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潮汐力と潮の満ち引き(月と反対側でも満潮になる理由)

満潮は 日に 回来ます。 回は月に向いた側、もう 回はその反対側[1]

月に引かれて水が持ち上がるなら、ふくらみは月の側だけのはずです。反対側にもう つできる理由が、潮汐力という言葉の中身になります。

効いているのは引力そのものではなく、地球の中で引力がどれだけ違うかという差です。

引力は場所ごとに少しずつ違う

月から地球までの距離は約 、地球の半径は です。月に近い側と遠い側で、距離が地球の直径ぶん違います。

万有引力は距離の 乗に反比例するので、近い側のほうが強く引かれる。中心はその中間、遠い側はいちばん弱い。

地球全体は中心の値で落ちていきます。だから中心の引力を基準にして、そこからの差だけを見ればよい[2]

近い側では差が月の向きに残ります。遠い側では引き足りないぶんが、月と反対の向きに残る。

月に近い側

中心より強く引かれる。差は月へ向かう向きに残る

月から遠い側

中心より弱くしか引かれない。差は月と反対の向きに残る

どちらも中心から外へ向かう向きです。だからふくらみが つできます[1]

距離の 3 乗で効く

近い側と遠い側の引力の差を計算します。天体の質量を 、距離を 、地球の半径を とする。

もとの引力は 乗に反比例していました。差をとると 乗になります[2]

つ次数が上がるので、距離の効き方がきつくなる。近いものが圧倒的に有利です。

月の値を入れると、 あたり ほど。重力の 万分の でしかありません。

この小さな力が海全体にはたらき続けるので、水が動きます。 点を持ち上げるのではなく、地球規模で少しずつ押しているためです。

太陽より月のほうが強い

太陽の質量は月の 万倍。地球を引く力は、太陽のほうが 倍ほど強い。

ところが潮汐力では逆転します。太陽までの距離は月までの 倍近くあり、 乗で効くためです[2]

太陽の潮汐力は月の半分弱。引く力では圧勝している相手に、潮汐では負けます。

引力そのものは 乗、潮汐力は 乗で弱まります。遠さの罰が 段重いということです。

だから潮汐では「近くて軽い」が「遠くて重い」に勝つ。距離が 倍なら、質量が 万倍でも足りない。

1 日に 2 回来る理由

ふくらみは月の方向に固定されています。地球はその下を自転していく。

回転するあいだに、ふくらみを つとも通過します。だから満潮が 回、干潮が [1]

間隔はきっかり 時間ではありません。地球が 回転するあいだに月も少し進むので、同じ位置関係に戻るのに 時間 分かかります。

満潮から次の満潮までは 時間 分。毎日 分ずつ後ろへずれていくのは、この差のためです。

大潮と小潮

太陽の潮汐力は月の半分弱ですが、無視できる大きさでもありません。 つのふくらみが重なるかどうかで、潮の大きさが変わります[2]

新月と満月では、太陽と月が同じ線の上に並びます。ふくらみが重なって潮位の差が大きくなる。これが大潮です。

上弦と下弦では、太陽と月が直角の方向にあります。一方のふくらみが他方の谷と重なり、差が小さくなる。小潮です。

新月または満月に並ぶ

月と太陽のふくらみが重なる

潮位の差が大きくなる

月の満ち欠けと潮の大きさが連動しているのは、月そのものが強くなるからではありません。太陽との位置関係が変わるためです。

ふくらみは対称ではない

つのふくらみは同じ高さに見えますが、少し違います。月に向いた側のほうが ほど大きい[3]

引力の変わり方が距離に対してまっすぐではないためです。近い側では差が急に増え、遠い側ではゆるやかにしか減らない。

上で使った 乗の式は、この非対称を落とした近似でした。 次までで打ち切っているので、両側が同じ大きさになる。

潮汐力は落ちながらでも消えない

自由落下する箱の中では、重力を感じません。箱も中身も同じ加速度で落ちているためです。

ところが箱に大きさがあると、完全には消えません。上端と下端で重力の強さが違い、その差が残ります。

残るのが潮汐力です。地球も月に向かって落ち続けていて、中心の運動ぶんは打ち消されている。打ち消し残りだけが海を動かしています。

中心の引力は、地球全体の落下として打ち消される。
残るのは中心からのずれのぶん、つまり引力の差。
差は距離の 乗に反比例し、地球の半径に比例する。

例:近づくほど急に強くなる

乗の効き方は、近づいたときの伸びも急にします。距離が になれば潮汐力は 倍、 なら 倍。

密度の高い天体のそばでは、この伸びが物体を引き裂く大きさまで届きます。頭と足で引かれ方が違い、縦に引き伸ばされる。

同じことが小天体でも起きます。惑星に近づきすぎた彗星が、潮汐力で複数の破片に割れた例があります。

海の潮も、彗星が割れるのも、式は同じ 。効いている大きさが違うだけです。

実際の潮はもっと複雑

ここまでの説明は、地球全体が水でおおわれているとしたときの話です。実際の海には陸があり、深さも場所ごとに違います。

満潮の時刻は、ふくらみが真上に来る時刻とずれます。水が動くのに時間がかかり、海底の地形にも邪魔されるためです。

潮位の差も場所で大きく変わります。外洋では小さく、湾の奥では水が押しこまれて大きくなる。

潮汐力が決めているのは、水を動かそうとする力の分布までです。そこから先は、海の形の問題になります。

月までの距離が半分になったとすると、潮汐力は何倍になりますか。

__RESULT__

潮汐力は距離の 乗に反比例します。距離が なら 倍。引力そのものは 乗なので 倍にとどまります。

引力ではなく引力の差を見る。この一歩で、反対側のふくらみも、太陽が月に負けることも、同じ式から出てきます。

出典

Gravity, Inertia, and the Two Bulges. Tides and Water Levels, NOAA National Ocean Service.
Paul Webb. *11.1: Tidal Forces*/11:_Tides/11.01:_Tidal_Forces). Introduction to Oceanography / Geosciences LibreTexts.
Die Kräfte der Gezeiten. Welt der Physik.
満潮は 1 日に 2 回、月に向いた側と、その反対側に来ます。月に引かれて水が持ち上がるだけなら、ふくらみは片側にしかできないはず。効いているのは引力そのものではなく、地球の中で引力がどれだけ違うかという差です。中心の値を引くと、近い側でも遠い側でも残りが外を向く。差は距離の 3 乗に反比例するので、引く力で 180 倍勝っている太陽が、潮汐では月の半分弱に落ちます。大潮と小潮、2 つのふくらみが 7 パーセント非対称な理由まで。