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糸と滑車でつないだ 2 物体(運動方程式を連立して張力を消す)

糸でつながれた 物体の問題は、どちらから手をつけるか迷うところです。答えは決まっていて、物体ごとに 本ずつ運動方程式を立てる。

物体なら 本。未知数は加速度と張力の つなので、これで解けます。迷うのは、立てる前に「どちらが引っぱるか」を考えてしまうから。

立てる手順は 3 つ

順序を決めておけば、どの問題でも同じ手が使えます。

糸に沿って、動く向きを正と決めます。物体ごとに向きが違ってよい。
物体を つずつ切り離し、その物体にかかる力だけを書き出します。
それぞれについて 力の合計 を書きます。

切り離したときに、糸は張力という力に置きかわります。軽い糸がなめらかな滑車を通るとき、張力は糸のどこでも同じ大きさになる。

加速度が等しいという条件

糸が伸びないので、片方が 動けばもう片方も 動きます。速さも加速度も、大きさは同じ。

向きは違います。滑車をはさんだ 物体では、片方が下がるとき、もう片方は上がる。

だから正の向きを別々に決めます。「動く向きを正」とそろえておけば、どちらの式でも加速度は同じ記号 で書けて、符号で悩まずに済む。

例:接触した 2 物体を押す

質量 の物体を並べ、 で押します。摩擦はないものとする。

物体は離れないので、加速度は共通です。全体を つと見れば先に が出る。

接触面で押し合う力は、後ろの物体の式から出ます。 のほうを押しているのは接触力だけ。

全体で見ると内力は消えるので、加速度だけが出ます。個々の力を知りたいときは、切り離した式が要る。

例:机の上の物体と吊るした物体

なめらかな机の上に を置き、机の端の滑車を通して を吊るします。

机の上の物体には、水平方向には張力しかかかりません。吊るしたほうには、重力と張力が逆向きにかかる。

本を足すと が消えます。この消え方が、切り離して立てる利点です。

張力は上の式に戻して 。吊るした物体の重さ より小さくなっています。

小さくなるのは当然で、等しければ加速度が になってしまう。動いている以上、差がなければおかしい。

例:アトウッドの機械

滑車の両側に を吊るします。 年にアトウッドが作った装置で、重力加速度を測るために使われました。

重いほうが下がる向きを正とする。

足して を消します。

質量の差を合計で割った形。差が小さいほど加速度が小さくなり、落ち方をゆっくり観察できます。自由落下では速すぎて測れなかったものが、これなら測れる。

張力のほうは です。

質量の差を小さくすると、加速度はいくらでも小さくできます。手で計れる速さまで落とせるところが、この装置の値打ちでした。

摩擦があるとどうなるか

机の上の物体に摩擦が働くと、その力が張力と逆向きに入ります。動摩擦係数を として書き直す。

を入れて足すと、 になります。

摩擦がないときの から下がりました。張力は に上がります。

摩擦のぶん机の上の物体が進みにくくなるので、糸はより強く引かれる。感覚とは逆に思えるところですが、式はそうなっています。

全体を 1 つと見る

内力の張力が消えるので、加速度だけが速く出る。張力そのものは出ない

切り離して 1 つずつ見る

式が 2 本になるが、張力も同時に出る。どの力がどこに働くかも見える

加速度だけ聞かれているなら全体で。張力も聞かれているなら切り離して。問われているものを見てから、どちらで行くか決めます。

糸が伸びないという条件は、位置と位置のあいだの関係を決めます。こうした関係を束縛条件といい、加速度の関係はそれを 回微分して出る。

物体の動ける範囲を制限する関係式。糸の長さが一定、面から離れない、といった条件がこれにあたる。

張力はどのくらいの大きさになるか

張力の値を計算する前に、どのくらいの大きさになるかは見当がつきます。下がる側と上がる側で、重さとの大小が逆になるためです。

滑車の両側に を吊るして手を離しました。糸の張力はどの範囲に入りますか。

  • の重さより小さい
  • の重さと の重さのあいだ
  • の重さより大きい
  • つの重さの和に等しい
__RESULT__

計算すると で、 のあいだに入ります。重いほうは下がるので張力より重く、軽いほうは上がるので張力より軽い。この大小関係は、計算する前に符号だけで見当がつきます。

$2$ 物体なら運動方程式は $2$ 本。物体ごとに切り離し、糸を張力に置きかえて書けば、加速度と張力がちょうど解けます。糸が伸びないので加速度の大きさは共通で、$2$ 本を足すと張力が消える。なめらかな机の上の $3.0\ \mathrm{kg}$ と吊るした $2.0\ \mathrm{kg}$ なら $3.9\ \mathrm{m/s^2}$ と $12\ \mathrm{N}$、アトウッドの機械なら質量の差を合計で割った値になります。摩擦を足すと加速度は下がるのに張力は上がる、という一見あべこべな結果まで。