮力は同じ。違うのは自分の重さのほうです。

例:1 辺 10 cm の立方体にはたらく浮力

体積は 、つまり です。

の物体にかかる重力と同じ大きさになる。押しのけた水 の重さそのものです。

水の中では見かけの重さが減る

ばねばかりの読みは、重さから浮力を引いた値になります。

重力が減ったわけではなく、上向きの力が加わっただけ。空中へ戻せば読みも戻ります。

沈めていく途中では、浸かった部分が増えるぶんだけ読みが減っていく。全部沈んだあとは、どれだけ深く下ろしても読みは動きません。

例:鉄のかたまりを水に沈める

体積 、密度 の鉄を吊るします。

空中での重さは でおよそ です。浮力は先ほどと同じ になる。

減る割合は で、 パーセントほど。密度の比がそのまま出ています。

浮くか沈むかは密度の比べ合い

全部沈めたときの浮力 と、物体の重さ を比べます。 は物体の平均密度。

なら浮力のほうが大きく、物体は浮き上がる[3]。逆なら沈みます。体積 が両辺にあるので、大きさは効きません。

浮いて静止したとき、沈んでいる部分の体積を とすると、つり合いは次のようになる。

沈む割合は密度の比そのもの。同じ材質なら、船でも角氷でも同じ割合で沈みます。

例:氷山が沈んでいる割合

氷の密度を 、海水を とします。

割が水面下にあり、見えているのは 割だけ[2]。氷山の一角という言い方は、この比から来ています。

真水に浮かべると で になる。海水より少し深く沈みます。

例:人は水に浮くか

息を吸ったときの人の平均密度は、およそ です[1]。

ほとんどが水面下に入り、出るのは顔の一部だけ。息を吐くと肺の空気が減って平均密度が上がり、 を超えて沈みます。

浮き輪が効くのは、体積を大きく増やして平均密度を下げるから。中身が空気であることに意味があります。

空気の中でも浮力ははたらく

アルキメデスの原理は気体でも成り立ちます[3]。空気の密度は ほど。

体積 の物体が受ける浮力は でおよそ です。 ぶんの重さに相当する。

ヘリウムの密度は なので、 の風船では差し引き ほどが上向きに残ります。持ち上げられる質量は ほど。風船を大きくしないと人が浮かないのは、この見積もりからすぐ分かる。

沈んだ物体と浮いた物体では効き方が違う

沈んでいる物体

押しのける体積は物体の体積そのもの。浮力は深さによらず一定で、重さとの差だけが残る

浮いている物体

押しのける体積は沈んだ部分だけ。浮力は重さとちょうど等しくなり、沈む深さがそれで決まる

浮いている物体では、浮力は重さと同じ値に固定されます。船に荷物を積むと深く沈むのは、増えた重さに合わせて押しのける水を増やしているため。

船体を鉄で作っても、内部の空洞まで含めた平均密度が水より小さければ浮きます。鉄そのものの密度は関係ありません。

質量を、外形が囲む体積全体で割った密度。中身が詰まっていない物体では、材質の密度と大きく違う。

船から石を落とすと水面はどうなるか

押しのける水の量は、浮いているときと沈んでいるときで意味が変わります。浮いているあいだは重さぶん、沈めば体積ぶん。この違いを使う問題を置きます。

水を張った水槽に船を浮かべ、船の上に石をのせます。この石を水槽の底へ落とすと、水面の高さはどうなりますか。

  • 上がる
  • 下がる
  • 変わらない
  • 石の大きさによる
__RESULT__

船にのせているあいだ、石は自分の重さと同じ重さの水を押しのけています。底に沈むと、押しのけるのは石の体積ぶんだけ。石の密度は水より大きいので、後者のほうが小さくなります。差だけ水面は下がる。

よくある誤り

深く沈めるほど浮力が大きくなると考えると外します。導出の途中で深さは消えている。
重い物体ほど浮力が大きいという思い込み。効くのは体積と流体の密度だけです。
浮いている物体に浮力は働いていない、と考えると逆になる。重さとつり合う大きさで働いています。
水の量が多いほど浮力が大きくなることはない。決めるのは押しのけた体積だけ。
圧力が下向きにだけ働くと思うと外します。向きによらず同じ大きさでかかる。

出典

Archimedes' Principle and Buoyancy - University Physics Volume 1, OpenStax
Statischer Auftrieb - Physik Libre
Poussée d'Archimède - ScienceLycée
Archimedes' Principle - HyperPhysics, Georgia State University
水に沈めた物体が軽くなるのは、上面と下面で水圧が違うから。深さ $d$ の上面と深さ $d+L$ の下面が受ける力の差をとると $d$ が消え、$\rho V g$ だけが残る。押しのけた水の重さがそのまま浮力になるので、材質も沈めた深さも効きません。氷山が $9$ 割沈む割合も、鉄のかたまりが水中で $13$ パーセント軽くなる理由も、ヘリウム風船が $1\ \mathrm{m^3}$ あたり $1\ \mathrm{kg}$ を持ち上げる見積もりも、すべて密度の比から出てくる話。船にのせた石を水へ落とすと水面が下がる問題も置きました。