数学講師2909366 views
高校化学2932077 views
中学数学625003 views
ヒストリア294522 views
高校物理162168 views
中学社会669926 views
小学理科721524 views
中学英語813370 views
りんご218885 views
小学算数1203343 views
Help
Tools

English

振り子の周期におもりの重さは効かない〜ガリレオの等時性

おもりを重い玉にとりかえても、振り子の周期は変わりません。振れ幅を少し広げても変わらない。効くのは糸の長さと、その場所の重力加速度だけです[2]。

長さ で周期はおよそ 秒。式に も振れ角も入っていないところが、この運動のいちばんの特徴になります。

復元力は重力の接線成分

糸で吊るしたおもりを横へずらすと、重力と張力が働きます。張力は糸に沿う向きなので、動く向きには効きません。

効くのは重力の接線成分だけ。糸が鉛直から だけ傾いているとき、その大きさは になります[4]。

向きは、つねに真下の位置へ引き戻す側です。だから復元力になる。

小さい角では sin を落とせる

が入っていると、単振動の形になりません。ここで近似を使います。

をラジアンで測ると、小さい角では と がほとんど同じ値になる。 度より小さければ、ずれは パーセントに収まります[1]。

真下からの水平方向のずれを とすると なので、復元力は次の形になる[2]。

ずれに比例する力。ばねと同じ形で、ばね定数にあたるのが です。

質量が消える

単振動の周期の式 に、 を入れます。

分母にも分子にも があって、約分で消えました[2]。

重いおもりは強く引かれますが、そのぶん動きにくい。 つの効果がちょうど打ち消し合うので、周期に質量が残りません。落体が質量によらないのと同じ理屈です。

例:長さから周期を出す

で計算します。

往復に 秒。片道は 秒なので、 秒ごとに音を鳴らす装置になります。

周期をちょうど 秒にしたいなら、長さを逆算する。

です。この長さの振り子を秒振り子といい、古い時計の基準に使われました。

長さと周期は平方根の関係

は に比例します。長さを 倍にしても、周期は 倍にしかなりません。

倍にしたければ長さを 倍。 倍にしたければ 倍。長い振り子を作るのが大変なのは、この効きの弱さのためです。

ガリレオが 年にたどり着いたのも、周期の 乗が長さに比例するという形でした[3]。

等時性は近似でしかない

振れ幅を変えても周期が変わらないことを等時性といいます。ガリレオが 年に見つけたとされる性質です[3]。

ただし厳密には成り立ちません。 を に置きかえた時点で、近似が入っているからです。

振れ角を とすると、周期は次のように伸びます[1]。

度なら パーセント、 度なら パーセントの伸び。角度が小さいうちは無視できますが、大きくすると効いてきます。

例:振り子時計のずれ

日は 秒です。振れ角が 度もあると、 パーセントで 秒ずれます。

日に 分近い遅れ。時計としては使いものになりません。だから振り子時計の振れ幅は小さくとってあります。

ホイヘンスはこの問題に気づき、糸の上部にサイクロイドの形をした板を添え、振れ幅によらない周期を実現しました[3]。

1583
ガリレオが等時性に気づく

ピサの大聖堂で揺れるランプを見て、往復の時間が振れ幅によらないことに気づいたと伝えられる。

1638
長さとの関係を発表

周期の 乗が長さに比例するという法則にたどり着いた。振れ幅によらないと考えていた点は誤りだった。

1657
ホイヘンスの振り子時計

時計職人コステルとともに、振り子を使った最初の実用的な時計を作った。

1673
『振り子時計』の出版

大きく振れると周期が伸びることを示し、サイクロイドの板を使って厳密な等時性を実現した。

重力加速度を測る道具になる

周期の式を について解くと、測定の道具に変わります。

長さと時間さえ測れれば が出る。どちらも精度よく測れる量なので、この方法は長く使われました[1]。

例:測った周期から g を出す

の振り子で、 往復に 秒かかったとします。

往復を測ると誤差が大きいので、実際には 往復や 往復の時間を測って割ります。

糸の長さは温度で変わります。金属の棒なら、伸びた線膨張のぶんだけ周期が長くなる。

温度が 度上がるごとに長さが伸びる割合。鉄ならおよそ 万分の で、精密な時計では無視できない。

長さが パーセント伸びると、周期は パーセント伸びます。 日で 秒の遅れ。夏と冬で時計が狂う原因になりました。

火星に持っていくとどうなるか

地球で周期がちょうど 秒になる振り子を、重力加速度が の火星へ持っていきます。周期はどうなりますか。

  • 秒ほどになる
  • 秒ほどになる
  • 秒のまま変わらない
  • おもりの質量を変えないかぎり分からない
__RESULT__

周期は に比例するので、 が から へ下がると 倍になります。 でおよそ 秒。糸の長さも質量も変えていないので、効くのは だけです。

まちがえやすいところ

長さを 倍にすると周期も 倍と考えると外します。伸びるのは 倍まで。
を度のまま近似に使うと合わない。 が成り立つのはラジアンで測ったときです。
糸の張力を復元力と考えると外れる。復元力になるのは重力の接線成分。
月では振り子が速く振れると思うと逆です。 が小さいぶん、周期は長くなる。

参考文献

Higher-Order Corrections to the Period of a Simple Pendulum - Physics LibreTexts, Classical Mechanics/24:_Physical_Pendulums/24.04:_Appendix_24A_Higher-Order_Corrections_to_the_Period_for_Larger__Amplitudes_of_a_Simple_Pendulum)
Das Fadenpendel - Physikunterricht-Online
Galilée, Huygens et le pendule - Académie de Poitiers
Pendulums - University Physics Volume 1, OpenStax/Book:_University_Physics_I_-_Mechanics_Sound_Oscillations_and_Waves_(OpenStax)/15:_Oscillations/15.05:_Pendulums)
復元力は重力の接線成分 $mg\sin\theta$ で、$15$ 度より小さければ $\sin\theta$ を $\theta$ に置きかえても誤差は $1$ パーセント未満。すると $-\frac{mg}{L}x$ というばねと同じ形になり、周期を出すと $m$ が約分で消えます。$T = 2\pi\sqrt{L/g}$ なので長さ $1\ \mathrm{m}$ で $2$ 秒、長さを $4$ 倍にしても周期は $2$ 倍にしかならない。振れ角 $30$ 度では $1.7$ パーセント伸びて $1$ 日に $25$ 分近く狂うので、ホイヘンスはサイクロイドの板でそれを直しました。$g$ を測る道具としての使い道まで。