力学的エネルギー保存則|基準の高さは任意にとれる
エネルギーで解くと、途中の経路を追わずに済みます。始めと終わりの つの状態だけ書けばよい。
速さだけを聞かれている問題では、運動方程式より短い道になります。時間が出てこないぶん、式も減る。
使えるのは保存力だけのとき
重力と弾性力しか働いていなければ、次の は動きません[1]。
摩擦や空気抵抗が働くときは、この和が減る。減った量が、それらの力がした仕事の大きさになります[1]。
摩擦の仕事は、摩擦力と滑った距離の積で出せます。だから経路を追う必要が出てくる。エネルギーで解く手軽さは、保存力だけのときの話です。
基準はどこにとってもよい
位置エネルギーの値そのものには意味がありません。効くのは 点の差だけ[3]。
基準を上げれば両方の値が同じだけ下がるので、差は変わらない。だから計算が楽になる場所を選びます[2]。
ふつうは低いほうの点を基準にとります。そうすれば片方の位置エネルギーが になり、書く項が つ減る。

例:高さ 5.0 m から落とす
静かに手を離した物体が、地面に届くときの速さを出します。基準を地面にとりました。
質量が消えます。 を入れる。
例:同じ高さの斜面をすべる
なめらかな斜面を の高さから滑り降りた場合も、式は変わりません。垂直抗力は動く向きと直角なので仕事をしない。
答えは で同じになります[3]。斜面の角度も、曲がっているかどうかも効かない。
効くのは高さの差だけ。経路を追わなくてよいのが、エネルギーで解く利点です。
例:摩擦のある斜面
度の斜面を、質量 の物体が斜面に沿って 滑り降ります。動摩擦係数は 。
下がった高さは で なので、位置エネルギーは 減ります。
摩擦力は で、 の 。これが にわたって働く。
残りが運動エネルギーになります[1]。
摩擦がなければ でした。 が熱に変わったぶん、速さが落ちている[3]。
例:ばねで押し出す
ばね定数 のばねを 縮め、 の物体を押し出します。床はなめらかとする。
たくわえられた弾性エネルギーは、三角形の面積で出ます。
ばねが自然の長さに戻ったところで、全部が運動エネルギーへ移る。
例:ばねで斜面を押し上げる
同じばねで、同じ物体を 度のなめらかな斜面へ押し出します。どこまで上がるか。
がすべて位置エネルギーに変わったところで止まる。
斜面に沿った距離は で です。高さで答えるか斜面に沿った長さで答えるかは、問題文の聞き方で決まる。
例:振り子の最下点
長さ の糸を 度まで持ち上げて放します。最下点からの高さは 。
あとは落下と同じ式です[1]。
糸の張力は、つねに動く向きと直角なので仕事をしません。円弧を描いていても、高さの差だけで答えが出る。
例:ループの最高点
半径 の輪の最下点を、 で通過します。最高点は 上。
回りきれる下限は で です[3]。 はこれを上回っているので、輪から離れずに 周できる。
始めと終わりの 状態だけ。速さは出るが、途中にかかる時間や力は出ない
加速度を出して積み上げる。時間も途中の力も出るが、経路が変わると立て直しになる
答えを確かめる
エネルギーで出した答えは、運動方程式で解き直すと突き合わせられます。同じ問題を別の道具で解く形になるので、計算違いが見つかりやすい。
摩擦のある斜面の例でやってみます。斜面方向の加速度は次のとおり。
初速 で 進んだときの速さを、時間の入らない式で出す。
一致しました。逆に食い違ったときは、摩擦力に を掛け忘れているか、高さに を掛け忘れているかのどちらかであることが多い。
摩擦のようにエネルギーを減らす力を非保存力といいます。経路が長いほど奪う量が増えるので、始点と終点だけでは決まらない。
した仕事が経路によって変わる力。摩擦や空気抵抗がこれにあたり、位置エネルギーを定められない。
基準を変えて解く
高さ から落とす問題を、基準を地面ではなく の高さにとって解きました。答えはどうなりますか。
- 地面を基準にしたときより小さくなる
- 地面を基準にしたときより大きくなる
- まったく同じ値になる
- 位置エネルギーが負になるので解けない
















基準を上げると、始めの位置エネルギーは mg×3.0、終わりは mg×(−2.0) になります。差は mg×5.0 のままで、1 つめの選択肢の状況は起きません。負の位置エネルギーが出ても、式の上では何も困らない。