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強制振動と共振:ブランコが大きく振れる条件

ブランコは、押すタイミングを合わせると小さい力でどんどん大きく振れます。でたらめな間隔で押すと、かえって止まる。

同じ大きさの力でも、加える周期しだいで結果がまるで変わる。振れ幅がいちばん大きくなる周期を、共振の起きる点といいます。

系には自分の振動数がある

ばねにつないだおもりを引いて手を離すと、決まった周期で振れます。この振動数を固有振動数といい、ばね定数と質量だけで決まる[1]。

、 なら です。振動数に直すと でおよそ になる。

長さ の振り子なら周期が 秒なので、固有振動数は になる。

外から周期的に揺すると、その周期で振れる

支点を手で周期的に動かすと、おもりは自分の固有振動数ではなく、加えた振動数で振れるようになります。これを強制振動という[1]。

始めのうちは つの振動が混ざりますが、減衰があるので固有振動のほうは消えていく。残るのは加えた振動数の成分だけになる。

振れ幅は、加える振動数 と固有振動数 の関係で決まります[4]。

分母の第 項は が に近づくほど小さくなります。だから振れ幅はそこで最大になる[1]。

canvas: 絵を作れませんでした

減衰がなければ振れ幅は際限なく伸びる

減衰の項 を にすると、 で分母がまるごと消えます。振れ幅は無限に大きくなる計算になる[2]。

実際には減衰があるので、そこで止まる。山の高さは減衰の大きさで決まり、小さいほど高く鋭くなります[1]。

山の位置も少しずれます。減衰があると、最大になる振動数は固有振動数よりわずかに低い側へ動く[2]。

減衰が弱ければ、この差は無視できます。高校の問題では として扱ってよい。

山の鋭さを表す量

山の細さは、共振の起きる範囲の狭さを表します。この鋭さを 値といい、減衰が小さいほど大きくなる[4]。

が大きい系は、ぴったり合った振動数にだけ強く応じる。ラジオが特定の局だけを拾えるのも、同じ仕組みによります。

逆に が小さいと、広い範囲にゆるく応じるかわりに、振れ幅は伸びません。

押すタイミングは 90 度ずれている

共振しているとき、おもりの動きは加えた力より 度遅れます[2]。振動数が低い側ではほぼ同じ位相、高い側ではほぼ逆位相になる[1]。

度の遅れは、力と速度の向きがつねにそろっている状態にあたる。力がする仕事がいつも正になるので、エネルギーが最も効率よく入ります。

ブランコを最下点で押すのが効きやすいのは、そこで速度が最大になるから。いちばん高いところで押しても、速度が なので仕事になりません。

振動数が低い側

おもりは力とほぼ同じ位相で動く。ゆっくり揺すれば、おもりは手についてくるだけ

振動数が高い側

おもりは力とほぼ逆の位相で動く。速く揺すると、慣性で置いていかれて逆を向く

身のまわりの共振

洗濯機の脱水で、ある回転数だけ大きく揺れることがある。槽の固有振動数を回転数が通過する瞬間にあたります。

弦楽器の共鳴箱、水を入れたグラスの縁をこすって鳴らす音、ラジオの同調回路。どれも固有振動数に合った成分だけを強く拾う仕組みです。

建物にも固有周期があります。低くて硬い建物ほど周期が短く、高くてしなやかな建物ほど長くなる。地震の揺れに含まれる周期と合うと、大きく揺れます。

高層ビルが遠くの地震でゆっくり長く揺れるのは、長い周期の成分と固有周期が近いから。制振装置は、この揺れのエネルギーを吸って減衰を増やす道具です。

タコマ橋は共振ではない

年に落ちたタコマナローズ橋は、共振の例としてよく紹介される。ただし、いまの理解では正しくありません[3]。

外から一定の周期の力が加わったわけではありません。橋がねじれると風の当たる角度が変わり、そのせいで受ける力がさらにねじれを大きくする[3]。

自分の動きが自分を揺らす向きに働くこの仕組みを、自励振動といいます。共振では振動数を合わせる相手が外にいますが、こちらには外の周期がない。

見た目は似ていても、原因の構造が違う。設計で防ぐ手も、共振を避ける手とは別になります。

自励振動では、減衰が見かけ上マイナスになります。ふつうの減衰は振動を減らしますが、負の減衰では振れるほどエネルギーが入る。

速度と同じ向きに力が働き、振動を増やすように作用する状態。放っておくと振れ幅が伸び続ける。

どの振動数で揺らすか

振れ幅の大小は、固有振動数からどれだけ離れているかで決まります。低い側と高い側で、離れ方の効き目は同じ。

固有振動数が のおもりを、同じ大きさの力で揺らします。、、 のうち、振れ幅がいちばん小さくなるのはどれですか。

  • どれも同じ
__RESULT__

振れ幅の式の分母は を含むので、固有振動数から離れるほど大きくなります。 は から だけ低く、 は だけ高い。離れ方が大きい のほうが小さくなります。共振する が最大。

まちがえやすいところ

共振すると系が自分の固有振動数で振れると考えると外します。振れるのは加えた振動数のほう。
減衰があっても振れ幅が無限になると思うと誤りです。有限の値で止まります。
共振の山が減衰によらず同じ高さだと考えると外れる。減衰が小さいほど高く鋭くなります。
共振で力と変位の位相がそろうと思うと外します。そろうのは力と速度で、変位は 度遅れる。
タコマ橋が共振で落ちたと覚えていると誤りです。原因は自励振動でした。

参考

Forced Oscillations - University Physics Volume 1, OpenStax/Book:_University_Physics_I_-_Mechanics_Sound_Oscillations_and_Waves_(OpenStax)/15:_Oscillations/15.07:_Forced_Oscillations)
Erzwungene gedämpfte Schwingungen - Lehrportal Physik, Universität Göttingen
The Tacoma Narrows Bridge Collapse - Physics Lecture Demonstrations, University of California Santa Barbara
Oscillateurs mécaniques - Femto-Physique
外から周期的に揺らすと、系は自分の固有振動数ではなく加えた振動数で振れます。振れ幅の分母に $(\omega^2 - \omega_0^2)^2$ があるので、$\omega$ が $\omega_0$ に近づくほど大きくなる。減衰がなければ発散し、あれば有限で止まり、小さいほど山は高く鋭くなります。共振点では変位が力より $90$ 度遅れ、力と速度の向きがそろう。ブランコを最下点で押すのが効くのはこのため。タコマナローズ橋が共振ではなく自励振動で落ちた話まで。